[Alexandros]が今年1月に予定していた【[Alexandros] 10th ANNIVERSARY LIVE at 国立代々木競技場 第一体育館 "Where's My Yoyogi?"】の振替公演を、2021年3月20日・21日に千葉・幕張メッセ国際展示場9-11ホールで行った。本レポートはその2日目の模様をお伝えする。

 ベスト・アルバム『Where’s My History?』が2度の延期を経て、ついに発売を迎えたことで、[Alexandros]としては一つの区切りをつけなければいけない日が来た。庄村聡泰(Dr.)の勇退だ。彼らの久しぶりのワンマンライブを楽しむ準備は万全だったが、果たして彼の最後のステージをどう迎えていいものか。複雑な心境でもあるが、何よりこんなご時世だからこそ、その瞬間を大勢のオーディエンスたちと同じ空間で共有できることは、やはり幸運なことだといえるだろう。

 ライブは終始、青山学院大学で出会ってバンド結成→前ドラマーの脱退&庄山の加入→バンド名改名→現在と、ベスト・アルバムにも込められた10年間の足跡が、ちびっ子俳優たちによる再現ドラマでより詳しく紹介されていく展開で、彼らの成長の旅路を巡礼するツアーに帯同しているかのようだった。「Burger Queen」の英語アナウンス(離陸時にシートベルトを締めるようお願いするフライトアテンダント)が会場内に響き、「For Freedom」でライブがスタート。磯部寛之と白井眞輝はいつも通りの重めバングスで目元は隠れ、振りかざす髪の間から一瞬見えるだけ。「Rocknrolla!」では3人ともガムシャラに攻めのプレイを見せつけた。「Waitress, Waitress!」のミュージックビデオを彷彿させるように、預けたスーツケースを受け取ったあとも、[Champagne]時代の楽曲が続いた。

 「You’re So Sweet & I Love You」で大きなラブを投げ込み、「Starrrrrrr」や「Dracula La」といったライブ定番曲がまだまだ続く。白井がリードするギター、磯部の滑らかに滑る指から発するベースの一音一音を、生のライブでクリアに聞いたのは、もしかしたら今日が初めてかもしれない。川上洋平もそう。演奏はほぼノンストップながら、限界がないと思えるようなシャウトが続き、炎やレーザーライトなどステージを盛り上げる要素も印象的だったが、3人の個々のプレイが非常に際立っていた。こんな大きな会場で、彼らのパフォーマンスを100%、なんのフィルターも通さずに大音量で浴びることができて、贅沢な気分になった。コロナ対策により声出しがNGのこの状況で、大声で歌いたい・叫びたいファンには幾分か申し訳ないところもあるが、このヴァージョンも大変好きだ。そう気づいてから、その後は一曲一曲がとてもおもしろく、「なんて新しい[Alexandros]のライブなんだ!」という感情でいっぱいになった。

 ライブが始まって約1時間。「Are you ready, Makuhari?」と始まった「Adventure」では、花道を歩きまわる川上が果敢に心のシンガロングを煽り、それに無言ながらもオーディエンスがしっかり応えていることは十分に伝わってきた。

 MCでは、このご時世にライブが開催できたことに感謝を述べつつ、苦楽を共にしてきたメンバーとの別れに言及する場面も。「個人的に今日は門出だと思ってます。過去11年間はすごく楽しかったし、アイツのドラムを背負ってベースを弾けたことに感謝してます。これからも[Alexandros]は歩み続けるし、アイツはアイツで、おとなしくしているとは思わないので、みんなで気持ちよく送り出せられたらいいなって思います。」(磯部)、「高校の軽音楽部の後輩である彼とひとつ屋根の下で暮らし、バンドを組んでアメリカや世界中を廻ることになるなんて、高校時代にはそんな人生、思ってもみなかったです。彼とバンドのメンバーとしては今日がお別れですが、まだ僕は実感が湧いてないです。今日という日を楽しんでいこうと思うので、皆さんも楽しんで帰ってください!」(白井)、「幕張、今日は久々のワンマンということで、まだまだ曲を用意してます。準備はよろしいでしょうか?」(川上)と、ブレイクのきっかけになった大切な一曲「ワタリドリ」へ。イントロを聞いただけで、これまで参加した[Alexandros]のライブの思い出が走馬灯のように過ぎていった。友人たちの横顔やオーディエンスと一緒に両手を突き上げたあの瞬間など、ここ何年も忘れていた記憶がよみがえり、自然と笑みがこぼれた。

 「NEW WALL」から「Feel Like」で、気分も一気にハイテンション。そしてニューヨークで制作された「LAST MINUTE」へ。足を踏み入れた瞬間に一気に心奪われる、あの街が持つ独特で目に見えないパワーを説明するのはなんとも難しいもので、そこで受けた刺激をこうして音楽で表現できることは羨ましい限りである。ここまで最高潮に楽しんでいたライブも「PARTY IS OVER」で一転、この至福の時間が終わりを迎えていることを突き付けられ、急にむなしさに襲われた。彼らのパフォーマンスをノーチェイサーで味わえる贅沢に酔っていたのだが、もうこの幸せな時間が終わってしまうのだと思うと、胸が締め付けられた。

 紙吹雪が降り注ぐなか、パーティーも終了――かと思えば、スクリーンの文字が“PARTY IS NOT OVER”に切り替わり、アンコールがスタート。昨年発表した「rooftop」、「Beast」とバンドの両極かのような楽曲を経て、「風になって」へ。ライブ映え十分のこの爽快感溢れる楽曲は早くもライブアンセムになること間違いなし、というくらいのウェルカム感がオーディエンスから発せられた。

 そして、花道の先端にはいつしか庄村のドラムセットが。白のハットをかぶり、会場内を通って登場した庄村と川上、磯部、白井が最後に選んだのは「Untitled」。高めに位置するクラッシュシンバルに彼がひとつひとつ手を伸ばすたびに、再現ドラマでそれに手が届いていなかったミニ庄村が目に浮かんだ。曲が終わりに近づくにつれ、誰もが胸の中の静かでざわざわした感情を抑えることができなかっただろう。もちろん庄村自身、あの6分の間に様々な思いがフラッシュバックしたはずだ。庄村がこの日、言葉を発することはなかったが、そんなものが不要であることは、ラスト・パフォーマンスを見届けた全員が認知していた。

 鳴りやまない拍手が続くなか、こうして[Alexandros]は、一つの区切りをつけたところだが、もう視線は遥か先を向いているのも事実である。「[Alexandros]はまだまだ続いていきます。新しい曲をやってもいいでしょうか? 幕張、準備はできてますか!?」という川上のアプローチから、最後に5月に公開される映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の主題歌で新曲の「閃光」を披露。彼ららしい壮大なロックナンバーにリアド偉武の力強いドラムが加わり、変わらない[Alexandros]の姿を打ち出してくれた。再度機内アナウンスが流れ、これからまた新しい場所へ連れていくことを約束した[Alexandros]。6月から9会場を廻る全国ツアーも発表し、各地で直接それを証明していくことだろう。


Text by Mariko Ikitake
Photos by Tetsuya Yamakawa, 河本悠貴

セットリスト
[Alexandros] 10th ANNIVERSARY LIVE at 国立代々木競技場 第一体育館 "Where's My Yoyogi?"】
※2021年3月21日公演
1. For Freedom
2. She's Very
3. city
4. Rocknrolla!
5. You're So Sweet & I Love You
6. Waitress, Waitress!
7. Kick&Spin
8. Starrrrrrr
9. Droshky!
10. Dracula La
11. Adventure
12. ワタリドリ
13. NEW WALL
14. Feel Like
15. LAST MINUTE
16. Mosquito Bite
17. PARTY IS OVER
Encore
1. rooftop
2. Beast
3. 風になって
4. Untitled
5. 閃光

<ライブレポート>[Alexandros]ひとつの区切りをつけた幕張ワンマン