リクルートキャリアが運営する転職情報サイト「リクナビNEXT」による一年に一度のイベント「第7回 GOOD ACTIONアワード」が3月3日、オンライン上で行われた。応募された「働き方を変える取り組み」の中から、画期的あるいはインパクトがあるなどの取り組みが称えられた同アワード。この日は全5部門8企業の表彰が行われた。

テーマは「イキイキと働ける職場の共創」

今回で7回目の開催となる同イベント。「イキイキと働ける職場の共創」をテーマに、各企業が独自に実施する人材育成やコミュニケーション活性、社員のモチベーション向上などにつながる取り組みが称えられた。前回新設した「ワークスタイルバリエーション賞」「ワークスタイルイノベーション賞」「審査員賞」のほかに、働く今のトレンドを映し出す「トレンド賞」、コロナ禍でも懸命に働くエッセンシャルワーカーの方々を応援する「Cheer up賞」が新設された。

審査員は、一橋大学・名誉教授の守島基博氏、SAPジャパン特別顧問のアキレス美知子氏、株式会社NEWYOUTH代表取締役の若新雄純氏、リクルートキャリア・リクナビNEXT編集長の藤井薫氏の4名。

開会に際し、藤井氏は「さまざまな職場から寄せられた『現状を打破する』取り組みの数々に、私たちも学ぶべきところが多くありました。このアワードが、これからの時代の働き方を変えていくきっかけとなればうれしいです」と挨拶した。

独自の番組制作で社内コミュニケーションを円滑にした「マクアケ」が受賞

「トレンド賞」に選ばれたのはクラウドファンディングサービスなどを運営する「マクアケ」。代表して北原成憲さんが登壇した。

同社は、コロナ禍のリモート勤務による社内コミュニケーションの希薄化を解決するため、社員をゲストに招いた社内番組「幕ウラでダル絡み」(通称:ウラダル)をZoomで毎週配信。募った有志メンバーが企画から撮影、出演まですべてを手がけた。同社が急激に企業規模を拡大する中でコロナ禍でも多くの社員が入社。しかし課題は一人ひとりとの密なコミュニケーションや、これまで同社が大切にしていたパーソナルな距離感だった。この番組がきっかけとなり、入社して間もない社員のパーソナルな部分を知ってもらう機会が生まれ、新入社員や中途入社者はより早く、そして深く会社に馴染むことができるなど社内コミュニケーションの活性化につながった。

受賞のポイントは、「非公式感」を重視した企画・制作で、80%の番組視聴率を達成したこと。そして社内コミュニケーションの活性化のほかビジョンの共有につなげた点などが評価された。審査員の守島さんは「働く人が主人公となって動き出し、いきいきと働ける場を作っていく、そんな可能性を秘めています。コロナ禍で在宅勤務が主となり、人と人とのふれあいをどうやって作っていくかを課題として抱える企業が多い中で、番組制作を通してリアルを感じることができるなど学ばせていただきました」と称えた。

「弊社は2013年に創業したベンチャーです。事業の拡大に伴い、人数が増えるにつれて一人ひとりの効果がわからなくなる『100人の壁』を迎えようとしており、実は社内のメンバー同士がもっと仲良くなるためという意味合いも込めていました。実際、関わるメンバーが自己実現したり、やりたいことを試したりできる場にもなり、本当に楽しんで続けることができました。これからの時代のヒントにもなればいいな、とも思います」と北原さん。

受賞式後、北原さんはガジェット通信の独自取材にも答えた。

――改めて受賞できた理由は何だと思いますか?

北原さん(以下、敬称略):新型コロナ流行とともに直面した「100人の壁」がまさにその理由だと思っています。コロナ禍でコミュニケーションの希薄化に悩む企業は多いと思いますし、100人の壁で悩むベンチャーも多いと思います。そんな中で、私たちが行った「オンライン番組」という形でコミュニケーション不足の解消を目指したことが、多くの企業のヒントになればうれしく思います。

――この取り組みにおける課題は何だと感じていますか?

北原:「番組配信を継続する難しさ」「社内で番組の市民権を得る難しさ」「皆が見たくなる番組を作る難しさ」。この3つが挙げられます。

――その課題に対して意識していることがあれば教えてください。

北原:まず「有志が自発的に集まり関係者の自己実現の場になっている」こと。「24時間テレビのような話題性のある企画を行い、たくさんの社員を巻き込むことで、注目を集めて多くの社員を番組応援者にする」こと。そして「真面目なルールで縛りすぎず、企画している自分たちが一番楽しんで企画する。だから見ている人も楽しんでくれる」こと。これらのことを意識して取り組んでいます。

IT企業や運送会社などが受賞!

また、各受賞と取り組み概要および受賞ポイントは次の通り。

<ワークスタイルバリエーション賞>
・「ライトカフェ」庄司洋祐さん

取組概要:シルバー人材を、AIの機会学習用のデータを作成するIT業務「日本語AIアノテーション」に起用(※)。シルバー人材向けの研修に加えて「紙の作業マニュアル」を配布するなど、作業環境の向上も重視。シルバー人材ならではの日本語力や真面目な姿勢を活かし、シルバー人材とAIを掛け合わせた新たな業務を創出した。
(※)2021年3月時点において日本語AIアノテーション業務は終了。

受賞のポイント:「日本語能力」や「真面目さ」など、シルバー人材の強みに着目した新たな雇用の創造や、シルバー人材の向上心が周囲のモチベーションを上げたという相乗効果などが評価された。

<ワークスタイルイノベーション賞>
・「大東自動車 三重県南部自動車学校」加藤光一さん

取組概要:従業員全員が「ほめる技術」を学び、朝礼でのロールプレイングの実践やノウハウ共有などを実施。従業員同士のコミュニケーションを活性化し、相互理解の促進を図った。

受賞のポイント:人をほめるための研修を継続的に実施することで、「職場の仲間に関心を持つ」という新たな組織風土に変化した点などが評価された。

<審査員賞>
・「ワークスアイディ」朝比奈一紗さん

取組概要:1人の女性社員が主体となり、電話面談やビデオ録画面談、ライブ面談など新たな取り組みを実施。同社員の妊娠を機に、テレワークの実施も促進した。

受賞のポイント:対面での面談や登録が常識だった派遣業界の風潮にとらわれず、「女性のキャリア」に向き合いながら率先して行動し続けた女性社員の思いと行動力などが評価された。

・「大橋運輸」岡田桃歩さん

取組概要:「週3日勤務」や「1日4時間からの勤務」、採用時の履歴書性別欄の廃止、外国籍社員への通訳スタッフや日本語教室によるサポートなど、職場のダイバーシティ経営を実施。ダイバーシティ人材による新規事業も展開した。

受賞のポイント:従業員の個性を活かした新規事業創出や社員の成長を実現した点や、大企業の印象が強いダイバーシティは中小企業にも重要であることを体現した点が評価された。

・「カクイチ」鈴木琢巳さん

取組概要:電話とFAX中心だった業務体制を、入社1年目の社員がプロジェクトリーダーとなってSlack導入を推進。従業員同士の連携を高めながら、部署間の垣根を超えた「5名1組の組織横断型タスクフォース」で取り組むプロジェクトを実施した。

受賞のポイント:入社一年目の社員がリーダーとなりアナログ文化に変革を起こした点や組織横断型のタスクフォースによって社内連携を深めた点などが評価された。

<Cheer up賞>
・「福井大学医学部附属病院」大北美恵子さん

取組概要:看護職員の制服を、日勤と夜勤で分けて白色と紺色の2パターンへ変更。従業員の定時に対する意識を高めるとともに残業時の周囲からの不必要な声がけを減らし、取り組み前後で年間900時間の残業を削減した。

受賞のポイント:追加コストをかけずに「ユニフォームを色分けする」という簡単な方法でスムーズに時間外労働を削減した点や、シフト制を敷く幅広い職場での汎用性が評価された。

・「宮城県漁業協同組合 七ヶ浜支所」鈴木祥さん

取組概要:個人事業者の漁師が競合していた海苔養殖業。東日本大震災で加工施設が被害を受けたことをきっかけに、協業を促進。個人のノウハウを共有することで海苔の品質を向上させ、海苔のブランド化による収益の増加、施設の共用による経費削減も実現した。

受賞のポイント:震災以降の事業再開だけでなく海苔漁師の協業化を実現した点や、商品のブランド化による収益拡大、町の活性化を促進した点などが評価された。

最後に「時代の流れをつかみながら、小さなアイデアをたゆまぬ努力によって成果につなげる大切さを学ばせていただきました」と守島氏が締めくくった今回のイベント。各事例を活かしながら、「働き方」についてアップデートしていこうとする企業が増えたイベントとなった。

第7回 GOOD ACTIONアワード:
https://next.rikunabi.com/goodaction/

(執筆者:小山田滝音)

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