株式市場のコントロール放棄したFRB

 3月16~17日に、米国の金融政策を司る中央銀行FRBは、「2023年末までFF金利を上げない」と発表した。

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 私には「FRBはマーケットのコントロールを放棄します」あるいは、「さらに株式バブルを発生させます。後は知りません」とも聞こえた。

 図1を見てもらいたい。2015年、今よりはるかに米国株が安かった時、すでにFRBはFF金利を引き上げ始めた。

「米国株は過熱になった。冷やさなくては」という正常な判断が働いたのだ。

 しかし、2020年コロナ以降の米国株は、FRB自身がFF金利を一気にゼロにすることでバブルを加速させた。2016年よりはるかに過熱だと分かっていながら。

 つまり、FRBは株式市場のコントロールを放棄したのだ。

 それだけ、コロナ克服のための景気刺激の必要性、そしてジョー・バイデン新政権の超大型の財政拡大を賄うために戦後最大の規模で発行される国債の消化のために、ゼロ金利政策を継続することが至上命題となったとも言える。

FRBは万能という共同幻想は終わった

 前回説明したように、FRBはボルカー議長時代(1979~87年)に信用を回復し、マエストロと呼ばれたアラングリーンスパン議長時代(1987~2006年)に米国の経済と株式市場の長期成長を実現して、「FRBは万能」という評価を高めた。

 しかし、3月16~17日の決定をそのまま実行すれば、これからのFRBは、株式市場はもちろん、国債市場と金利のコントロールを失うだけではない。

 最後には、FRB自身のバランスシートの深刻な悪化によって、FRBそのものの信用、すなわち、ドルの信用を失うだろう。

「共同幻想」が終わろうとしている。

米国株の大いなる錯覚

 このシリーズのこれまでの2回では、

コロナが始まった2020年から米国株は恐ろしく割高の水準まで上がってきたこと(特にGAMFAが所属するナスダックNASDAQ

②米国株を引き上げたのはFRBのゼロ金利政策(図1のFF金利、2020年にゼロになった)

リーマンショックまでは「ゼロ金利になったら買い」が勝利の方程式だった(この報告は後で説明)

④ところが、今回のゼロ金利はコロナ対策のためで、コロナがなければ金利は「引き上げ」のはず

 ということを説明してきた。つまり、今回のゼロ金利に基づく米国株高は「大いなる錯覚」である。この錯覚に気がついた時に、米国株式市場の興奮は去り、逆に我先に売りに走る。

米国株大暴落の法則

 特に、逃げ足が速いのが、ヘッジファンドや投資銀行のトレーダーたちである。

 彼らに巨額の投資資金を貸している銀行も我先に、追加保証金(「追証=おいしょう」とも言う)を投資家に求め、払い込んでくれなければ担保に取っている株式を強制売却する。

 これが大規模になれば、下げ→売り→下げ→売りが連鎖し、その中で投資家や金融機関の破綻が起き、津波のような下げを繰り返す連鎖反応が市場全体に広がり、数日間で大暴落する。

 5年、10年かけた値上がり益は3~4日でなくなる。米国株の大暴落の法則である。

 1929年の米国の大恐慌は4日間の株式大暴落で始まり、2008年リーマンショックでは3日間で大暴落した。

大暴落は津波

 資本主義の総本山、米国の株式市場は、100年前も今も、巨大投資家と、投資家に投資資金を貸す銀行が主役である。

 どういうことだろうか。

 100兆円を超すような株の「ポジション」を持つ投資家の資金の中身を見ると、最大の資金源は「レバレッジ」つまり、銀行からの借金の複雑な仕組みであり、「自己資金」は一部にしか過ぎない。

(様々に「ヘッジ」はしているが、万能ではあり得ない)

 お金を貸す時に、銀行は投資家の保有する株式を担保に入れている。株が大きく値下がりして、投資家が「追加証拠金」を積むことができなくなれば、銀行は自動的に投資家から担保に取っている株を売って、貸金の回収を図る。

 銀行が売れば、その株はさらに下がる。

 だから、株が暴落すると、銀行からの「清算売り」「アンワインデイングス」が大量に出る。大量に売りが出るとさらに暴落が広がり、さらに暴落を呼んで「大暴落」となる。

 平時の株の上げ下げを潮の干満としたら、大暴落の速度は津波であり、逃げるのが難しい。

 株の上昇には何年もの長い年月が必要なのに、大暴落は一瞬で起きる。トコトコとゆっくり上がるジェットコースターが急に真っ逆さまに落下するのにも似ている。

大暴落は金融危機になる

 大暴落が発生すると、銀行は投資家から担保に取っている株を直ちに売却しても、貸付を回収できず、銀行に損失が発生する。

 銀行の損失が拡大すると「金融機関の破綻」が起き、さらに、金融機関の救済ができないと「預金破綻」「企業倒産」「経済恐慌」「大失業」そして「大恐慌」となる。

 さらに世界に広がって「世界大恐慌」「ブロック経済」「持たざる国の困窮」が発生する。

 実際、「第2次世界大戦」になった起点が1929年からの米国株の暴落だった。

なぜ「21世紀型大恐慌」を心配するのか

 米政府が財政負担で「金融機関の破綻」を食い止め、米国の国際協調の要請に中国が応えて市場最大の財政支出で世界景気を下支えし、日米欧の協力でギリシャや南欧、東欧諸国の危機を救済したのが、2008年9月のリーマンショックだった。

 そう観察したから、後で述べるように、私は「リーマンショックは戦前型大恐慌にならない」と2009年2月出版の本に書いた。

 しかし、今、コロナ対策と戦後最大の景気後退で米国をはじめ各国の財政に余裕はない。

 米中の対立は深まるばかりだ。

 英国がEUを脱退して、米欧間の国際協調もいざというときの実効性が保証されなくなった。

「21世紀型大恐慌」の発生を心配する。

怖いのは米国債の暴落

 今回、恐ろしいのは、米国株式市場の大暴落とともに、米国債の大暴落が予想されるからだ。

 2000年のITバブルの崩壊、2008年リーマンショック、直近2つの米国株の大暴落が起きた時には、米国債は、平均して50%も価格が大暴騰した。

 つまり、株の損を国債の益で相殺することができたのだ。

 何も偶然そうなったのではない。

米国債は最高値の天井圏

 国債の価格には天井がある。

 国債の価格を決めるのは金利だ。ゼロ金利の今が米国債の天井圏である(厳密には日々の値動きがあるが長期で見たら誤差の範囲)。

債券市場は隠れた巨大市場

 ここで、国債を含めた債券というものの基礎知識を解説しておきたい。多くの読者の方は国債あるいは債券を買ったことはないと思う。身近な「金利」とは金利をもらう「預貯金」か、金利を払う「ローン」ではないか。

 まして、債券を売買する経験などないのが普通だろう。だから、多くの人には債券の値動きや損益といってもピンとこないだろう。

 しかし、先進国の経済では、国債などの債券は株式市場と比較しても十分に大きな巨大マーケットだ。

 ただ、株とは違って参加者が年金やファンド、金融機関などのプロがほとんどの“隠れた”巨大市場だ。だから、債券市場の変動は金融と経済に直結する。

 米国の債券市場総額は約40兆ドル(約4400兆円、2017年1Q)、株式市場は約51兆ドル(約5600兆円)だ。

(日本は債券市場が約1100兆円で、市場規模700兆円の株式市場よりも大きい)

 そして、米国債の大暴落は、金融機関や年金、そして、中央銀行であるFRBを直撃する。

金利と国債価格は逆に動く

 次に、国債の大事な基礎知識をお伝えしたい。

 株式と違って、国債の「市場価格」には、「金利と逆に動く」性質がある。

 金利が上がると価値は下がり、金利が下がると価値は上がる(社債には、信用度による価格変動という要素が加わる)。

 株と違って、国債の価格に天井があるのは、金利の「逆数」の性質を持つ「国債価格」は金利がゼロの時(もしマイナス金利といっても誤差に近い)が最高になるからだ。

1%金利が動けば米国債は10%動く

 金利感応度(デュレーション)という金融用語がある。「1%金利が動けば債券価格は何%動くか」かを表す指数だ。

 米国債デュレーションは約10である。つまり、1%金利が上がれば米国債全体は10%下がる。

リーマンショックでは米国債は大幅上昇した

 図1を見ていただきたい。

 リーマンショックの前は、FRBは黒い線のFF金利を大幅に引き上げていた。株式市場の過熱を抑えるためだ。金利上昇につれて米国債の価格もどんどん下がっていた。

 しかし、いったんリーマンショックが発生したら、FRBはFF金利をゼロにまで引き下げた。先ほど述べたように、米国債の金利感応度は約10だから、アメリカ国債の価格は約50%ほど上昇した。

リーマンショックでは巨大年金は救われた

 世界の巨大年金のほとんどは、世界の株と債券の両方に投資している。

 だから、リーマンショックの時もFRBの「予定調和」(後で説明する)に救われた。米株が大暴落した時に、米国債が大暴騰したからだ。

 やがて、2015年までのゼロ金利政策により、米国株式市場の上昇が始まり、日本や世界の株式市場も上昇して、世界の巨大年金はここまで大きなゲインを得てきているはずだ。

 そして、ここまでの米国株式市場の上昇で、今も「米国は強い」と自信を持つことになった。

 しかし、現在は、米国株だけでなく、米国債も最高値圏である。しかも、次回説明するように、米国債ファンメンタル(基礎的経済条件)は史上最悪である。

 もし、米国株と国債の大暴落が起きたら世界の巨大年金にパニックが広がるだろう。

FRBは米国債の世界最大の保有者に

 注意してもらいたいのはリーマンショックの時には、FRBは米国債をほとんど持っていなかったことだ。

 だから、FRBがFF金利を上下させて国債価格を大変動させても、FRB自身のバランスシートは価格変動の影響を受けなかった。

 しかし、今は違う。

 リーマンショック後は、FRBは「金融システム危機対応」「量的緩和」として国債の大量保有を開始した。

 そして、2020年からは、コロナ対策の財政支出のために市場最大規模で発行された米国債の最大の保有者になった。

 下の図2を見てほしい。

 リーマンショック当時は米国債をほとんど保有していなかったFRBが、今では米国債だけで日本のGDP(国内総生産)に等しい500兆円を保有し、さらに、景気後退や金融危機には国債以上に価格が下落するモーゲージ債券を200兆円も保有している。

金利を上げるとFRBに巨額損失が発生

 FRBは特別の法的な権限を有するが、形式的には民間銀行である。

 その2020年末のバランスシートを見ると、資産は7.4兆ドル、そのうち米国債が5.0兆ドル、モーゲージ債券(Agency債)が2.1兆ドルを占め、資産のほとんどが長期の債券である。合計すると、日本のGDPの1.4倍に上る。

 大事なのは、国債とモーゲージ債券の2つの種類の債券は、市場で活発に取引され、金利の上下によって、市場価格は大きく変動することだ。

 先ほど説明したように、「国債価格と金利は逆に動く」から、金利が上がれば、国債価格は下がる。

 金利の変動の度合いを「金利感応度」といい、1%金利が動けば、国債価格は平均して10%も動くのである。

 もし、金利が3%急に上昇したら、国債価格は3割程度下がる。つまり、FRBにはそれだけ「評価損」が発生する。

 仮に、かつてのFRBのように、株式市場の過熱を抑えるために、5~6%の大幅な金利引き上げを敢行したらは何が起きるだろうか。

 FRBの保有する国債やモーゲージ債券の市場価値は約半分になってしまう。3.5兆ドル程度目減りする。

FRBの借金は減らず損失が発生

 バランスシートで、資産の反対は負債である。もし資産が半分になった時に、負債も半分になるのであれば、FRBに「評価損」は発生しない。 

 しかし、FRBの負債のほとんどが、民間銀行に強制的に預けさせている「準備預金」と連邦政府への短期の債務である。

 こうした債務は、短期性のものであり、金利により債務の価値は上下はしない。つまり、FRBが金利を大幅に引き上げても、FRBの負債、つまり借金は減らない。

 FRBが保有する国債やモーゲージ債券などの資産が半分になって、反対側の負債が減らなければ、FRBは巨大な「評価損」「含み損失」を抱えることになる。

 普通の民間銀行であれば、大幅な「債務超過」になる。FRBにはどういうことが起きるだろうか。

民間銀行なら許されないFRBの国債保有

 いささか専門的になるが、FRBのバランスシートリスクは、民間銀行なら「ALMリスク管理」の観点からは許されない。

 ALMとはAsset Liability Managementの略称であり、日本語にしたら「資産負債管理」という平板な言葉になる。

 ALMリスク管理とは、「資産と負債のマッチング」を基本とする。

 具体的には、先ほど登場した「デュレーション」、つまり、金利感応度を一致させることが基本である。

 FRBが大量に保有する国債の金利は低く、しかも今の国債金利はゼロに近い。金利が大きく上昇したら資産である国債の市場価格は暴落する。

 しかし、その時に、負債である銀行や国などからの預金、つまり、短期借入は価値が減ってくれることはない。

 そのようなバランスシートは、FRBが監督する民間銀行であれば、許されない。

FRBが実質債務超過になるメカニズム

 FRBの純資産は1490億ドル。大きく聞こえるが、総資産に対する自己資本比率は、1490億ドル÷7.4兆ドル(総資産)だから、2.0%に過ぎない。

 もし、米国債の金利が大幅に上昇して(といっても6~7%になるだけであり、歴史的には低金利の範囲だ。下の図3の過去60年間の金利を参照してもらいたい)FRBの保有する国債とモーゲージ債券の市場価格が50%低下したら、FRBの資産は「時価評価」すると3.7兆ドル低下する。

 しかし、その時には、負債は仮に金利変動に対して時価評価しようと、7.2兆ドルで不変である。

 そうなると、FRBの純資産価値は、資産価値3.7兆ドル-負債価値7.2兆ドル=マイナス3.5兆ドルだから、3.5兆ドル目減りする。

 自己資本は1490億ドルだから、純資産価値のマイナスはそれをはるかに上回る。民間銀行であれば債務超過、破綻、ということになる。

 そんな事態になったら、どうするのだろうか。

それでも大丈夫と言う人たち

 驚くことに、このようなFRBの状況を「全く問題ない」と言う意見は多い。多数派といってもいい。

 例えば、3月22日日本経済新聞の定評ある経済教室において、ハーバー大学シニアリサーチフェローのポールシェアード氏は「超金融緩和と資産バブル(FRBの、筆者注)現行政策は妥当、懸念及ばす」という論文を発表しておられる。

 その中で、シェアード氏は、「量的緩和米国債のFRBによる買入、筆者注)は中銀通貨1ドルを政府債務やその他の資産1ドルと交換するものであり、資産スワップとよく似ている。(中略)民間部門がポートフォリオに保有するある形式の資産を別の形式に置き換えるだけだ」と主張する。

 驚くべき主張である。

 FRBが、金利が上がってもFRBの借金としての価値が変わらない、ドルという通貨を発行して、リーマンショックやITバブルの前にはFRBが5~6%に金利を引き上げるだけで、価値が半減する国債やモーゲージ債券と交換してしまっても、「問題ない」というのだ。

 ということは、実際に金利が上昇して、FRBが実質的な「債務超過」になっても、「問題ない」ことになってしまう。

FRBの「今そこにある危険」

 シェアード氏にお言葉を返すようだが、民間銀行では今のFRBのバランスシートのような極端な資産と負債の「ミスマッチ」は禁じられる。資産と負債の金利感応度を一致させることが「ALMリスク管理」の基本のはずだ。

 なぜ、そのようなマッチングを民間銀行は強要されるのか。

 その理由は、「金利変動が起きた時に破綻しないため」である。

 端的には、金利上昇した時に大幅に値下がりするFRBが保有するような長期の米国債を持つのは、民間銀行にとって危険だからだ。

 FRBが、第2次大戦後の特殊な時期を除いて、米国債をほとんど保有しなかったのは、FRBといえども、金利によって大きく価格が変動する国債の保有は危険だからだ。

 それでは、将来、金利が上昇してFRBの保有する国債が大幅に値下がりし、実質的に「債務超過」状態になった時には、どのようなことが起きるのだろうか。

FRB救済のために国債を発行するのか?

 まず言えることは、民間銀行と違って、FRBなどの中央銀行は、会計基準を自ら変更できるから、FRBの「評価損」を表面化させないことができる。

 その上で、中央銀行であるFRBを破綻させるわけにはいかないから、米国政府が救済することになる。

 救済するには財政資金が必要なので、米政府は国債を発行する。その国債をFRBが買えば、結局、「お札を刷って」FRBは自らを救済し、また国債を買うことになる。

 これは、戦前のワイマール共和国が破綻する前の措置とよく似てくる。

 その後、ワイマール共和国では、通貨価値の消滅とハイパーインフレが起き、政権は崩壊して、アドルフ・ヒトラーが権力を掌握した。

 米では、そこまでの事態にはならないだろう。当時のワイマール共和国と、世界最強国家の米国では国力が全く違う。ただ、金融政策には類似性がある。

 そして、この情報化時代に、こうした小手先の政策を取ることは至難の業だろう。事態の本質はすぐに見抜かれる。

 そのときは、どうするのだろうか。そして、今はどうしているのだろうか。

FRBは金利を上げられない

 3月16~17日の「2023年までFRBは金利を上げない」という宣言は、私には、FRBの「先送り宣言」に聞こえる。

 株式市場の過熱防止→FF金利の大幅引き上げ→国債の暴落→FRBに巨額損失発生→FRBの破綻リスク、という事態を先送りするためにも(コロナ禍の景気後退への対処と大量国債の消化という立派な理由もある)、株式市場の過熱防止のためには不可欠の金利上げを封印せざるを得ないのだろうか?

大暴落へ至る歪みの蓄積

 つくづく、人間が作り出すマーケットや経済の変動は、日本が地理的に背負う、宿命的な地殻変動と似ていると思う。

 一つひとつは合理的な行動に見えても、時間の経過という観点で見ると、「ヒズミの蓄積」「跳ね上がり」「破断」「大地震発生」「大津波発生」「大洪水」そして、営営と築いた蓄積の「一瞬での喪失」となる。

「世界の陸地の0.2%に過ぎない日本で世界の地震の20%が発生するのは、日本が4つのプレート境界が沈み込む「特異点」に位置しているからだ」というプレートテクトニクスが定説となったのは、日本の原発計画が作られた後だった。

 そのために、我々、現代の日本人は、地震、津波、原発、3つの災害に備える宿命を背負っている。

 そして、日本は、高度成長、バブル、株が5分の1になるバブルの崩壊、その後の長期低迷という「経済人災」においても、戦後世界の先駆者である。

 宿命に抗して「防災大国」である日本は、地震と津波という自然災害には、世界最高レベルの対処法で自らの身を守ってきた。

 安政大地震の時に、自らの稲むらに火をつけて多くの人に津波の襲来を知らせた「稲むらの火」の故事から学んで、国連総会で、毎年11月5日が「世界津波の日」となったように、日本が、米国発となりそうな「21世紀型大恐慌」という世界的な人災への「防災」あるいは「減災」を世界に提唱すべきだろう。

解説:FRBがマーケットをコントロールしていた時代の「予定調和

 再び、図1を見ていただきたい。

 1990年から2019年末までは、米国の中央銀行であるFRBが米国の株式市場を相当程度コントロールしてきた。

その間のパターン

①FRBの政策金利であるFF金利が低い時から、経済成長、好景気、株高が継続

②FRBが市場は過熱と判断、FF金利を継続的に引き上げ、それでも株は上昇

③FF金利をさらに引き上げ高金利に、やがて株式暴落

④FF金利を大幅に引き下げ、金利の低下により債券価格は暴騰することで株式市場の暴落ショックを緩和する

⑤①のパターンに戻り、経済と株式が上昇開始

 過去2回の株式市場の暴落であった2000年のITバブルの崩壊と2008年リーマンショックの双方では以上の①から⑤のパターンが見られた。

改めて

 改めて断っておくが、私は悲観論者ではない。また常に「大恐慌が来る」と脅かしてきたわけではない。

 2009年2月に出版した「太陽経済」(「日本経済復活のシナリオー太陽経済を主導せよ」)の中では、2008年9月に起きたリーマンショックから「戦前型大恐慌が起きない理由」を説明した。

 事実、大恐慌が起きるどころか、今年までに米国株式市場は最高値を更新してきた。

 しかし、アフターコロナが見えてきた株式市場は大暴落すると想定せざるを得ない。しかも、リーマンショックとは違って、米国の債券とドルも大暴落するリスクが高い。

 さらに、リーマンショックに際しては瞬時に形成された国際協調体制は、今は機能不全だ。そうなると、第2次世界大戦後初めての事態であり、マーケットの大暴落から「21世紀型大恐慌」に至るリスクが高い。

 どうしても警告しなくてはいけないと思い、2020年11月に「21世紀型大恐慌」(PHP出版)を書いた。詳しくはこちらを参照してほしい。

[もっと知りたい!続けてお読みください →]  米株式市場がまもなく大暴落に至る仕組みを詳解

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