◆大麻事件の摘発件数が過去最多となり使用罪の導入も……

 警視庁は8日、2020年の大麻事件の摘発が5000件を越え、過去最多となったと発表した。特に20代の若者の摘発事例が多く、中学生による大麻事件も8件あったという。実は大麻は大麻取締法によって所持が禁止されているのだが、使用に関しては処罰の対象とはなっていない。こうした大麻事件の増加を懸念し、使用した場合でも罪に問われる「大麻使用罪」の議論が日本国内では活発化している。だが、こうした日本の大麻事情について、海外からは失笑がもれているもいるのだ。

 今年1月からは厚生労働省で有識者会議がスタートしたが、昨年12月には国連麻薬委員会がWHOからの「大麻を『最も危険な薬物分類』から削除するべき」という勧告を承認するなど、日本における大麻の位置づけは世界の流れとは逆行しているのが現状だ。実際、アメリカニューヨーク州では、3月31日に大麻の娯楽使用が合法化され、大麻解禁となった。果たして、こうした日本政府の動きは海外ではどう見られているのか? 欧米諸国の人々に話を聞くと、疑問視する声が返ってきた。

日本人の大麻議論は思考停止?

 まずは大麻解禁の「先進国」であるアメリカからの意見。ジェイソンシェルビーさん(仮名・42歳)に話を聞くと、我々日本人にとっては過激にも思えるようなコメントが飛び出した。

日本人は大麻について話すことも、考えることもダメって思考停止してる人が多くてビックリするよね。アメリカでは州にもよるけど、基本的に合法化・非犯罪化が進んでいて、ほとんどの州では医療用として認められているし、嗜好品として認められるところも増えている。ニューヨークも解禁になったしね。うつ病にも効果があるから、毎日仕事で追い込まれて、ストレスだらけの日本人はピッタリなのに、議論が進まないどころか取り締まりが厳しくなるなんて意味不明だ」

 そう「早く『開国』するべきだ」と主張するシェルビーさん。所持はNG・使用はOKという現状のねじれについては、こう持論を展開した。

「ハッキリ言ってナンセンスだと思う。怪しい人がいたって、酔ってるのかハイになってるのかわからないだろ。僕にとっては酔っ払ってるサラリーマンのほうがよほど迷惑だと思うけど、仮にそういう人がいたら、片っぱしからしょっぴくのかい? とても現実的には思えないよ。今はコロナのせいで『密』にはなれないけど、たとえば喫煙所で誰かが吸っていて、たまたま副流煙が肺に流れ込んでしまったらどうするの? 取り締まりを厳しくするよりも、まずは危険性をしっかりと教えるべきじゃないか」

 また、「所持はダメだが、使用は処罰対象外」については、「詭弁だ」とバッサリ。日本では「ダメ、絶対!」が大前提のため、危険性をしっかりと教えることもタブー視される状況を、海外の“大麻先進国”の人たちは不思議な目で見ているようだ。

◆「ハイでまったり」はなぜダメなのか

 「ダメなものはダメ、とにかく禁止!」というスタンスには、エミール・ポンセさん(仮名・32歳)も異を唱えた。

日本人は『臭い物に蓋をする』のが好きだよね。まず、ハードドラッグマリファナ(大麻)を同じに考えることがおかしいよ。多くの国じゃ医療用として認められているのに、いい部分と悪い部分を教えないで、とにかくダメって言われることにみんな疑問を感じないの? アルコールですら、酔っ払いが駅や電車で寝ていたり、とても教育が行き届いているとは思えない。頭ごなしにダメって言うんじゃなくて、ちゃんと国民を巻き込んで議論されるべきだと思う」

 また、「議論が浅すぎる」というのも共通認識なようだ。エミリア・ニールセンさん(仮名・37歳)は、今回スタートした有識者会議にシンプルな質問を投げかける。

「『法律で決まってるからダメ』っていうなら、その法律の根拠になる部分を納得できる形で国民に示さないといけないと思う。たとえば、『売買は反社会的組織の資金源になる』とか。今の所持はダメだけど、使用は許されているって仕組みを見ても、そこがまるで考えられていないと思います。

 使用もダメっていうなら、『家でハイになってまったりする』ことがどうしていけないのか、説明してほしいです。納得のいく説明のしようがないから、多分テキトーな理由で誤魔化すんでしょうけど、それは法治国家のするべきことじゃありません」

 一般人にとって大麻使用罪はまるで縁のない話かもしれないが、海外では「根拠も議論もなしに犯罪化するのは危険」という認識が強くあるからだ。このあたりの法律に対する姿勢は、日本人外国人では大きく異なる。それ故に大麻についての議論や考え方も異なるのだろう。

 「薬物に近寄らない」というのは大事なことだが、「一切、考えない」というのは、また別な問題だ。薬物事犯よりも、議論の数が増えていくことに期待したい。

◆大麻成分の治験が日本でも始まることに……

 とは言え、遅まきながらも日本でも大麻について少しだけ“進歩”があった。4月1日厚生労働省は大麻を原料にした医薬品について現場での使用を認めるか議論が進める中で、実用化を視野に入れた治験を日本国内で行うか検討を始めたのである。製薬会社の関係者に話を聞いた。

「大麻の成分を使った薬剤は世界中で使われています。てんかん治療薬や癌などの痛みを軽減する薬などがあります。日本は大麻後進国と言われていますが、早くからその効用や市場規模に注目していた日本の製薬会社は多く、大塚製薬は大麻成分を使ったがん疼痛治療剤のアメリカ国内での開発、販売するライセンス契約を2007年にも取っています。もし、治験が解禁されたら、これまで以上に研究開発が進み、医療分野は大きく影響をうけるでしょうね」

 この関係者は最後に「治験が解禁されたからといって嗜好目的が同じ土俵で語られるのは別問題」と釘を刺した。ダメ、絶対!からは新しいものは生まれないのかもしれない。

取材・文/林 泰人

【林泰人】
ライター編集者日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

写真はイメージ