南極ののワルグリーン海岸付近にあるスウェイツ氷河は「終末の氷河」と呼ばれるている。この氷河は温暖化によって徐々に解けており、もしそれが失くなってしまえば、海の水位に大きな影響を与えると考えられている。
このほどこの氷河の下にある空洞が史上初めて調査され、東から流れてくる海流の影響が過小評価されていたことが判明。その結果が『Science Advances』(4月9日付)で発表された。
「スウェイツ氷河」が「ドゥームズデイ氷河(Doomsday Glacier:終末の氷河)」などという物騒なニックネームがつけられているのは、19万2000km2と日本の本州(22万8000km2)にも匹敵するほどの巨大さだからだ。
今現在スウェイツ氷河は、まるでボトルのコルク栓のように、南極の内陸にある氷を堰き止めている。しかしそれが解けて失くなってしまえば、陸上にある氷がどんどん海に流れ込むようになる。
現時点でスウェイツ氷河が海の水位の上昇に与える影響は全体の10パーセントほどとされているが、これが失われればそれ以上の影響が出ることになる。
Why scientists are so worried about this glacier
潜水ビークルで史上初の海底調査
それほど重要な氷河でありながら、現地での調査はその端にある棚氷がほんの数度行われた程度だ。非常に遠いところにあり、また環境も厳しいことが原因だ。もちろん氷の下にある空洞などほとんど手付かずのままだった。
今回、その未確認の領域を調べるべく、スウェーデン、ヨーテボリ大学などの調査チームは「Ran」と呼ばれる潜水ビークルを分厚い氷の下に潜り込ませた。
調査は満足の行くもので、Ranは強度・水温・塩分濃度・酸素量といったデータを手際よく集めてくれた。だが、その結果は決して望ましいものではなかった。
3つの暖かい海流が流入していることが判明
調査データから3つの暖かい海流が特定されている。そして、そのうち1つは、これまでかなり過小評価されていたことが判明したという。
従来、東からの海流は、近くにある海嶺によって防がれているとされてきたが、Ranがもたらした高解像度マップ・データによればそうではなかったのだ。
それはつまりスウェイツ棚氷の下に空いている隙間に暖かい海水が流れ込み、その北部で棚氷を支えているポイントを両サイドから侵食しているということだ。これは氷全体の不安定化につながる。
滅亡の日が近づいてきているのか?
東からの海流の熱が支持点の融解をどのくらい促進しているのかは不明だ。しかし推定によれば、たった1つの海流によって運ばれてくるエネルギーだけでも、年間85ギガトン以上の氷を解かすことができるという。
それは2010年から18年にかけてスウェイツ氷河から解け出した量にも匹敵するもので、暖かい海水の流入が全体の融解パターンに影響を与えていることが示唆されている。
世界の滅亡は想像よりずっと速く近づいてきているのかもしれない。
References:First Exploration of Ocean Currents Beneath the “Doomsday Glacier” Triggers Concerns / Exploration of ocean currents beneath the 'Doomsday Glacier'/ written by hiroching / edited by parumo
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