今年で結成24年目を迎えるハロー!プロジェクトモーニング娘。'213月31日には、16枚目のオリジナルフルアルバム「16th~That's J-POP~」がリリースされた。

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本作にはシングル作品7曲、つんく♂作詞・作曲による新作7曲、2019年秋ツアーで披露された「Hey! Unfair Baby」の全15曲が収録されている。オリジナル曲でのアルバムとしては、3年4カ月ぶりとなる待望の作品になる。

つんく♂が「これぞまさしくJ-POP」とうたい、送り出すこのアルバムはどのような仕上がりになっているのか。新曲をピックアップして、グループの歌姫・小田さくらに曲への印象や、昨年のバラードコンサートを経ての成長などを聞いた。

■聴いて感じた15期メンバーの成長

――16枚目のオリジナルフルアルバム。仕上がりを聴いた印象はどうでしたか?

最高です!すごくいいアルバムだなっていうのが最初の感想ですね。オリジナルアルバムは約3年ぶりなので、リリース日が待ち遠しかったです。シングルと違ってアルバムのときは次々と新曲がきて、今の曲を覚えきる前に次の曲がくることもあるんです。レコーディングは大変ですけど、どの曲も歌っていて楽しくなる曲ばかりでした。

――つんく♂さんらしく、EDMからビートの効いたバンドサウンド、バラードといろいろなタイプの楽曲がそろっていますね。

そうなんです。ジャンルがとにかく幅広くて、つんく♂さんは「これぞJ-POPだ」とおっしゃっていましたが、本当にその通りだなって思います。昔は日本の音楽というと歌謡曲、演歌というくくりで、それがあまり馴染まない人は海外の曲を聴くしかないみたいな感じだったと思うんです。

でも今はJ-POPという大きなジャンルが確立されて、そこにどんな音楽もある。すごく充実感があるじゃないですか。このアルバム1枚で、「J-POPの魅力ってこれなんだな」って感じてもらえると思いますし、“ジャパニーズアイドル”という、日本にしかないアイドル文化の音楽も分かっていただける作品だと思います。

――昨年のバラードコンサートを経験しての1枚でもあります。バラードコンサートでは1人でステージに立つことになり、個々が自分の実力に向き合う良い場だったと思います。力不足を漏らす方もいましたが、小田さんはどうでしたか?

私はバースデーイベントではトークやゲームより歌をメインにしていて、普段から1人で歌い切る力をつけたいと考えていたんです。それでもバラードコンサートは勉強になる点が多くありました。メンバーみんなも「14人分の1」というモーニング娘。の中の1人ではなく、「私という1人」という意識が強く生まれたんじゃないのかなって。

やっぱりグループで歌う曲でも自分をしっかり持つことは大事だし、それでグループ自体も高まっていくんです。自粛期間もあって普段のライブはできなかったけど、そういうときだからこそできることもあって、全く無駄な時間ではなかったと思います。

――アルバムを聴いて、特に変わったという印象のメンバーはいましたか?

やっぱり15期メンバーの北川莉央ちゃん、岡村ほまれちゃん、山崎愛生ちゃんです。加入して2年目ですが、今の自分の実力が分かったと思うし、その上ですごく成長しています。最初の1、2年ってものすごく大事で、どれだけ上に行けるかのまず最初の時期になるんですよ。そこで1人でステージに立って歌い切る経験ができたのは大きかったと思います。特に愛生ちゃんはどんどんリズム感がよくなってきて、モーニング娘。らしくなってきたなって感じますね。

――山崎さんは、パンダの子でしたっけ?

パンダ “さん”です(笑)。

――ちょうど15期メンバーについてお聞きしたかったのですが、小田さんから見てこの3人はどんな感じですか?

3人ともとても頑張ってくれていて、それを見ていると少しでも何かしてあげられることはないかなという気持ちになってきます。加入してすぐに前例のない活動に移ってしまったじゃないですか。今までだったら1ツアーずっと一緒に回るので見てあげることができたのに、全然会える場がなくなってしまったから、教えてあげられることが少なくて。

だから、たまに一緒になる公演でお話すると、顔を見て、すごく一生懸命聞いてくれるんですよ。時間を置いて会う分、練習も頑張っているのが伝わってくるし、本当に一緒に過ごしたかったなと思います。

牧野真莉愛のソロから始まるファーストトラック

――では、アルバム新曲について。まず、ユニット曲を除いた5曲の中で一番お気に入りの曲を教えていただけますか。

全部好きなんですけど、「恋愛Destiny〜本音を論じたい〜」はもう振り付けが入っている曲なんですよ(初回生産限定盤Blu-rayにて本曲のパフォーマンス映像を収録)。本当なら中止になってしまった去年の春ツアーで披露する予定の曲だったので、それくらい前から作っていたアルバムなんですよね。とにかく勢いがあって、イントロがめちゃめちゃライブ映えするというか。「本日、初披露の曲です!」と言った瞬間に「ドン!」とイントロがかかる予定だったので、それがなくなってしまったのは残念です。でも、そういう形の初披露ではなくなってしまったけど、自分たちの中でくすぶっていた曲というか、早く世に出したいという思いが強かった曲なので、こうして聴いていただけるようになってうれしいです。

トラック構成でいうと、1曲目にマイナー調の「愛してナンが悪い!?」がくるのもいいですね。格好いい曲なんですが、こういうマイナー調の曲ってだいたい真ん中か後ろあたりのトラックにくる気がしていたので、聴いてみてちょっと驚きました。しかも、歌割りが今までにない感じで、(牧野)真莉愛が歌い出しを歌っているんです。

今までだと歌い出しはユニゾンか譜久村さん、私が多くて、真莉愛から始まる曲って本当に珍しいと思います。しかもアルバムの1曲目なので、「このアルバムは真莉愛から始まるんだ」って、すごく新鮮でした。

――そういうのって本人もうれしいでしょうね。

うれしいですよ。とても上手だったし、真莉愛の去年(2020年)1年の成長が分かりますよ。

――「泣き虫 My Dream」はイントロからラブソングという感じが直球で伝わってくるきれいな曲ですね。

そうなんです。きれいな曲だしキラキラしているんですが、雰囲気や歌詞は切なくて、ちょっと後ろを向いているような。でもその感じが人に寄り添う気持ちを思い出させてくれる歌だなと思います。レコーディングのときも、そういう人に寄り添う気持ちで歌いました。

――聴いていて、コンサートのラストにきそうな曲だなと思いました。

ああ、分かります!ライブが想像できる曲ですよね。そういう意味でいうと「このまま!」もアゲアゲな感じで、聴いているだけでステージで弾けている光景が浮かんでくるんですよね。

――ちなみに私がこのアルバムで一番好きだったのが「Hey! Unfair Baby」でした。バンドサウンドがアルバム全体の中で引き立っていますね。

いいですよね。つんく♂さんもこの曲が大好きなんだそうです。恐れ多い言い方ですが、つんく♂さん、まだこんなに新しい引き出しを持っているんだって。モーニング娘。だけでも20年以上も音楽を作っているのにまだまだ変化していって、毎回驚かされます。本当にすごい方だと思います。

■個性際立つ3曲のユニット曲

――恒例のユニット曲は3曲。小田さんは「信じるしか!」(生田衣梨奈石田亜佑美、小田、加賀楓森戸知沙希、岡村)に参加されていて、リリース発表のときのコメントでお気に入りの1曲と挙げていました。どういうところが刺さったのでしょうか?

最初に聴いたときはまとまっている曲という印象だったんですが、聴けば聴くほど型破り過ぎな曲だということが分かってきたんです。落ちサビの前にCメロがきたり、サビなのに急に静かになったり。よく聴くと構成が普通じゃないんですよ。後ろのインストはAメロBメロ、CメロDメロ?これ何メロ?みたいな感じにもなるんです。

特に好きなのが間奏明けの部分で、そこは私のソロから始まるんですが、フレーズが進むごとにユニゾンになっていって、岡村ほまれちゃんがバンッてアクセントとして入ってくるんですよ。そういう声の使い方がすごくオシャレで面白いなって思います。あと、コーラスも。私は2016年からコーラスを担当しているんですけど、この曲は過去イチしんどかったコーラスで、それもあって思い入れが強いです。

――ドラマチックなメロディーですよね。6人が並んで歌うのかな、というイメージが出てきます。

それが違うんですよ。「信じるしか!」はダンスナンバーで、つんく♂さんのイメージではめちゃくちゃ踊るらしいです。レコーディングのときに「めっちゃ踊ると思って歌って」と言われたんです。

――それは意外ですね。どんな風にダンスを合わせてくるのか、お披露目が楽しみです。

私も振り入れが楽しみです。私は普段、歌を任されることが多いので、ダンスナンバーにも選んでいただけたのがすごくうれしくて。歌を褒められるのはうれしいけど、それだけにはなりたくなくて、ダンス選抜にも入りたいとずっと思っていたんです。まだどんなダンスになるのか分からないですが、頑張りたいです。

――ユニット曲は他の2曲も個性的です。

とにかく勢いがあるのが「TIME IS MONEY!」(佐藤優樹野中美希横山玲奈、山崎)。格好良い曲で、歌ったあと楽しそうだなって思います。「二人はアベコベ」(譜久村聖牧野真莉愛羽賀朱音、北川)は「この4人の声だなあ」っていう、とてもかわいい曲ですね。

――このアルバムを聴いているとコンサートの光景が頭に浮かんできて、モーニング娘。'21の単独ツアーが楽しみになってきます。ツアー再開に向けて小田さんのお気持ちをお聞かせください。

今開催中のハロー!プロジェクトコンサート「花鳥風月」も楽しいんですけど、単独ツアーは昨年(2020年)すべて中止になってしまったので、早くそちらもやりたいですね。加入してからの8年間は当たり前のように春と秋はグループ単独で、夏と冬はハロコン(ハロー!プロジェクトコンサート)という日常を過ごしてきて、今思うとすごくありがたい日常だったんだなと思います。

中止になった春ツアーはゲネプロまでやっていて、あとは披露するだけだったんですよね。再開したらまたやればいいという考えもありますけど、新陳代謝が繰り返されるのがハロプロのグループじゃないですか。もしかしたら、次に単独ができるときは同じメンバーではないかもしれない可能性だってあるんです。そう思うと本当に早く今のメンバーでツアーをやりたいと思います。

――最後に、今開催されているコンサート「花鳥風月」について教えてください。

花鳥風月」は今までのハロプロ全メンバーが集まっていたハロコンとは違って、モーニング娘。'21や各グループのメンバーが花、鳥、風、月の4チームにシャッフルされてのコンサートになっています。1ツアーずっとこのチームで回るので、モーニング娘。'21の後輩を見るのと同じようにアンジュルムJuice=Juiceとか他のグループの子たちも注意して、話を聞いて1つの形を作ってきました。それはどこのチームも同じで、1曲限りのユニットではなく、花、鳥、風、月という新しいグループだという感覚です。

見る方たちも新鮮なように、私たちも違うグループの子たちと一緒になって新鮮な刺激でいっぱいです。自分たちの武器を持ち寄って、新しい武器を作って、きっとこのツアーが終わったあとはみんなに新しい装備が増えていると思います。

もう公演に来てくださった方も、できればツアー中盤、最後のほうも見てもらいたいです。それぐらいメンバーの成長が楽しみなコンサートなので、ぜひ足を運んでいただけたらうれしいです。

山崎愛生の「崎」は正しくは「立さき」

取材・文:鈴木康道

モーニング娘。'21の小田さくら。ニューアルバムについて聞いた