2021年はオランダ人画家、ピート・モンドリアンの生誕150周年。これを記念した展覧会『モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて』が、SOMPO美術館で開催されている。オランダのデン・ハーグ美術館が所蔵するモンドリアンの作品約50点のほか、国内外からの作品約20点で、モンドリアンの足跡をたどる展覧会だ。
水平、垂直の直線と、赤・青・黄色の三原色を組み合わせた「コンポジション」シリーズで知られているモンドリアンだが、誰もが知るこれらの作品にたどり着く前も、さまざまな作風で絵を描き、1944年にニューヨークでその生涯を閉じるまで、自分なりの「純粋な美」を追求しつづけていた。本展では、そんなモンドリアンの制作スタイルの変遷をたどっていく。
1872年にオランダ中部、アメルスフォールトで生まれたモンドリアンは、アムステルダム国立アカデミーで絵画を学ぶ。当初は自然主義的な風景画を描いていたモンドリアンは、アムステルダムの地で印象派やハーグ派の影響を受けていく。ハーグ派とは写実主義に影響を受け、くすんだ色味を多用していた、主にオランダの都市ハーグを拠点に活動していた画家たちを指す。渡仏前のゴッホも強く影響を受けていたという。
その一方で、モンドリアンは象徴主義の画家ヤン・トーロップと1908年に出会い、また神秘思想のひとつ、神智学会に興味を抱き、1909年には神智学協会に入会。オランダの風景や、風車、砂丘などを神秘的な色合いで描くようになっていく。
しかし、1911年にピカソやブラックによって創始されたキュビスムの存在を知ったモンドリアンは、彼らの絵に感銘を受けパリへ拠点を移し制作活動を行うようになり、建物や樹木、境界などを抽象化させた独自の作風へと変化させていく。《色面の楕円コンポジション2》のようにモチーフを抽象化させ、画面の周囲を楕円形にぼやかす手法は、当時のキュビスムの画家たちが積極的に行っていたものだ。
そして、1917年には友人で建築家のテオ・ファン・ドゥースブルフたちとともにグループ「デ・ステイル」を結成。同名の雑誌において、垂直と水平の直線、三原色と無彩色の組み合わせから構成される美しさについての理論「新造形主義」を強く主張していく。この新造形主義は、後の絵画や彫刻だけでなく、建築やグラフィックデザインなどにも強く影響を及ぼしている。この理論にのっとり、モンドリアンは1920年より水平線、垂直線、三原色を組み合わせた作品を制作し、「コンポジション」シリーズとして発表。以降、生涯に渡って幾何学的な抽象画を描き続けていく。
本展では、モンドリアンの作品のほか、リートフェルトのアームチェアシリーズなど、同時期の作家たちによる関連作品なども展示。モンドリアンの理念が幅広い世界へ浸透したことも提示している。
日本国内でモンドリアンの展覧会は23年ぶり。この貴重な機会に彼の芸術をしっかりと楽しんでみよう。
取材・文:浦島茂世
【開催情報】
『モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて』
3月23日(火)~6月6日(日)、SOMPO美術館にて開催
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