パナソニック4月1日、次期社長に内定している楠見雄規 常務執行役員が同日付でCEOに就任する人事を発表した。代表取締役社長の就任は、6月24日開催予定の定時株主総会と取締役会で正式決定する。

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●専業メーカーと伍して戦う「専鋭化」



 今回の就任にあたり楠見CEOはコメントを発表。2022年4月の持株会社パナソニックホールディングスの発足に向けて、「全事業において、攻めるべき領域に集中し、徹底的に競争力を高める、すなわち『専鋭化』を目指す」とあらためて宣言した。

 “専鋭化”とは、絞り込んだ事業領域で専業メーカーがしのぎを削る中、パナソニックを専業メーカーと伍して戦える集団へと変革することを意味する造語だという。

 楠見CEOは、22年4月以降の新しい体制図の構築に向け、自主経営責任というキーワードを使いながら「全ての事業をし烈な競争の中でも勝ち残ることのできる強い事業にしていく」と語る。

 また、事業競争力の強化は、松下幸之助 創業者の理念にも通じるとする。「パナソニックは綱領で『社会生活の改善と向上』と『世界文化の進展』に寄与することを、社会に対してお約束している。我々が社会に対し貢献するには、お客様に選んでいただける力を身に着け、日々磨き続けていくことが不可欠。それを成し得てこそ真のお役立ちが叶い、当社事業のたゆまぬ発展を社会から認めてもらえる」と、創業者の理念に立ち返って取り組んでいく姿勢を示した。

 19年の中期戦略の中で、30年を目標に「低収益体質からの脱却」という方針を示した。それを実現するために事業競争力の強化と、経営体質の徹底強化を図るという。

 同社の21年3月期通期の連結業績予想は、売上高6兆6000億円(前期比11.9%減)、営業利益2300億円(同21.7%減)、当期純利益1500億円(同33.5%減)と、2月に売上高と利益をともに上方修正したものの、いずれの項目も前期を大きく下回る厳しい内容となっている。とりわけ、3.5%という低い売上高営業利益率は、本業の競争力の弱さを示している。

 セグメント別の通期見通しでも、営業利益率で10%を超える事業はなく、経営トップの肝いりで注力してきたオートモーティブに至っては、調整後営業利益率がマイナス0.4%(営業損失50億円)と最下位の予想だ。まさに「低収益体質からの脱却」が、パナソニックの経営課題として重くのしかかっている。(BCN・細田 立圭志)
持株会社制に向けて新体制がスタートしたパナソニック