舞台俳優として活躍する林勇輔が作・演出を手掛けた映像演劇『SHADOWS』が、2021年3月31日(水)19時から配信開始される。

本作は林が新たに書き下ろした作品で、本来であれば2020年12月に劇場で上演予定だったが、新型コロナウイルスの影響により有観客上演が難しいと判断し延期を決断。その代わり無観客で撮影し、編集を経て配信する形へとシフトチェンジした。

「コロナ時代に自分の演劇がどう在れるかの試み」としてクラウドファンディングを立ち上げ、ただ完成品を提供する従来のやり方ではなく、“演劇ができるまで”を観客らと共有するスタイルで、これからの時代の演劇体験を模索している。

その実験的映像演劇『SHADOWS』が、いよいよひとつの形を纏って3月31日(水)に配信開始となり、本配信は、有観客上演することを大前提とした「試み」でもある。

無料版と有料版が用意されており、無料版はYouTubeで、有料版はVimeoにて特典映像と共に公開される。

林勇輔コメント

「演劇と配信の相性は、やはり悪い」

僕の正直な感想です。

その瞬間、そこに居合わせる観客をもぎ取られた状態では、演劇は成立しないのかもしれない。それが演劇の定義(当たり前)なのだから。しかし、コロナの到来によって、様々な当たり前が秒速で当たり前ではなくなっている。これはもう観念するしかない。何ができないではなく、ならばこの状況で何が出来るかを考えた方が、豊かではないだろうか。そう思いました。もちろん若い頃は、ネガティブな感情をエネルギーに変えて生きていたタイプでしたが、この年になるとそれはもうしんどいんです。悲劇の主人公でいるには体力がいるんでしょうね。自分の質の変化とコロナがもたらした変化が、妙に合致したのだと思います。だから、「実験」というエクスキューズのもと、止まらず動き続けることを選択しました。

実験的映像演劇『SHADOWS』。

DVD化のため撮影した演劇、とか、生配信のアーカイブ、でもない、映像だけど「演劇を観た」という実感を持てるようなモノが作りたい…そう思って挑みました。面白がっていただければ幸いです。

ものがたり

冒頭、名も無き七人の役者たちが登場。芝居の準備を始める。
時制は、【今】であり、場所は【此処】である。役者たちは、役を被っていない状態であるが、素の何処其処の某というわけではなく、あくまで役者(影)である。

やがて、役者たちは観客を芝居の世界へと誘ってゆく。そこは、19世紀イギリス、と或る監獄。つまり、この七人は雑居房に居合わせた囚人達である。パブリック・スクールの国語教師であるランディ・シュヴァルツが、七人目として投獄されるところから物語は始まる。

ランディの罪状は、同性愛。光の射さない牢獄での生活に絶望していると、自分と同じように他の囚人たちもそれぞれに、爆発しそうなフラストレーションを抱えていることを知る。ある日ランディは、彼らのために物語を聴かせようと提案する。それは、独自に解釈した、グリム童話の『スノーホワイト』だった。童話の枠を越えた人間の業渦巻く物語に、囚人達は反発や拒絶を覚えながらも、いつしか物語世界にのめり込んでゆく。しかし、期せずして、物語によって自分の傷、闇の部分を炙り出される羽目になった囚人たちは、互いに激しく傷つけ罵り合うようになってしまう。

そんなある日のこと。彼らの雑居房の壁を突き破り、現れたものが―――――――それは、雪のように真っ白な肌をした、少年だった。