旧約聖書(ヘブライ語聖書)の最古の写本が含まれている、約1900年前の「死海文書」の断片が、約60年ぶりにイスラエルのユダヤ砂漠の洞窟で発見された。
内部に人骨が散在していることから「恐怖の洞窟」と呼ばれる洞窟内で発見された羊皮紙の断片には、旧約聖書の「十二小預言書」の一部が記されてるとイスラエル考古学庁(IAA)は発表した。
また、今回発見されたものは、今まで発見されていた死海文書の一部ではなく、新たな死海文書ではないかと報じるメディアもある。
ハル・ヘベルのワディにある第8洞窟は、1960年代に40体もの古代人の遺骨が発見されたことから、「恐怖の洞窟」としてその存在を知られていた。
紀元132年から135年の間にローマ帝国に抵抗したユダヤ人たちの反乱、バル・コクバの乱が起こった。これらの遺骨はそのときに餓死したユダヤの人たちのものだという。
洞窟の入り口は切り立った崖の頂上から約75メートル下に位置しており、古代ユダヤの人々は縄ばしごを使って出入りしていたとされている。
結果的に、この反乱は鎮圧され、50万人以上のユダヤ人が殺されたり、この地域を追われたという。
Thrilling finds have been uncovered by the Israel Antiquities Authority in the Judean Desert
死海文書の一部なのか?新たな死海文書の発見か?
ギリシャ語で書かれた新たに見つかったこの聖書の写本は、ちょうどバル・コクバの乱の時代にさかのぼるもので、ザカリアと書とナホム書からの一節が含まれていると、イスラエル考古学庁(IAA)が発表した。これらは旧約聖書の中の十二小預言書の一部だ。
あなたたちのなすべきことは次のとおりである。互いに真実を語り合え。城門では真実と正義に基づき、平和をもたらす裁きをせよ。互いに心の中で悪をたくらむな。偽りの誓いをしようとするな。これらすべてのことをわたしは憎む、と主は言われる(ザカリア書8章16~17節)
という言葉が、写本の断片から読み取れる。IAAは、略奪されることなく、非科学的な発掘でもなく、聖書の写本が科学的な発掘調査で発見されたのは、約60年ぶりだと言っている。
一方で、新たな死海文書の発見だと報じるメディアもある。死海文書とは、1940年代から1950年代にかけて、ヨルダン北西地区クムラン遺跡近くの洞窟で見つかったおよそ900もの旧約聖書の断片のことだ。
しかし、今回発見があった恐怖の洞窟はクムランの近くではなく、IAAも、新たに見つかったものはこれまで発見された死海文書の一部ではなく、新たな聖書の写本としている。
REVEALED! New Dead Sea Scroll Fragments of Biblical Prophets Zechariah, Nahum Found | CBN News
盗掘される前に砂漠の洞窟を再調査
2017年以来、IAAはユダヤ砂漠の洞窟で新たな文書を探し出す一大プロジェクトを行っている。この地域では略奪が大きな問題になっているため、当局は、考古学者よりも先に泥棒に見つかって盗まれることを懸念している。プロジェクトの一部として、これまでに発掘が行われた洞窟を再発掘している。
新たに発見された写本の断片は、さらなる関心を引き起こしています。この歴史的に重要な作業を完成させるには、英知を結集しなくてはなりません。泥棒に盗まれる前に、洞窟内のすべての未発見データを確実に回収しなくてはなりません
IAAのイスラエル・ハッソンは言う。
今回、同じ洞窟からは写本の断片だけでなく、6000年前の子どものミイラも見つかっている。CTスキャンで分析してみたところ、6歳から12歳の女の子と見られ、浅い穴の中に埋葬されていた。
さらに、竪琴やナツメヤシなど、ユダヤのシンボルが刻印された硬貨もこの洞窟から見つかっている。やはり、バル・コクバの乱の頃のものだという。
およそ1万500年前に作られたカゴも出てきた。IAAは完全な状態で発見された世界最古のカゴだとしている。
References:livescience / Israel Antiquities Authority/ written by konohazuku / edited by parumo
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