3月24日(水)より東京・六行会ホールで開幕したミュージカルコメディ『ラヴ』のゲネプロが初日前日に取材陣に公開された。
1964年にブロードウェイで上演され、大ロングランを達成した舞台『WHAT ABOUT LUV?』。その後ミュージカル化され、日本では1994年に鳳蘭、市村正親西城秀樹によって上演され話題となった。
当時、音楽監督を務めていた日本を代表する音楽家宮川彬良を父に持つ、宮川知子・安利姉妹が、27年ぶりの再演となる本作で、音楽監督&ピアノ演奏と演出を担当。平均年齢30歳の実力派俳優陣&スタッフによる愛の悲喜劇が再び幕を開ける!

取材・文・撮影 / 近藤明子

人それぞれ多くの愛があって、それぞれ思うことがいっぱいある

ゲネプロの前にはフォトセッションが行われた。

エリートサラリーマン・ミルトを演じる山本一慶は「やっと“ここ”にたどり着いたなという思いです」とほっとした表情を浮かべ、「登場する3人のキャラクターは全員ぶっ飛んでいるミュージカルコメディ。こういう時期ですが、観に来ていただいた皆さんに笑っていただけたらと思っています。笑顔になる準備をして劇場に来ていただけたら」と続けた。

ミルトの大学時代の親友・ハリー役の橋本真一も「三者三様の“愛のカタチ”や“生き方”が描かれている作品。難しいことは何も考えず、心を手ぶら状態にして観て笑っていただいて、幸せな気持ちで帰っていただければと思います」と熱く語った。

ミルトの妻・エリー役の井上希美も「とっても人間らしい3人がワタワタとする、あっという間の2時間です。コメディでポップな作品ですが、そこに込められている祈りやメッセージがちゃんと皆様に届くように、誠心誠意演じさせていただきます」と意気込む。

演出を手がける宮川安利は「このご時世、舞台を上演できることすら奇跡だと思っております。素晴らしい3人の役者とピアニストの宮川知子、そしてスタッフの皆さまのおかげで、いよいよ明日初日を迎えます。とても面白いコメディになっているので、ご観劇いただく皆様に楽しんでいただけたらと思っております」と感慨深げに語り、音楽監督・ピアノ演奏を担当する宮川知子も「まずは身体の健康を第一に、感染しないようにすることが大事ですが、何より喜怒哀楽は“魂の健康”には不可欠だと思っています。今作はコメディなので、“笑い”をお客様とシェアできたら……」と笑顔を見せた。

最後に山本が「今のこの時期、愛する人のことを思う時間が昔より多くなったんじゃないかと思います。人それぞれ多くの愛があって、それぞれ思うことがいっぱいある。愛とは何だろうというのを、この舞台を見たあとにあらためて考えていただけたら……。と、真面目なことを言いましたが、コメディですので、ただただ笑顔になりに劇場に足を運んでいただきたいです。僕らキャスト3人と、ピアノの宮川知子さん、演出の宮川安利さん、そしてスタッフ一同、すべての力を注いで皆さんを笑いの渦に巻き込みたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします!」と力強いメッセージで締め括った。

◆3人の大胆な芝居に驚かされる

その後行われたゲネプロでは、冒頭からフルスロットルで歌い、踊り、ステージ狭しと走り回るキャスト陣の熱演に圧倒された。

人生に絶望し、橋の上から身を投げようとするハリー橋本真一)。そこに偶然やってきた大学時代の親友・ミルト(山本一慶)が声をかけたことから物語は大きく動き始める。

背中を丸め、ボロボロの服を身にまとった浮浪者同然のハリーとは対照的に、おしゃれなスーツをスマートに着こなすエリートサラリーマンのミルト

そんなミルトだが、実は現在進行形で不倫中。妻・エレン(井上希美)との円満離婚を画策中だった。そして、ハリーエレンを押しつける作戦を思いつく。

「君に足りないのは“愛”だ! 人生に愛がないのは不幸だ。今からここに来る僕の妻を口説け」とミルトに言われたハリーは、無茶苦茶だと思いつつも渋々同意。そこに不機嫌な表情のエレンがやって来て、ミルトとの愛のない生活をデータにまとめて問い詰める。

どうにかハリーエレンを引き合わせたミルトはさっさと退散してしまうが、残されたふたりの間に新たな“愛”が芽生えるのか──。
捧腹絶倒の悲劇が始まる──。

劇団四季」出身の井上希美を筆頭に、キャスト陣の歌がとにかく素晴らしい。正統派ミュージカルといった楽曲から、ポップス、タンゴ、民族音楽風など、様々なジャンルの楽曲を表情豊かに歌い踊る。その数25曲というから驚きだ!

また、多くの2.5次元作品で激しいアクションもこなす山本一慶と橋本真一は、橋の欄干に飛び乗り、“落ちそうで落ちない”絶妙なバランスで笑いも誘えば、井上も知的で上品な女性から急にドスの効いたタンカを切ったり、セクシーなドレス姿で身体を張ったアクションを見せるなど、3人の大胆な芝居には驚かされた。

実際に目にするまでは“アクションの山本&橋本、歌で引っ張る井上”という役割分担なのかと勝手に思い込んでいたので、三つ巴のぶつかり合いに驚くと同時に、あらためて山本一慶、橋本真一、井上希美という役者のポテンシャルの高さに、すっかり魅了されてしまった。

歌詞の内容はというと、よくよく聴けばかなり物騒な言葉が並んでいて、「それはないわ~」と思いつつも面白く、ついニヤけてしまう。また、3人の目まぐるしく変化する感情、予想の斜め上を行くような思考や行動には驚きつつも、気づけばグイグイと物語に引き込まれてしまうパワーがあった。

ジェットコースターのような展開に理性や常識は不要だ。
ただただ目の前の登場人物たちに目を向け、楽しめばいい。

“誰”に感情移入するかによって、見え方や感じ方が変わってくるであろう本作。
観劇後にあらためて“愛”について考えてみるのもいいかもしれない。

本作は、3月28日(日)まで東京・六行会ホールにて上演中。物語の行方、キャスト3名の実力を劇場で体感してほしい。

山本一慶×橋本真一×井上希美の実力派キャストが“真実の愛”をめぐるミュージカルコメディ『ラヴ』で劇場を笑いの渦に包む!!は、WHAT's IN? tokyoへ。
(WHAT's IN? tokyo)

掲載:M-ON! Press