2100年までに、北半球では、ほぼ半年近く夏が長く続くという予測が、アメリカ地球物理学連合の学会誌『Geophysical Research Letters』(2月19日付)に掲載された。
年々夏は暑くなってきているとは実感じていたが、春・秋・冬が縮み、夏が長くなると様々な問題が生じる。こうした季節の変化は、農業や環境、人間の健康に大きな影響を及ぼすと考えられるという。
1950年代、北半球では春夏秋冬が概ね規則的にめぐっていた。しかし気候変動は、各季節の長さや到来時期といったパターンを劇的かつ不規則なものに変えつつある。
この傾向は、何も対策を施さず現状の社会経済活動を続けた場合には、よりいっそう極端なものになっていくと予測されている。
「夏が年々長く暑くなる一方、冬は短くなっています」と、中国科学院南海海洋研究所の物理海洋学者グアン・ユーピン博士はPhys.orgで語っている。
2100年までに夏は半年を占めるようになる
グアン博士らが1952~2011年の気候データを利用して調査したのは、北半球の四季の長さとそれが始まるタイミングの変化だ。たとえば夏の始まりは、その夏の最高気温の上位25%に達したとき。あるいは冬の始まりなら、最低気温の上位25%の気温に達したときと定義する。
その上で、60年間における季節サイクルの変化から気候変動モデルを作り、それが将来的にどのように変化するか予測した。
その結果明らかになったのは、1952年から2011年にかけて、夏の長さが平均78日から95日に延びたことだ。
その一方で、冬は76日から73日に短くなっていた。また春は124日から115日、秋は87日から82日に縮んだ。
また、そうした変化にあわせて夏と春の到来が早まり、秋と冬は遅くなったことも分かった。こうした四季の変化がもっとも顕著だったのは、地中海地域とチベット高原だ。
仮に何らの対策が講じられることなく、このまま気候変動(地球温暖化)が進めば、2100年までに夏は1年のうち半年を占めるようになり、冬は2か月未満になると予測されている。
生態系、農業、健康に生じるリスク
こうした変化はただ季節感が狂ってしまうということだけではなく、重大な環境リスクや健康リスクをもたらすと、グアン博士は説明する。たとえば、鳥は渡りのパターンを変えるかもしれないし、植物の成長や花を咲かせる時期もズレてくる。すると動物のエサの需要と供給にミスマッチが生じ、やがて生態系が乱れることになる。
人間にとっても深刻だ。季節外れの暖かい陽気や大雪は、芽生えたばかりの農作物に被害をもたらす。
また植物の成長期間が長くなれば、アレルギーを引き起こす花粉がたくさん撒き散らされ、病気を媒介する蚊の生息域もより北へと広がる。
2020年1月は、過去141年でもっとも暑い1月だったが、おそらく普通の人にとって、2~5度の気温上昇と言われてもあまりピンとこないだろう。むしろ季節が大きく変化しようとしていると言われた方がイメージしやすいかもしれない。
季節の変化は、人々の認識に大きなインパクトをもたらすのではないかと、米ケント州立大学の気候学者スコット・シェリダン氏はコメントしている。
アメリカのホワイトハウスは、22日・23日の2日間、オンライン形式の気候変動に関するサミットを開催する予定だ。中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領、日本の菅義偉首相を含む世界各国・地域の首脳40人が招待されている。
References:Northern Hemisphere summers may last nearly half the year by 2100/ written by hiroching / edited by parumo
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