「82歳の母は、要介護1の認知症で、あまりに症状がひどいときだけ、抗不安薬を服用することになっています。しかし、効能や飲むタイミングを理解できず、症状が出なくても毎日薬を飲みたがって……。薬を隠しても、見つけ出して飲むことがありました。そこで、使ってみたのが偽薬です」
そう話す東京在住のA子さん(52)が使っている偽薬がプラセプラス30。見た目は薬だが、ラムネのような甘みがある白いタブレットで、有効成分が入っていない“食品”だ。A子さんは続ける。
「母には、着替えなどの日常動作ができなくなる『失行』という症状も出ています。特に表裏、前後左右がわかりにくい下着を着るときは、いつも間違えてしまう。しかし、手伝うとプライドが傷つくのか、怒りだしてしまうんです」
そんな悩みを救ったのが、HONESTIESという会社が作った表裏・前後のない肌着だった。
「偽薬とこの下着のおかげで、介護がぐんと楽になりました」
介護を楽にするさまざまなアイデアグッズが日々、誕生している。そこで、実際に介護をしている人と、介護のプロたちが選んだ、おすすめ商品を紹介。
【食事編】日々の食事を少しでも楽に
■「木目持ちやすい茶碗」Skater(スケーター)/価格:550円/オンラインショップ「Skater」
母がよく茶碗を割ってしまうのだけど、プラスチック製のものは“味気ない”と嫌がって。そんな悩みがある人にすすめたい一品。軽くて丈夫なプラスチック製だが、デザインは木目調で持ちやすい形状。持ち手のついた茶碗や皿もある。
■「アルミアイスクリームスプーン」アイデアセキカワ/価格:660円/オンラインショップなど
熱伝導効率のいいアルミで手の体温をスプーンの先に伝え、アイスクリームを溶かしながら食べられるスプーン。平べったい形状が食事の介助に使いやすく、冷たいものをそのまま食べられる。その刺激で、嚥下障害予防の期待も。
■「やさしい献立 煮込みハンバーグ」キユーピー/価格:195円/スーパーなど
のみ込む力やかむ力がない人に配慮したキユーピーの「やさしい献立」シリーズは全60種類。塩分控えめだが味は一流で、特に“煮込みハンバーグ”は介護食っぽさを感じさせない。疲れて食事の用意ができないとき用のストックにも。
【介護者の負担軽減編】楽に介護できるように
■「快適・介護インナー 白寿」介護用品のうさぎ屋/価格:3,990〜4,260円/オンラインショップ「うさぎ屋ショップ」
元看護師が開発して反響を呼んだ認知症患者向けの下着。長めの前身ごろを股の下を通してお尻の上の面ファスナーで留めるため、着用している人に拘束感を与えず、おむついじりなどを予防できるデザインになっている。
■「おむつが臭わない袋BOS 大人用箱型(Lサイズ90枚入)」クリロン化成/価格:1,430円/ドラッグストアなど
医療向けに便を収容する袋を開発してきたメーカーが作った“驚くほど臭わない”と大ヒット中の消臭袋。尿臭や便臭のあるおむつや掃除のあとの処理に大活躍する。外出時にも、かばんや周囲への臭い漏れを防げる。
■「アタック 消臭ストロングジェル」花王/価格:500円程度/ドラッグストアなど
尿臭や体臭の発生を抑える「尿臭ブロッカーEX」成分を配合した洗濯洗剤ジェル。ドラッグストアの介護用品売場などで購入できる。「スプレータイプの消臭剤が必要なくなった」という家庭も。
■「見守りカメラ」各種メーカーから/価格:3,000円前後〜/オンラインショップなど
近年は3,000円程度から購入ができて、初期設定も簡単に。インターネット回線を使うのが一般的だが、携帯電話と同じシステムを使って、ネット環境がなくても利用できるカメラも。ただし、こちらは3万円前後と高額。
【要介護者の生活ヘルプ編】介護される側の生活を助ける
■「niho(にほ)小銭が取り出しやすい財布」DFCパートナーズ/価格:1万780円/オンラインショップ「dfshop」
認知症当事者の目線で開発された財布。お札と小銭とカードなどの中身がひと目で確認でき、取り出しやすい。ストラップを付けてかばんなどにつなげることも可能。「楽しく出掛けられるように」との思いのデザイン。
■「メガ曜日日めくり 電波時計」ADESSO(アデッソ)/価格:3,850円/家電量販店やオンラインショップなど
ひと目で曜日がわかる電波時計。介護は「月曜日は訪問リハビリ、火曜日はデイサービス」など、曜日単位で予定が決まっていることが多く、日付より曜日が大きくわかるものが重宝する。紙をめくる必要もない。
■「HONESTIES∞インナーシャツ」HONESTIES/価格:2,750円/オンラインショップ「HONESTIES」など
どう着ても正しく着られる下着。認知症などの影響でうまく下着を着られない人の助けに。また、洗濯時に表裏を気にする必要もない。もともと介護用に開発されたものではなかったが、便利だと介護現場で受け入れられた。
【忘れ物対策編】認知症の症状がある人の生活に役立つ
■「プラセプラス30(30粒)」プラセボ製薬/価格:999円/オンラインショップなど
還元麦芽糖を主成分とする、甘味のある白いタブレット。認知症患者は薬を飲んだことを忘れたり、不安から大量に薬を飲んでしまうことがある。そういった場合に。また、飲んだという“自己暗示”で本人の心も安定するという。
■「Aosnow キーファインダー」iitrust/価格:2,000円/オンラインショップなど
認知症だと物をしまった場所を忘れたり、「盗られた」と思い込んでしまうことも。よくなくすものにキーホルダータイプの発信機をつけておけば、送信機のボタンを押すと大音量で受信機が鳴って場所を特定できる。
■「持ち物・忘れ物チェッカー」コモライフ/価格:1,078円/全国生協、オンラインショップなど
出掛ける前に「家の鍵」「財布」など持ち物の項目を確認しながら、スライダーを動かして「○」にすれば、持ち物を「見える化」でき忘れ物防止になる。外出先で「玄関の鍵しめた?」と“もの忘れ”しても安心。
■「メモできるリストバンド」コスモテック/価格:1,320円/文房具店、オンラインショップなど
リストバンドとして手首に巻くことができ、油性ボールペンで書いて消しゴムで消せるのが特徴。紙のメモのようにどこかになくしてしまうこともないので、外出先などで忘れたくない予定などをメモしておくのにぴったり。
■「ホワイトボード」各種メーカーから/価格:100円前後/100均ショップなど
何度も書いて消せるホワイトボードをわかりやすい場所に置いて、「今日の予定」や「出発時間」「介護者の居場所」などを書いておくと、何度も同じ質問をしてくる“質問攻め”が減少する。
■「手貼りラミネートフィルム」大創産業/価格:110円〜/ダイソーで購入可能
認知症介護で家中に張り紙をしている場合、ラミネート加工しておけば、剥がれたり、剥がされたりすることを防げる。この商品は専用の機械がなくても、紙をはさむだけで、手貼りでラミネート加工が可能に。サイズも豊富。
※価格はすべて税込み。販売店によって価格が前後することがあります。予告なく価格が変更されたり、販売終了される場合もあります。
「女性自身」2021年3月23日・30日合併号 掲載
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