ドイツ代表MFジョシュア・キミッヒ(バイエルン)が、2022年にFIFAワールドカップを開催するカタールの移民労働者問題についてコメントした。28日、『ロイター通信』が伝えた。

 イギリス紙『ガーディアン』は先月、カタールが10年前にW杯の開催権を獲得して以降、少なくとも6500人の移民労働者が死亡したと報道。その多くがW杯のプロジェクトに従事していた人々だったという。

 報道を受け、ドイツ代表の選手たちは25日に行われたW杯欧州予選のアイスランド戦前にアルファベットが書かれたTシャツを着用し、「HUMAN RIGHTS(人権)」の文字を形成。同国の他にも、ノルウェー代表やオランダ代表の選手たちが、カタールの人権問題を懸念するシャツをW杯欧州予選で着用している。

 キミッヒは28日に行われるW杯欧州予選のルーマニア戦を前に、改めてカタールの人権問題に言及。ボイコットを呼びかけるには手遅れであることを認めたが、それでも一人のサッカー選手として声を上げ続けることに意味があるという自身の考えを述べた。

ワールドカップをボイコットするには10年遅かったと思う。開催が決まったのは今年ではなく、何年も前だ。僕らはその時に声を上げるべきだった」

「今、僕らはこの機会や僕らの知名度を利用し、物事に対する意識を高めていかなければならない。だけど、それは僕らサッカー選手だけの問題ではない。みんなで協力しないといけないんだ」

サッカー選手として、僕らにはある種の責任がある。僕らには、物事について話す責任がある。この話題に関しては、本当に自発的だったシャツの活動でそれを試みた。サッカーでは物事を指摘するチャンスがあり、僕らはそれを続けていくべきだ」

 カタールのW杯主催の担当者は批判の動きに対し、「労働者の健康と安全について常に透明性を保ってきた」と主張。「2014年にスタジアムの建設を開始して以来、作業関連の死亡事故は3件、非作業関連の死亡事故は35件発生しています。それぞれのケースを調査し、将来的に繰り返さないように教訓を学んできました」とコメントしている。

 なお、ドイツサッカー連盟(DFB)は、W杯のボイコットには反対する一方で、代表チームの抗議活動は支持するという姿勢を示している。また、ドイツ政府も選手たちの行動に連帯感を示し、民主主義の価値観を反映していると述べている。

キミッヒがカタールの人権問題についてコメント [写真]=Getty Images