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credit:HistoryVille

 1726年8月、イングランドサリー州ゴダルミング出身の25歳のメアリー・トフトは流産した。ところがその後、数ヶ月にわたって、メアリーはウサギ、猫などさまざまな動物を産んだという。

 同年9月27日、隣人や義母が見つめる中、メアリーは産気づいた。通常なら出産のときは、医師や産婆がとり上げた赤ん坊の無事をチェックしてから母親に手渡すが、メアリーの腹から肝臓のない猫らしきものが産み落とされたため、義母たちはびっくりした。

【メアリーが出産したものを見て困惑する医師】

 翌日、医師のジョン・ハワードが呼ばれ、肝臓のない猫や昨夜のうちにメアリーの腹から出てきたといういくつかの肉塊を見せられた。

 当然のことながら、ハワードはすっかり困惑し、一ヶ月ほどメアリーを観察することにした。すると、メアリーはさらに、複数の猫の足、ウサギの頭、ウサギの赤ん坊9匹(すべて死んでいた)を"出産"した。

 ハワードはあまりに異常なこの状況を地元の科学者、医師に知らせ、果てはイングランド王の耳に入ることになった。

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ウサギを出産しているメアリーの絵 credit:Wellcome Collection ( CC by 4.0 )

医師団が結成され入念な調査が行われる

 メアリーのこの異様な出産は、たちまち世間に知られることになった。王が派遣した医療チームが到着したのは11月15日で、ちょうど彼らはメアリーがまた死んだウサギを出産するところを目撃するはめになった。

 今度は、医師たちは出てきた肉塊をもっと詳しく調べた。王の側近で、スイス外科医で解剖医のナサニエル・セント・アンドレは、出産は体を切開して悪化する病気を治療する医学知識の及ばない超常現象がそもそもの原因だと確信していた。彼は産み落とされたサンプルを王のもとへ持ち帰り、実物を見せたという。

 しかし、かなり大きな疑問があった。というのも、生まれたとされるウサギの何匹かは生後三ヶ月ほどまで成長しているようだった。

 王はさらに別の外科医シリアカス・アーラーズを派遣してもっと詳しく調べさせると、一匹のウサギの直腸に糞があったことが判明した。それを調べると、干し草、コーン、わらの痕跡があった。

 つまり、ウサギは食べ物がとれるほど成長してから、後で膣の中に挿入されたものではないかと思われた。メアリーの家は農家で、ウサギも育てていたのだ。

 メアリーは、畑で農作業をしているときにウサギに驚かされたせいで、こんな不思議な出産が起こったと説明した。 当時は、母親の考え方や感情が子宮の中にいる子供の外見や発達に影響を与えると考えられていた。


Mary Toft: The English Woman Who Gave Birth to Rabbits

出産を偽装していたことが明らかに

 しかしまもなく、本当はメアリーとその夫が、購入した肉塊やウサギや猫などを彼女の膣に押し込み、いかにも出産したように装ったことが明らかになった。

 11月には、メアリーはセント・アンドレが招いた大勢の調査団に監視され、彼女の主張が検証されたが、これですべてが暴露されることになった。

 その後、メアリーがさらにウサギや肉塊などを産むことはなかった。更にメアリーは死んだ動物を体内に入れたことが原因と思われる感染症のせいで倒れ、意識を失ったりしていた。

 まもなく、ある人夫が、メアリーの部屋にこっそりウサギを忍び込ませようとしているのが見つかり、メアリーの義理の姉妹に頼まれたと証言した。

 すでに相当追い込まれていたメアリーは、過酷な手術をして徹底的に調べると脅かされて、ついに自分で自分の膣に動物の体の断片を挿入していたことを白状した。


The Woman Who Gave Birth To Rabbits

 メアリーは数ヶ月刑務所に入れられたが、のちに釈放され普通の生活に戻った。

 だが、医学界の専門家ともあろうものが、人間の女性がウサギや猫を産んだなどということを鵜呑みにし、それに踊らされたと、マスコミにさんざんバカにされ、セント・アンドレの名声はすっかり失墜した。患者も来なくなり彼は貧困のまま亡くなったそうだ。

References:Mary Toft: The Woman Who Kept "Giving Birth" To Rabbits, Cats And Assorted Other Meats | IFLScience/ written by konohazuku / edited by parumo

 
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