大学生のなかには、学業とともにアルバイトに励んでいる人も多いだろうが、急な用事ができたり、体調を崩したりして、働けなくなるときは誰にでもある。しかし、バイト先によっては、休む際には代わりに出勤できる人を見つけるよう、求められる場合があるという。

東京都内在住の女子大生Sさんは、何事も一生懸命に取り組む性格。それでも、たまに急用が入ったり、体調が悪くなることがある。ところがバイト先の店長やリーダーに連絡すると、「休むなら、代わりに出勤できる人を見つけてよ」と、強く言われるのだそうだ。

「たしかにシフトは1カ月前から決まっているものなので、体調が悪いときでも、残った力をふりしぼって誰か代わりを探しています……」。真面目なSさんはこんな風に、何とかして「代わりの人」を見つけているという。このように、会社がアルバイトに「代打」を探すように求めることは、法的に問題ないのだろうか。労働問題にくわしい山田長正弁護士に聞いた。

●「バイトに代わりを見つけさせる」という職場運用は法的に問題

「体調不良や急用などでアルバイト従業員が仕事を休む場合、その人自身に『代わりに出勤できる人』を探させるような職場運用は、法的に問題があると考えます。

特に、たとえば病気の際に会社が『代わりに出勤できる人を見つけなければ休ませない』というような運用をすることは、違法であると考えます」

具体的には、どんな根拠なのだろうか?

「従業員は、会社との雇用契約に基づき、労務提供義務を負いますが、これを超えて他の従業員を手配する義務までは負担していないからです。よって、他の従業員を手配することを会社が業務命令として出すことは許されず、業務命令権の濫用となり無効となります。」

ただ、アルバイトとはいえ、急に休むと職場に迷惑がかかるのではないかと思うが……。

「たしかに従業員は、会社との雇用契約に基づき、労務提供義務を負うことになります。したがって、欠勤した場合、つまり労務を提供しなかった場合には、法律上は債務不履行責任を負うことになります。

また、従業員の欠勤により会社に損害が発生したような場合には、損害賠償義務を負担し、金銭を会社に支払わなければならないケースもあり得ます。

さらに、欠勤が悪質であれば、就業規則にもとづく懲戒処分等もあり得るでしょう」

●代わりの人を見つけるのは会社側の仕事

そうなると、アルバイトにも責任があるのだから代わりを探すべきだ、とはならないのだろうか?

「しかし、欠勤により債務不履行責任を負う場合でも、アルバイト従業員が他の従業員を手配する義務まで負うわけではありません。

従業員を手配する責任を持つのは、あくまで会社側(使用者側)です。アルバイト従業員が、代わりの人を探してほしいという会社の命令に従う必要はありません」

山田弁護士はこのように結論づけていた。

(弁護士ドットコム トピックス)

【取材協力弁護士】
山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士
山田総合法律事務所 パートナー弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
事務所名:山田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yamadasogo.jp/

「休むなら代わりの人を見つけてよ」 バイト先のこんな命令に従う必要はあるの?