社会現象を巻き起こしていた大ヒット作品『鬼滅の刃』。数々の名言が残されている本作、今回は嘴平伊之助のある名言に注目します。コロナ禍でも響く言葉とは?

多くの社会現象を巻き起こしている鬼滅の刃。数々の名言や金言が多数盛り込まれている本作ですが、中でも大勢の読者に人気のエピソードとなっているのはやはり衝撃的な展開を描いた無限列車編でしょう。

劇場版となり、一作の映画としても大きな業績を残したこのエピソード。今回ご紹介する名言は、この無限列車編の終盤で主要キャラの1人である嘴平伊之助が発したセリフです。

※なお、本記事は性質上『鬼滅の刃無限列車編の内容を含みます。
劇場版『鬼滅の刃』無限列車編 ポスタービジュアル (247797)

劇場版鬼滅の刃無限列車編 ポスタービジュアル画像

via 劇場版鬼滅の刃無限列車編 ポスタービジュアル

©吾峠呼世晴集英社アニプレックスufotable

「どんなに辛くても苦しくても、人は生きていくしかないから」

“死んだ生き物は土に還るだけなんだよ べそべそしたって戻ってきやしねぇんだよ
悔しくても泣くんじゃねえ
どんなに惨めでも恥ずかしくても 生きてかなきゃならねえんだぞ“

(『鬼滅の刃』8巻より引用)

鬼殺隊最強の隊士の1人、柱である煉獄杏寿郎を目の前で喪った炭治郎たち三人。
心強い仲間を喪った悲しみと、なにより自分達が強い敵を相手に一切太刀打ちができなかった無力感。
それに打ちひしがれる主人公炭治郎に対し、伊之助が放ったのが上記の台詞です。

鬼滅の刃』という作品は全体を通して、多くの犠牲を払ってなお、それでも進み続けなければならない辛さを描くシーンが多数登場します。
中でもこの無限列車編は、それを主人公炭治郎や私達読者が一番最初に体験させられたエピソードでもあることでしょう。
どれだけ苦しくても、辛くても、時には歩みを止めて自分も死んでしまいたいと思っても。それでも死ぬことはできないし、生き続けなければならない。

そんな思いをした経験があるのは、必ずしも作品の中の登場人物だけに限らないのではないでしょうか。

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 本予告 2020年10月16日(金)公開

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まだまだ世界中を覆うコロナ禍の中で、実はひっそりと日本の自殺率は増加傾向にあると聞きます。
鬱屈した閉鎖的な社会情勢や、自身を取り巻く様々な外的環境。その中で気持ちが追い詰められ、自死を選ぶ人が増えているそう。

当然自死を選ぶ人が増えているということは、自死を「選ぼうとしている人」が増えているということでもありますね。
つまり自死を選ぼうとしたものの結果的に選ばなかった人たちも、潜在的には非常に増えているということです。その理由にも、様々なものがあるでしょう。
死にたいほど悩んでいたことが幸運にも解決したのであれば、それは喜ぶべきことです。
ですが圧倒的に多いのはどんなに辛くても苦しくても、大事な人やものがあるから死ねないと思いとどまった人。あるいは結局死ぬ勇気が持てなくて、その選択肢を選べなかった人。

そのような、生きる選択肢しか残されていなかった人がきっと大多数なのではないでしょうか。

⇒次ページ:伊之助が発したからこそ重みがある
そのような人々にとって、生きることはそれでも辛く苦しいことの連続です。ですが死ねない以上、足掻きながら、藻掻きながらも、私たちは残された人生を生きていくしかありません。
かしこの『鬼滅の刃』には、それこそが人間の強さであり美しさである、というメッセージが徹頭徹尾描かれています。

この伊之助のセリフは、現実に生きる私たちにも共通するそのメッセージに改めて気付かされるものとして。きっと原作や劇場でも、多くのファンの涙を誘うのでしょう。

伊之助が発したからこそ重みがある

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 キャラクター別ファイナルCM(伊之助)

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また、このセリフある意味伊之助が発したからこそ、ここまで強い効力を発揮したセリフであるとも言えるでしょう。
伊之助は炭治郎を始めとするメインキャラクターたちの中でも、当初は人一倍「人間らしさ」の欠けた人物として描かれていました。

このセリフシーンはそんな彼が、初めて被り物からあふれるほどの涙を流しながら、悔しさや悲しみといった人間らしい負の感情をあらわにした箇所ともなっています。
その伊之助の涙に、思わずもらい泣きしてしまった方もきっと多いはず。
思えば伊之助は人間ではなく猪に育てられたという出自故に、初登場の際はまだ「人の死」というものへの感情が酷く鈍い少年でした。

出会ったばかりの炭治郎が鬼の犠牲となった人たちを弔っていることに対し、以下のようなセリフを発しています。

TVアニメ「鬼滅の刃」嘴平伊之助スペシャルPV

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生き物の死骸なんて埋めて何の意味がある”
(『鬼滅の刃』4巻より引用)

「死んだ生き物は土に還るだけ」という言い回しは、ある意味で初期の彼が持っていた死の概念がまだ残っていることも同時に表しています。
ですが一方で煉獄の死に対してあそこまで大きな感情を吐露した点から見るに、着実に彼の中では人間という生き物の死の概念が変わりつつあるのでしょう。

炭治郎を始めとした鬼殺隊の面々との出会いで、彼はまさに人間らしくなるための成長の真っ最中。
その過程を垣間見る事の出来る、非常に重要なターニングポイントの台詞なのではないかと思います。


(執筆:曽我美なつめ

嘴平伊之助プロフィール

嘴平伊之助 (はしびら いのすけ
CV.松岡禎丞
年齢:15歳
誕生日4月22日
身長:164cm
好きな食べ物:天ぷら

炭治郎と同期の鬼殺隊士。常に猪の頭を被る不思議な風貌で、好戦的な性格をしている。
山育ちで触覚が鋭く、視界に入っていないものでも居場所を捉えることができる。(アニメ公式サイトより引用)

『鬼滅の刃』無限列車編

劇場版鬼滅の刃無限列車編
2020年10月16日(金)公開

スタッフ
原作:吾峠呼世晴集英社週刊少年ジャンプ」連載)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸・梶山庸子・菊池美花
プロップデザイン:小山将治
コンセプトアート:衛藤功二・矢中勝・樺澤侑里
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記椎名豪
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス

キャスト
竈門炭治郎(かまど・たんじろう):花江夏樹
竈門禰豆子(かまど・ねずこ)※:鬼頭明里
我妻善逸(あがつま・ぜんいつ):下野紘
嘴平伊之助(はしびら・いのすけ):松岡禎丞
煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう):日野聡
魘夢(下弦の壱)(えんむ・かげんのいち):平川大輔

イントロダクション
2019年4月より放送を開始したアニメ鬼滅の刃』。家族を鬼に殺された少年・竈門炭治郎が、鬼になった妹の禰豆子を人間に戻すため、《鬼殺隊》へ入隊することから始まる本作は、人と鬼の切ない物語、鬼気迫る剣戟、そして時折描かれるコミカルシーンも人気を博し、国内のみならず、全世界で大きな話題となった。
そして2020年TVアニメ竈門炭治郎 立志編”に続く物語“無限列車編”が、劇場アニメーションとして描かれる。
炭治郎たちが次に向かうは、闇を往く《無限列車》。
多くの人が行方不明になっているこの列車を舞台に、新たな任務が始まる―。

ストーリー
果てなく続く
無限の夢の中へ

蝶屋敷での修業を終えた炭治郎たちは、次なる任務の地、《無限列車》に到着する。
そこでは、短期間のうちに四十人以上もの人が行方不明になっているという。
禰豆子を連れた炭治郎と善逸、伊之助の一行は、鬼殺隊最強の剣士である《柱》のひとり、炎柱の煉獄杏寿郎と合流し、闇を往く《無限列車》の中で、鬼と立ち向かうのだった。

■ 『鬼滅の刃煉獄杏寿郎宇髄天元の“死の価値観”とは。遊郭編は無限列車編との対比性に注目
https://numan.tokyo/anime/z3y87
■『呪術廻戦』ED曲は海外でも高評価。「LOST IN PARADISE」ALIはポスト米津玄師となるか?
https://numan.tokyo/anime/pQM5Q
■『うっせぇわAdoニコニコ動画世代・最後のアーティストか。“あるオタク層”に共感を呼ぶワケは
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コロナ禍でも響く『鬼滅の刃』嘴平伊之助の名言。無限列車編で変化した“死”への概念