昭和11(1936)年、性交中に愛人の男性の首を絞めて殺し、局部を切り取った『阿部定事件』。局部を切り取って持ち去るという猟奇性ばかりが注目される本事件であるが、実は阿部は局部を切り取る以外にも傷口から吹き出た血でメッセ―ジを残し、また遺体に「定」を包丁で傷を入れたことから当初は「血文字の定」と報道されていた。

 このように相手の身体に文字を刻み残すのは、かなり強い愛や憎しみがあるがゆえの行動だ。昭和23(1948)年、神奈川県のとある市で3歳の女の子が絞殺されバラバラにされたあげく、身体に文字を刻み込まれるという猟奇事件が発生した。

 殺されたのはミシン業を営むAさんの娘のB子ちゃんだ。B子ちゃんはAさん宅の物置小屋で脚や腕、臀部、わき腹などをめった切りにされ、背中には「マタコロスナマイキナオンナメ」(また殺す生意気な女め)と犯人が小刀で刻み付けたと思われる、深い傷がついていた。

 犯人はAさん、もしくはB子ちゃんに強い憎しみを持つ者の仕業と思われたが、Aさんには思い当たる節が全くなく、またB子ちゃんもまだ3歳。他人から恨みを買うような原因はなく、捜査は難航した。

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 そんななか犯人として検挙されたのは、なんと16歳の少年であった。

 この少年は幼い環境で育ったこともあり普段から盗み癖があり、この日も隣に住むAさんの自宅に盗みに入っていた。だが、その盗みの瞬間をたまたま家にいたB子ちゃんに見られてしまい「しまった!」と思い、殺すことにしたという。

 「マタコロスナマイキナオンナメ」とB子ちゃんの背中に文字を刻み込んだのは、大人の犯行に見せかけるためで、特別憎しみなどがあって刻んだわけではないという。

 その後、少年は殺人罪として逮捕され、厳しい罰を受けることになった。

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