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2代目「ハチロク」世界初公開

text:Kenji Momota(桃田健史
editor:Taro Ueno(上野太朗)

86(ハチロク)が、GR 86として新たなるスタートを切った。

【画像】どう変わった?【新旧トヨタ86を比較】 全64枚

トヨタガズー・レーシングがスバルと共同開発したGR 86の登場である。

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トヨタGR 86

全長4265mm×全幅1775mm×全高1310mm、ホイールベースが2575mmのFR車だ。

エンジンはスバル製の排気量2.4L水平対向型4気筒にトヨタの燃料噴射機構(D-4S)を採用。最大出力は235ps、最大トルクは25.5kg-mで、0-100km/h加速は先代より1.1秒俊足となる6.3秒である。
 
基本スペックを共有するスバル新型BRZは2020年11月にアメリカで公開されており、ウェブ系メディアなどでは動画による試乗インプレッションが掲載されている。

そうした情報からわかることは、BRZは先代と比べてエンジンパワーアップのみならず、走りの繋がり感が良くなり、ドライバーによる自在なクルマの取り回しがさらにやりやすくなったようだ。

そのうえで、新型GR 86は、新型BRZとは「異なる走り味」だと、トヨタは説明する。

初代86と初代BRZでも、走りの味付けをかえてきたが、新型ではさらに走りの差が広がっているのだろうか?

新型GR 86の日本発売は2021年秋ごろの予定なので、夏ごろには報道陣向けに先行試乗の機会があることを期待したい。

それにしても、トヨタはなぜ86にこだわるのか?

なぜ、自社生産ではなくスバルとの協業を選び続けるのか?

生き抜くための投資 トヨタの今

2020年(暦年)での、トヨタは952万8000台を売上げて、自動車販売台数世界ナンバー1となった。ここにはトヨタの実質的な子会社である日野とダイハツも含まれている。

5年ぶりに世界トップとなった背景には、ライバルである独フォルクスワーゲングループ(以下、VW)に対して、コロナ禍による世界各地での販売の落ち込み比率が低かったことが挙げられる。

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トヨタGR 86

主な要因としては、コロナ禍の影響が大きかった欧州市場への依存度で、VWはトヨタより大きいことなど、それぞれが得意な市場が違うことが挙げられる。

その他には、トヨタデンソーやアイシンなど自社資本のサプライヤーが多いことも部品の安定供給につながったといえる。

こうして、企業としては万全な体制を敷くトヨタだが、豊田章男社長がいい続けている「100年に1度の自動車産業の大変動期を生き抜く」ために、年間1兆円レベルでの開発投資を続けている。

開発投資の主体となるのは、いわゆるCASEと呼ばれる、コネクテッド、自動運転、シェアリングなどの新サービス、そして電動化だ。 

こうした中で、GR 86はどういった立ち位置になっているのか?

自動運転や電動化とは、真逆の商品性に思えるのだが、GR 86の狙いはどこにあるのか?

単なるブランド戦略ではない

ブランドでは、GRに属する86。

トヨタはGRを「モータースポーツ直系のスポーツカー・ブランド」と定義している。ここに2代目86はベストマッチしていると感じる。
 
そもそも、86はトヨタがGRブランドを誕生させるための試金石になったといえる。

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トヨタ86(先代モデル)    トヨタ

2000年代後半に初代86に関して、トヨタの製品企画が検討を始めたころ、トヨタは前述ようなVWとの戦いなど、世界戦略のなかでBRICs(ブラジル、ロシアインド、中国など)と呼ばれた経済新興国での新規事業開拓が優先されてきた。

一方で、トヨタF1が終焉し、トップ・カテゴリーとしてはル・マン24時間に代表されるプロトタイプマシンになる耐久レースへの転換に加えて、量産車に近くメーカー開発者と販売店関係者が直接参加できるニュルブルクリンク24時間などに対する、トヨタのモータースポーツ領域での志向の転換が起こっていた。

その中で、トヨタが参考にしたのがスバルだった。

スバルとの協議を主導したのは、豊田章男社長である。ニュルブルクリンクはもとより、日本国内のトヨタ・テストコースで開発車両のステアリングを自ら握ることで、「これからのトヨタはどうあるべきか?」を自問自答していた。

導き出されたのは「もっといいクルマづくりの追求」という、自動車メーカーとして至極自然な言葉だった。

トヨタ生き残りには86が必要

「もっといいクルマづくりの追求」では、トヨタ全体として既存の枠組みにこだわらず、クルマづくりに対して共感できる仲間がいれば、ざっくばらんに話をして、手を取り合っておこなえることがあれば早期に実施する。

こうしたトヨタにとって新しい発想の第1弾が、86とBRZだった。

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トヨタGR 86

それらの誕生から9年が経ち、CASEが本格化し、グーグルやアップルなどIT大手が自動車産業への本格的な参画が現実となるなど、86を取り巻く社会情勢は大きく変わった。

こうした時世で、スポーツカーの世界は、メーカーにとって少量生産でも採算性の高い富裕層向けの数千万円クラスを主流となり、軽量コンパクトな大衆スポーツカーは音量規制や衝突安全への対応などを含めて次々と姿を消している状況だ。

それでも、トヨタは86をGR化させて存続の道を選んだ。

GRとしては近年中に、新車価格3億円とも噂される耐久レースプロトタイプをベースとしたスーパースポーツが量産される。

また、WRCから量産車へとつながった、GRヤリスなどまさにモータースポーツ直系のモデルがある。

その中でGR 86は「GRにすれば、86が生き残れる」という発想ではなく、「トヨタが生き残るためには、GR 86が必然だ」というトヨタとしての強い意志の現れだと思う。

GR 86は今後、さらに進化していく。


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