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車いす移動車販売 5回総合ナンバー1

text:Kenji Momota(桃田健史
editor:Taro Ueno(上野太朗)

ホンダのNボックスは、福祉車両でも売れている。
 
Nボックスといえば「日本で最も数多く売れるクルマ」として、すっかり定着している。

【画像】福祉車両も売れている【ホンダNボックスを詳しく見る】 全145枚

直近では、Nボックスを主体としたNシリーズ(販売終了のNボックス・プラス、Nボックス・スラッシュを含む)は2017~2020年に、登録車を含む国内新車販売台数で4年連続で第1位。

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ホンダNボックス

また、軽自動車としては2015~2020年の国内新規届出台数で第1位となっている。

まさに、日本における国民車のような存在だ。

こうしたNボックスの存在感は、福祉車両の世界でも同じく大きい。

ホンダが各社のデータをまとめたところによると、2012年8月に初代NボックスのNボックス・プラス・車いす仕様車を発売してから、販売実績は2013年(6000台強)、2014年(5500台程度)、2015年(4500台程度)と3年連続で福祉車両市場での販売台数第1位となった。

その後、2018年4月にNボックスのフルモデルチェンジにおいて、Nボックス・スロープが発売されると、再び年6000台近くまで販売が伸びて第1位、続く2019年も第1位となる(2020年分は未集計)。

ライバルとなるA車(ミニバンで送迎向け主流)は4000台に推移し、B車(軽自動車)は3000~4000台の範囲で推移していると、ホンダは分析する。

こうした福祉車両トップ3の中では、Nボックスは、いわゆる新車効果が大きいと思える販売数の推移を示している。

福祉車両市場の実情とは?

次に、福祉車両市場全体についてみていこう。

まずは、福祉車両の種類だが、大きく2つのカテゴリーがある。

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ホンダステップワゴン(回転シート車)    ホンダ

1つは、介護式だ。これは車いすを利用する人や、介護を必要とする人が、自ら運転するのではなく介護する人がいることを前提としている。

介護式の中にもさまざまなモデルがあり、助手席がスライドしたりチルトする「回転シート車」や、助手席や後席が電動モーターで上下の動く「昇降シート車」、そして車体後部の大型ハッチを開いてスロープや電動リフト車いすのまま乗車できる「車いす移動車」がある。

もう1つが、車いすを利用する人が運転できるようにハンドル/アクセル/ブレーキなどに専用の改良を施した「運転補助装置付車」だ。

さらには、ホンダ「モンパル」やスズキ「セニアカー」などの電動車いすや、医療施設/福祉施設向けの専用車などもある。
 
こうしたなかで、Nボックスは介護車の「車いす移動車」に特化しており、Nボックスの自操車は現在のところ設定されていない。

ちなみに、ホンダの福祉車両の歴史を振り返ってみると、1995年にアクティバンで車いす仕様を出したのが最初だ。

後席のサイドリフト式は1997年ステップワゴンで採用を始めた。自操車では、1976年に初代シビックの時点で、テックマッチシステムを採用している。

ホンダで1番、市場で1番

2021年2月時点で、ホンダの福祉車両モデルラインナップを見ると、車いす移動車(仕様車)は、Nボックス、フリードステップワゴンに設定されている。

また、後席のサイドリフトアップシート式と、助手席リフトアップシート式がフリードステップワゴンオデッセイのそれぞれに設定。そのほか、助手席回転式シートが、フィット、Nワゴン、シャトルに設定がある。

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ホンダNボックス    ホンダ

こうしたホンダ車の中で、Nボックスの車いす移動車(仕様車)が最も売れているのだ。

一方、福祉車両市場の全体をみると、2012年度から2019年度まで福祉車両販売総数は4万台を少し切る程度でほぼ横ばいの状態が続いており、直近の2019年度では3万6809台だ(日本自動車工業会しらべ)。

内訳で最も多いのが「車いす移動車(登録車)」となり全体の38%、次いで「車いす椅子移動車(届出車・軽自動車)」が33%で、これら2つ合計が全体の7割を超えている。

そのほか、「昇降シート」が20%で、「助手席回転」や「運転補助装置」についてはそれぞれ数%程度にとどまっている。

こうした市場全体とホンダのラインナップを見比べてみると、福祉車両市場の中心である「車いす移動車」の中で、ホンダを代表する福祉車両であるNボックスの存在感が大きいことがわかる。

なぜNボックスが選ばれる?

福祉車両でもNボックス人気が高いことについて、ホンダの商品ブランド部・福祉事業課の担当者は「Nボックスがつくりたかったのは、家族のしあわせ。この思いは、標準車も福祉車両も同じだ」と表現する。

Nボックスの商品コンセプトは「日本の家族のしあわせのために」である。

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ホンダNボックス

その発想の中で、福祉車両を別枠での扱いとせず、例えば車内パッケージでは、フロントベンチシート仕様、助手席スーパースライド仕様、そしてスロープ仕様というさまざまな使い方を商品企画の時点で設定している。

デザインについても「福祉は特別なものではない」と捉える思想を基本に置いている。

また、ホンダが2019年に行ったユーザー調査では、スロープ仕様などNボックス福祉車両の日常での使い方について、全体の63%が「ほとんど普通のクルマとして使う」と答えており、「状況によりどちらも」(22%)、「ほとんど車いす仕様車として使う」(14%)を大きく上回る結果となった。

こうしてユーザーがいつも自然体で使えることが、Nボックスが福祉車両でも人気な理由だと思う。

さらに、2002年から実施し現在全国約400店舗まで拡大している、福祉車両に対する専門知識を持ったスタッフ配置など、ユーザーに対するサポート体制を強化した「オレンジディーラー制度」の効果も大きい。


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