「日本通運」で働いていた非正規労働者の男性が、無期転換の「5年ルール」が成立する直前に雇止めされたのを不服として、会社側を訴えていた裁判で男性側が4月12日、東京高裁に控訴した。一審の横浜地裁川崎支部では、男性の請求が棄却されていた。

一審判決の根拠の一つは、契約書の中に「通算して5年を超えて更新することはない」という、いわゆる「不更新条項」があったことだ。裁判所は、男性が契約内容を十分に認識して契約したと判断した。

ただ、不更新条項が過度に重視されると、企業側が契約書に更新上限を明記さえすれば、無期転換から逃れられるということになりかねない。そうなれば、5年ルールそのものが意味をなさなくなってしまう。

不更新条項をめぐっては、無効とされた裁判例もあり、今後の展開が注目される。(編集部・園田昌也)

なぜ雇止めは有効とされたか

この男性は、2012年9月に派遣社員として、日通で事務の仕事を開始。2013年6月からは日通との直接契約に移行した。契約内容は、1年更新の有期雇用で、更新の上限が5年とされていた。

2013年に施行された改正労働契約法では、同じ職場に5年勤めた有期労働者が望めば、次の契約更新から無期雇用に転換できる。この仕組みは「5年ルール」とも呼ばれる。

男性は契約の更新を重ねたが、5年が経過する直前の2018年6月に雇止めとなった。

労契法では、契約が反復更新されるなど、労働者に契約更新の「期待権」が生じていると認められるときには、雇止めのハードルが高くなる。

裁判で男性は、事業所長らから「不更新条項に限らず、長く働いてもらう」旨の説明を繰り返し受けていたなどと主張したが、会社側は否定。裁判所は、証拠がなく、また事業所長には人事権がないことなどから、男性側の主張を退けた。

また、職場には5年以上働く有期労働者もおり、男性の退職後、無期転換を果たした同僚もいた。しかし、この点についても、彼らが労契法改正前から勤務しており、男性とは契約条件が異なっていることなどから、職場において不更新条項が約定通り運用されていない事情はうかがわれないとされた。

男性の契約書には一貫して、5年を上限とする旨が記載されており、裁判所は継続雇用について、合理的期待があったとは言えないと判断した。

「上限5年」はリスク

不更新条項をめぐる裁判は複数起きており、今回のように有効と判断した事例もあれば、無効としている事例もある。

たとえば、福岡地裁では2020年3月、「博報堂」の九州支社で働いていた有期雇用の女性について、不更新条項を無効として、雇止めを違法とする判決が出ている。

会社側は、契約書へのサインなどを根拠に有効性を主張したが、裁判所はサイン拒否は仕事を失うことを意味するため、サインしたからといって、ただちに明確な意思表明とはみなせないなどと判断。女性が30年近く働いていた実情などを鑑みて、雇止めを無効とした。

このように更新回数が多くなると、期待権が認められる余地が出てくる。現在では訴訟リスクなどを踏まえ、不更新条項があっても上限3年とする企業も多いようだ。

こうした流れが影響しているかは定かではないが、判決によると日本通運でも2019年から、有期雇用の更新上限を撤廃。勤続3年以上の有期労働者をエリア職の正社員に移行する制度に変更しているという。

なお、今回のケースについて裁判所は、男性が派遣社員から直接雇用にはなっているものの、直接雇用の最初から5年上限の契約書を交わしていることを重視し、期待権を否定している。

2021年度は「5年ルール見直しの年」

現行法では、不更新条項そのものは違法とされていない。今回の裁判でも、「使用者が5年を超えて労働者を雇用する意図がない場合に、当初から更新上限を定めることが直ちに違法に当たるものではない」と判示されている。

ただし、有期労働者の雇用の安定を図るために無期転換ルールが立法されたことを考えれば、少なくとも上限を長く設定した不更新条項は、その趣旨にそぐわないものと言えるだろう。

実態はともかく有期労働者の多くは、仕事が臨時であるとか、その内容が高度ではないなどの理屈で、低賃金かつ不安定な条件で雇用されている。そのような業務に5年も従事して、最終的に雇止めとなれば、労働者の市場価値、キャリアを毀損しかねないということになる。

立法当初から、かえって雇用が不安定になるケースが出てくることは懸念されていた。2021年度は、無期転換の仕組み(労契法18条)について見直しの年とされている。不更新条項のあり方やルール適用までの期間などについての議論も求められる。

非正規「無期転換5年ルール」適用を妨げる「不更新条項」は有効か 日通・雇止め訴訟を考察