その原因は様々な説があるものの、地球の気温がどんどん上がっている。2100年までに北半球では1年の半分が夏になるという予測もでている。
こうした気候変動がもたらす悪影響は大きく、なんとか阻止しなければならない。あらゆる選択肢があってしかるべきだ。そこでアメリカの学術団体は「太陽の光を遮る」という選択肢を提案している。これは太陽の光を反射させ、その熱を逃がすという「太陽ジオエンジニアリング」だ。
米国科学アカデミー(NAS)は、『Relfecting Sunlight(日光の反射する方法について)』と題された報告書で、地球温暖化に対応するには化石燃料からの脱却がもっとも喫緊(きっきん)かつ重要と指摘しつつ、それが遅々として進まない現状を鑑みて、あらゆる選択肢の理解を深めておくべきだと述べている。
ここでのあらゆる選択肢とは、すなわち地球に降り注ぐ日光を反射して、その熱を逃がすこと。報告書では、「光を反射する微細な粒子を成層圏に散布する方法」「粒子で低空に浮かぶ海上の雲の反射率を上げる方法」「高高度の巻雲を希釈する方法」の3つを取り上げている。
なお自然を観察すれば、こうした方法が有効であろうことを示す事例がある。それは大規模な火山の噴火だ。このときに大量に噴出される粒子によって、実際に気温が下がることが知られている。
報告書によれば、太陽ジオエンジニアリング研究プログラムの初期投資額としては、5年間で1億ドルから2億ドル(約110~220億円)が妥当だろうという。
アメリカが温暖化研究に割り当てている予算に比べればごく僅かな額で、他の研究プロジェクトから関心を奪い取ってしまうようなものではない。
太陽ジオエンジニアリングの賛成派は、温暖化の影響は非常に大きいため、その影響を緩和するためにあらゆる選択肢が模索されなければならないと主張している。
悪用されたり、農作物に与える悪影響を懸念する声も
一方、そうした技術が温暖化防止対策としてだけでなく、ならず者国家などによって悪用されかねないことや、農作物への被害を懸念する声もある。こうした点を踏まえ、報告書は研究プログラムのガバナンス(統治・支配・管理)を強調している。たとえば、研究は行動規範に従い、社会的責任をはたすような形で進められなければならないとされている。
その対象には、太陽ジオエンジニアリングの効果の検証だけでなく、それが生態系や社会に与える影響の評価も含まれており、予期せぬ結果が生じるおそれのある屋外実験は、決定的に重要なデータを他の手段によっては得られない場合しか許可されるべきではないと、報告書には記されている。
太陽ジオエンジニアリングは実現可能なのか?
NASのマルシア・マクナット会長は、地球温暖化の深刻さを鑑み、太陽ジオエンジニアリングを研究する必要性があることを訴えつつも、研究のガバナンスは科学的な問いと同じくらい重要であると述べている。「人工知能や遺伝子編集技術といった発展を遂げつつある分野と同じく、科学はできるかどうかだけでなく、やるべきかどうかを世間に問わねばなりません」
過去、人間の都合にいいように環境を改変して手痛いしっぺ返しを食らった例は枚挙にいとまがないが、日光の操作はどうだろうか? かなりリスキーな禁じ手を検討しなければならないくらい、人類は追い詰められているということなのかもしれない。
References:'Dimming the sun': $100m geoengineering research programme proposed | Geoengineering | The Guardian/ written by hiroching / edited by parumo
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