本年度アカデミー賞にて、作品賞、監督賞、主演女優賞、脚色賞、撮影賞、撮影賞の主要6部門にノミネートされるなど圧倒的な注目を集めている公開中の映画『ノマドランド』。本作の映画音響の世界を解説した特別映像が到着した。

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本作は、アカデミー賞の前哨戦のひとつ第78回ゴールデン・グローブ賞で、<作品賞(ドラマ部門)>、<監督賞(映画部門)>の主要2部門を受賞。クロエ・ジャオは初の監督賞ノミネートにして、初受賞の快挙を果たした注目作だ。企業の破綻とともに、住居も失ったフランシスマクドーマンド演じるファーンが、キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰めこみ、〈現代のノマド=放浪の民〉として、季節労働の現場を渡り歩く旅が描かれる。

解禁となった特別映像では、サウンドデザインを務めた『パンズ・ラビリンス』(06)、『ROMA/ローマ』(18)の名匠、オスカー作品を手掛けたセルジオ・ディアスらが本作の映画音響の世界を解説している。劇伴が部分的に使用され、それ以外のパートでは録音された現場の音声でシーンを魅せていく本作において、サウンドデザインはかなり重要なポジション。セルジオに白羽の矢を立てたジャオ監督は「創造的に、実験的に音を鳴らしながら、同時にうそのない、正直な音でもありたい」と音の演出におけるこだわりを語る。ジャオ監督の想いを受けたセルジオは音響の最も重要な課題について、「本作が描く心のつながりをいかに音風景に反映させるかであった」と振り返っている。

ファーンの生活感を印象的に彩る効果音のひとつひとつ。セルジオがノマドたちの生活をリスペクトしながら音響デザインしたというその完成形は、ぜひとも劇場の良質な音響環境で楽しみたい。

文/タナカシノブ

キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰め込みノマド生活を始めるファーン(F・マクドーマンド)/[c] 2021 20th Century Studios. All rights reserved.