健康のためには適度な運動がよいというのが定説だ。だが「適度」とは、どの程度を指すのだろうか。「教えて!goo」にも「朝の運動は体に悪い?」と、運動のし過ぎで注意を受けたという人からの投稿があった。せっかくはじめた習慣も、健康を害すようでは身も蓋もない。そこでヘルスケアトレーナーとして活動し、エクササイズやストレッチ方法を発信する長谷川幹さんに、正しい運動量について話を聞いた。

■激しい運動は免疫力低下にもつながる?

運動不足が身体によくないというのは理解できるが、なぜ運動のし過ぎによって不健康になってしまうのだろうか。

「ハードな運動や急な負荷は、体と心に過度なストレスを与えてしまう可能性があります。自分の体に合わない運動を行うと、関節や筋肉に過度な負担がかかり、体へのストレスになります。必要以上の筋肉痛を招いてしまうこともありますし、運が悪いと怪我をしてしまう可能性もあります。その上、一時的に免疫力が低下し、体調を崩してしまうことにも繋がります。体に合わない運動を行うと、全体的な疲労感が強くなり、日常生活の活動量が低下する可能性もあるでしょう」(長谷川さん)

心と体は密接な関係にある。ストレスを感じながら運動をすると、生活に悪影響が出ることもあるのだ。

「不慣れで自分の体に合っていない運動は、精神的な疲労感が溜まり疲れてしまいます。メンタル面の疲れで、些細な作業にもやる気が出なくなってしまったり、免疫力の低下を招いたりすることもあります。そのせいで体にも不調が出て、結局は不健康につながるということになるでしょう」(長谷川さん)

一時的とはいえ、免疫力が下がることは避けたい。


■全身に効く「バンザイスクワット

自分にとってどのくらいの運動が適切なのだろうか。適切な運動量を知る考え方として、主観的運動強度を数字で表した「ボルグスケール」というものがあるという。

ボルグスケールは、運動を行う人がどの程度の疲労感を感じるかを表す指標です。ウォーキングのような有酸素運動では、『楽である~ややきつい』と感じる程度が効果的に運動できる目安だといわれています。ボルグスケールで『楽である~ややきつい』程度の負荷は、生活習慣病の予防などの効果が得られ、安全に行うことができる運動強度とされています。息がはずむ程度の運動がこれくらいの強度にあたります」(長谷川さん)

つまり「きつい」と明確に感じるほどの運動は、やりすぎにあたる可能性があるのだ。長谷川さんに、「楽である~ややきつい」にあたる程度の負荷をかけられる運動「バンザイスクワット」を教えてもらった。

「その名の通り、バンザイするように腕を上げたまま行うスクワットです。スクワット自体は下半身を鍛える運動ですが、腕を上げて姿勢を意識して行うことで、全身の運動になります。まず足を腰幅くらいに開いてバンザイをします。そのとき手のひらを内側に向けて、少し胸を張るように背筋を伸ばすことを意識しましょう。その姿勢をキープしたままスクワットを行います。できれば太ももが床と平行になるくらいまでお尻を落とします。きつい場合は楽な位置まで腕を下ろして行うか、壁の方を向いて壁を手の指でなぞるように行うと負荷が軽くなります。この動作を10~15回繰り返し、2~3セットほど行いましょう」(長谷川さん)

その運動がどれくらい身体に負担がかかるかは、その人の年齢や抱えている持病によっても異なる。「きつい」と感じるか「楽すぎる」と感じるか、自分の体と相談し、手法を調整しながら行うことが大切ななようだ。

●専門家プロフィール:長谷川 幹
健康運動指導士、介護予防主任運動指導員。フィットネスジムや介護予防教室で活動し、SNSで情報発信も。イキイキとした生活を送ることができる方が1人でも多くなるように「カラダを変えて笑顔を増やす」を目標にしている。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)