離婚という選択肢が珍しくなくなってきている今。弁護士相談ポータルサイト『離婚弁護士相談広場』が離婚経験のある女性149名を対象に2020年9月11日9月14日にwebアンケートを行った「離婚アンケート調査」では、離婚の原因として「性格の不一致・経済的理由・夫の不貞行為」が上位にあげられました。

そして、95.77%という多くの女性が、離婚したことに満足しているのだそうです。しかし一方で、離婚後最も不安に感じることとして「収入が少なく生活に苦しい」と答えた人が4割を越え、金銭的な苦しさから離婚に後悔している人がいることも分かります

そんな離婚後の生活を見据え、今から準備をしている人もいるようです。なかには、専業主婦でありながら1000万円の貯蓄に成功しているツワモノも。今回は、そんな母子世帯の貯蓄の現実や1000万円貯蓄した主婦の貯蓄術をご紹介します。

「母子世帯」は貯蓄がない世帯も多い

夫との間に修復不可能な問題が発生しても、離婚という選択肢を簡単には選べない女性が多いのも事実。そこには金銭的な問題という大きな課題が横たわっています。実際、母子世帯の貯蓄額はどのくらいなのでしょうか。

厚生労働省の「国民生活基礎調査(2019年調査)」(各種世帯の所得等の状況)を見ると、全世帯の平均貯蓄額が1077万4千円であるのに対し、母子世帯の平均貯蓄額は389万8千円でした。また、全世帯では「貯蓄がある」と答えた人が81.9%と8割を越えていますが、母子世帯では65%にとどまり、3割近くの母子世帯が「貯蓄がない」と答えているのです。

このように、母子世帯をとりまく環境を貯蓄面から見てみると、平均的な世帯と比べて苦しい家計運営であることが垣間見えます。もちろん個人差が大きい部分ではありますが、このデータだけ見てみれば、多くの主婦が離婚を思いとどまる理由として「金銭的な問題」をあげるのも納得の結果だといわざるをえないでしょう。

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離婚も視野にこっそり1000万円貯蓄した専業主婦

そこで、1000万円貯蓄した専業主婦のYさんの例をご紹介します。はじめに節約に取り組んだきっかけは、やはり「離婚が頭をよぎった」からであるそう。

「出産を機に仕事をやめて専業主婦になったため、自分の稼ぎはありません。今の状態では離婚なんてとんでもない。でも、いざというときにいつでも動き出せるよう、準備をしておきたかったんです」

Yさんは学費など子どものための資金のほか、約10年かけて1000万円を貯蓄。もちろん実際に離婚という結果になれば財産分与などですべて自分のお金になるわけではないですが、さまざまな初期費用をまかなえ、精神的な安定感は得ることができそうだとYさんはいいます。その貯蓄術はどのようなものなのでしょうか。

無理せず続けられる貯蓄術

家計簿をつけて固定費を見直し

それまで流れ作業のように行っていた家計運営を、項目を分けて細かく管理。ライフスタイルの変化に合わせてそのつど固定費を見直し、通信費など無駄な固定費を削減しました。それまでは「余った分は貯金」という感覚でしたが、家計簿をつけることで余計な支出をカットできるようになり、貯蓄のペースが上がったそうです。

先取り貯蓄・資産形成

専業主婦のため、退職金や年金といった老後資金が期待できず、老後の不安が強かったYさん。自分名義の個人年金を契約するなど、老後に向けた「先取り貯金」をまずは行いました。さらに扶養内のパートを始め、同時に年齢を問わずに働ける資格を取得。生活費は夫の収入からまかない、パート代は基本的にすべて貯蓄に回しました。今はつみたてNISAなどの資産成形にも取り組んでいるそうです。

無理なく続けられる小さな節約

「つい寄ってしまうコンビニをやめる」「予算を決めて買い物する」など簡単なルールは決めていますが、切り詰めすぎる節約はしないというYさん。「おやつはすべて手作り」「趣味は我慢」といった生活では長続きしないと分かっていたので、適度なゆるさも大切にしたそう。気づけば10年でしっかり貯蓄ができていたといいます。

小さなことでも継続するのが大切

Yさんは「小さなことでも継続することが大切。2~3年では貯められなかった」と話します。10年たって夫婦関係も変化し、今では離婚という選択を現実的にはとらえていないそうですが、やはり「あのとき、このままじゃ生きていけないと一念発起したのが大きかったです。今も、いざというときは動けるぞという心の余裕があるせいか、夫との付き合い方も変わった気がしています」と、離婚の意思が原動力になったことを語りました。

もちろん、離婚という選択が必ずしも正しいわけではなく、反対に今すぐ離婚をしなければならないというケースもあるため、どれが正解ということはありません。しかし、Yさんはあのまま生活を変えなかったら、貯蓄もほとんどできず、いざというときの不安も強くて落ち着かない生活を送ったかもしれないといいます。しっかりした貯蓄や稼ぐ力を身に付けることは、心の安定にもつながるといえるでしょう。いざというときを見据えた女性の強さが、結果として大きな貯蓄を生みました。無理せず続けられる貯蓄術なら、参考にできることもたくさんありそうですね。

貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

参考資料