自身への起訴相当議決については言及しない菅原氏

 2月24日付で、東京第四検察審査会が「起訴相当」と議決した菅原一秀前経産相。同議決報道後、有権者の前から雲隠れをしていた代議士が、選挙区内での駅頭を再開。迫る起訴や失職・議員辞職について菅原氏への直当て取材を行った。

◆検察審査会決定で追い込まれる菅原氏
 選挙区内での香典や枕花代名目の寄付行為が公選法違反容疑に問われたものの、昨年6月に不可解な不起訴(起訴猶予処分)となっていた菅原一秀衆院議員。3月12日の起訴相当議決の報道以降、選挙区内で行っていた駅頭活動を取りやめ、有権者の前から姿を消していた。菅原氏の雲隠れは、経産相を辞任した直後の2019年10月からの約1年間に続いて2回目。ところが今回の雲隠れは5日間で終了、翌週には駅頭を再開した。

 この菅原氏、ついに「詰んだ」という見方もある。その根拠はこうだ。
 民意を反映した検察審査会の起訴相当議決によって東京地検は再捜査を行う。そこで、不起訴処分となったとしても再度検察審査会が起訴相当と議決すれば、今度は指定弁護士による強制起訴となる。そうなると検察の面目は丸潰れとなるため、起訴せざるを得ない状況だ。

 まず検察は、菅原氏に対し略式命令請求(略式起訴)の打診を行うと見られる。しかし、菅原氏は略式起訴には同意しないだろう。なぜなら簡易裁判所での略式起訴で罰金刑が確定すると、公職選挙法252条第1項の規定により5年間公民権(選挙権と被選挙権)が停止されるため、失職することになるからだ。また、刑の確定から5年間は立候補ができなくなる。

 菅原氏から略式起訴の同意を得られない場合は起訴(公判請求)となり、東京地裁で公判が開かれる。しかし、昨年6月に起訴猶予処分となった際に菅原氏は公選法違反があったことは認めており、前言を翻し公判で否認するわけにはいかない。また、公判になると詳細かつ多岐に渡る悪質な公選法違反がさらに明らかとなる可能性もあり、裁判官の心証は悪くなることはあっても良くなることはないだろう。となると有罪判決になることは大いにあり得るのだ。これが、菅原氏が、ほぼ「詰んだ」と言われている理由だ。

◆公民権停止規定の不適用も
 前段で「ほぼ」とした理由を説明する。
 2019年参院選における大型買収事件の公判において、それまで無罪を主張していた河井克行元法相が23日、一転して買収容疑を認め議員辞職を表明した。その背景について選挙コンサルタント・政治アナリストの大濱﨑卓真氏は、補欠選挙回避にあると分析している。
〈参照:Yahoo!JAPANニュース|『河井克行元法相は、なぜ突然買収容疑を全面的に認めたのか、選挙日程を逆算した裏事情とは』大濱﨑卓真

 菅原氏も河井元法相と同様に3月15日までに議員辞職しなかったため、自身が立候補できない補欠選挙が4月に行われることはなくなった。そして、たとえ起訴されたとしても刑が未確定であれば、次期衆院選への出馬は可能だ。
 また、公職選挙法は第252条4項において「裁判所は、情状により、刑の言渡しと同時に、第1項に規定する者に対し同項の5年間若しくは刑の執行猶予中の期間について選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用せず、若しくはその期間のうちこれを適用すべき期間を短縮する旨を宣告することができる」としており、公民権停止規定の不適用や停止期間の短縮ということも理論上は起こり得る。

 つまり有罪判決が出たとしても、昨年6月の東京地検による不可解な起訴猶予の際のように「経産相を辞任するなど反省している」「法を軽視する姿勢が顕著とまでは言い難い」「香典の代理持参は飽くまでも例外で大半は本人が弔問した際に渡していた」「寄付の総額が少ないことなどから悪質性は低い」などと司法が判断すれば、公民権停止が適用されない可能性もあるのだ。

◆駅頭再開から起訴相当議決まで
 改めて不起訴処分からの経緯を辿ってみよう。
 選挙区内で常態化していた公選法違反容疑で訴追は必至と見られていた菅原氏は昨年6月、東京地検の不可解な不起訴処分(起訴猶予)によって公訴提起を免れた。その後、師事する菅義偉氏の人気(当時)に便乗、禊は済んだとばかりに自民党総裁選が行われた9月以降、選挙区内で駅頭を再開していた。
〈参照:HBOL|公選法違反常態化の菅原一秀を東京地検が不起訴処分、起訴猶予は妥当ではない
〈参照:HBOL|菅氏の人気に便乗、1年ぶりに有権者の前に姿を見せアピールに勤しむ菅原一秀前経産相

 さらに菅原氏が筆者の直撃取材に逆切れし開き直りを見せていたことは、本サイトで報じた通りだ。
〈参照:HBOL|菅原一秀衆院議員、駅頭演説への直撃取材に、説明責任果たさず「脅迫」「嫌がらせ」と逆ギレ

 そんな菅原氏にNOを突き付けたのが今回の東京第四検察審査会だ。刑事告発者からの申し立ては検察が捜査資料提出を拒んだことによって却下せざるを得なかったものの、同審査会は異例の職権審査により起訴相当と議決。12日、そのことを各メディアが一斉に報じると、菅原氏は翌日から駅頭を止め、有権者の前から姿を消した。

◆再び駅頭を”自粛”し雲隠れ
 菅原氏の起訴相当報道に対するリアクションは、12日に「本日、検察審査会の決議が発表されました。真摯に受け止め、当局から要請がありましたら誠実に対応してまいります」とのコメントを出したのみ。オフィシャルブログにも「誠心誠意」と題して同じ内容が掲載。翌13日朝のYOUTUBE配信では「真摯に受け止め、誠心誠意お応えしてまいります。」と発信していた。
 ところが、12日に、菅原の練馬事務所と国会事務所に電話したがどちらも応答はなかった。

 起訴相当報道の翌13日から17日まで選挙区内の駅に代議士の姿はなく、後援会連絡所を兼ねた菅原氏の自宅前に停められた街宣車が使われた形跡もなかった。

 そのまま雲隠れを決め込むと思われた菅原氏だが、18日から駅頭活動を再開した。ある有権者はこう指摘する。
衆院選が近いと見て、いつまでも雲隠れしているわけにはいかなかったのだろう」

 菅原氏が駅頭を再開したのであれば、どのように「真摯に受け止め、誠心誠意お応え」するのか、確かめる必要があった。「当局の要請」に「誠実に対応」とは「秘書に嵌められた」「(秘書は)文春からカネをもらってヤラセで撮った」と秘書に責任を擦り付けることなのか、直当て取材の機会を伺った。

◆「味噌がついた」と語る有権者
 23日、朝6時から東京9区の全駅をチェックした。ようやく8時前に大泉学園駅で秘書や区議を引き連れ駅頭活動を行う菅原氏を発見。

 菅原氏とグータッチを交わしていた有権者は、地元選出代議士の起訴相当議決に「いろいろありましたからね。しょうがないと思います」「味噌がつきましたよね」と呆れ顔ながら投票先は自民党候補から変えないとの旨を話した。。

◆完全黙秘も目は虚ろ
 駅頭を終えた菅原氏を直撃した。

「起訴相当議決で起訴は必至と言われていますが」
「失職するのでは、議員辞職するしかないのではと言われているが、見解を聞かせてください」
「『誠心誠意』『お応えする』とのことだった。答えてもらえますか」

無視を決め込む菅原氏

エスカレーターは歩いてはダメですよ」
「検察の捜査でも『秘書と週刊文春に嵌められた』と言うんですか」

エスカレーターは歩かず立ち止まる」キャンペーンを無視する代議士

「罪を認めているので起訴されると思うが、その場合、失職という可能性が高まる。そのことについては?」
「起訴された場合、自ら議員辞職するつもりはありますか」
「略式起訴の打診があった場合、受けますか」
「略式起訴を受けた場合、罰金刑以上で議員失職するが」
「『誠心誠意』答えてもらえますか」

 何を尋ねても“完全黙秘”を貫く菅原氏、一切反応を見せないまま秘書が運転する高級車に乗り込み去っていった。

 今回の取材の過程で自民党練馬区議2人に話を聞くことができた。菅原氏の元公設秘書・柴田幸子氏と今年7月の都議選への出馬を明らかにしている自称“武闘派”の小川けいこ氏だ。菅原氏との縁が深い両区議に、自民党東京都連会長代行で自民党東京都第9区支部長の菅原氏が起訴相当となったことについて尋ねた。柴田区議は「静観してます」と即答。小川区議も「私も常に連絡を取っているわけではないので」と前置きし「静観しているとしか言えない」「今、コメントしようがない」と困惑を滲ませた。

◆若手男性秘書が睨んで威嚇。質問した有権者を恫喝か?

菅原氏が去った後の光が丘駅前、違法駐車する街宣車、若手秘書は筆者を睨みつける

 買収を認め議員辞職の意向を表明した河井元法相と同様に、菅原氏も自身の買収行為を認め議員辞職しないのか訊くため、25日も各駅を回った。光が丘駅前で菅原氏の秘書2人を見つけたものの代議士は去った後だった。両秘書に質問を当てたところ、政策秘書の石黒氏は前日の菅原氏同様、無視を決め込む。若手の男性秘書に至っては、筆者の周りをグルグル2周しながら睨め付け「ん?ん?」と威嚇めいた言葉を発した。

◆質問した有権者を恫喝か?
 この日、地元の有権者が演説中の菅原氏に「いろいろ」質問したところ「名前と住所を教えろ」と恫喝された上に写真を撮られたとツイートしている。〈*菅原氏から恫喝され写真を撮られたというKazu氏のツイート

 これのどこが、「真摯に受け止め、誠心誠意お応えしてまいります。」なのか、理解に苦しむところだ。

メロンより甘い地元の支援者たち

筆者を見て、秘書に何やら支持する菅原氏

 同日夕刻、菅原氏が石神井公園駅前で駅頭をしているとの情報が入り、向かった。

 菅原氏に声をかける支援者の男性に起訴相当について訊くと「もういいでしょ」「この人は結構クリーンなところあるから」と返答。菅原氏に「応援してます!」と握手を求めていた別の女性支援者に至っては、菅原氏の公選法違反について「違います!」と本人に替わって完全否定する始末だ。

何を訊いても無言の菅原氏

 演説を終えた菅原氏に、河井克行元法相が買収を認め議員辞職の意向を表明した件について尋ねたが、前日と同じく何の反応も示さず、秘書が運転する車に乗って去っていった。

◆地元市民団体は議員辞職を求め、元秘書は「因果応報

19日、石神井公園駅前で行われた地元市民団体によるリレーピーチ

 起訴相当議決報道後、東京9区の主要駅前では複数の市民団体が週末ごとに菅原氏の議員辞職を求めるサイレントスタンディングやリレーピーチを行っている。

 菅原氏の元秘書が、起訴相当議決について見解を述べた。

「今回の検察審査会の判断は妥当なものだ。ここで歯止めをかけられなければ、お金や物をやり取りしないと練馬区では選挙に勝てないという仕組みがこのまま続いてしまう。これでは次の世代の政治家を志す人たちに適切な姿勢を見せることができない。時効を迎えるものがどんどん迫っているので、検察には早急に起訴し急ピッチで進めてもらわなくてはならない」

 また、別の元秘書は菅原氏に対し「因果応報」と指摘している。

 検察と菅原氏の動きに注視したい。

<取材・文・写真/鈴木エイトジャーナリスト)>

【鈴木エイト
すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教カルトと政治というテーマのほかにカルトの2世問題や反ワクチン問題を取材しイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)、『日本を壊した安倍政権』(扶桑社

自身への起訴相当議決については言及しない菅原氏