コロナ禍に伴う外出自粛により、自宅で気軽に楽しめる趣味として、改めて注目されつつあるコスプレカルチャー。もともと漫画やアニメ、ゲームといったコンテンツと並び、日本を代表するポップカルチャーの一角として親しまれていたコスプレ文化だが、2021年に入ってから突如、「コスプレの著作権ルール化」に関する発表があり、現在、さまざまな憶測が飛び交っている。

【写真】店内には『鬼滅の刃』など、さまざまな人気アニメのコスプレ衣装が並ぶ

一時は大勢のコスプレファンから、「今後はもう、自由にコスプレ活動ができなくなるのでは?」と心配する声が上がっていたが、明確な答えが示されるのはまだまだこれから。一部では、「トラブルの原因になりそうな要素を割り出し、ガイドラインを定める…くらいの形に落ち着くのではないか?」とも言われている。

こうした状況について、コスプレグッズの正規品を取り扱っている業者はどのように捉えているのだろうか?数々のコスプレ・ライセンス商品を取り扱うブランド「ACOS(アコス)」にインタビュー取材を行い、コスプレと著作権に関する問題や、トラブルなくコスプレを楽しむ方法などを聞いた。

■横行する海賊版非公式商品をどこまで抑えられるか?

ウィッグや衣装といったコスプレアイテムは、正規ライセンス商品のほか、海外の業者などが手掛ける海賊版も数多く出回っている。こうした状況が長年に渡り続いていたなか、この度の「コスプレの著作権ルール化」が発表されたわけだが、一連の報道について、ACOSとしてはどのように受け取ったのだろうか?

「ライセンス商品を取り扱う側としては、正規品と海賊版をきちんと選り分ける判断基準が設けられることは喜ばしく思っています。とはいえ、コスプレイヤーのなかには、個人で衣装を制作し、趣味の範囲で楽しまれている方も大勢いらっしゃるので、そこまで規制してしまうのは行き過ぎかもしれないですね。コスプレそのものが線引きの難しいジャンルということもあり、続報が気になるところです」(ACOS)

ちなみに、先ほどから話題に上がっている海賊版のコスプレ商品だが、これらはなぜ、今まで取り締まられることがなかったのだろうか。これについては、「明らかに特定のアニメやゲームのキャラクターだと分かるような衣装であっても、作品名を伏せることで誤魔化しつつ、版権元に無断で非公式商品を開発・販売している業者が多い」とのことで、商品名をぼかした表記にすることで、あえて検索に引っかかりにくくしているケースもあるという。

つまり、サブカルチャーに精通したユーザーならば、ぼかした表記であっても、キーワードなどから商品にたどり着ける…という、“同ジャンルならではの特性を逆手に取る”ことで、法の目をかいくぐりながら非公式商品を販売してきたというわけだ。「コスプレ著作権ルール化」により、そうした販売ルートは今後どうなっていくのかも、非常に気になるところだ。

■“趣味として楽しむコスプレ”を守り続けていくために

このように、コスプレには法律の整備が必要な一面があるものの、その一方で“海外でも広く親しまれている、日本発のポップカルチャー”という側面もある。ルール化を徹底することで、コスプレの“文化としての盛り上がり”にも変化は生じるのか、ACOS側の見解を聞かせてもらった。

「断言はできませんが、趣味でコスプレに取り組まれている皆さんから“楽しみ”を奪うようなことにはならないよう、配慮のあるルールが敷かれることを望みます。それによって、さらなるコスプレ文化の盛り上がりに繋がってくれればと考えます。また、これから新たにコスプレに挑戦しようと思われている皆さんにも、トラブルなく安全にコスプレを楽しんでいただける環境を整えていくことも、我々の役割であると考えています。“お客様に高いクオリティと感動を提供する”という理念のもと、これからも正式にライセンスを得た商品を展開していきますので、より多くの方にコスプレを楽しんでいただけますと幸いです」(ACOS)

さまざまな意見が飛び交い、未だに明確な答えが出ていない「コスプレの著作権ルール化」だが、今後のルール化について推移を見守りたい。

取材・文=ソムタム田井

取材協力:ACOS(アコス)

コスプレブランド「ACOS」の池袋本店にてインタビューを実施