大阪で新規感染者数が1000人を超えるなど、感染が再び拡大している新型コロナウイルス厚労省感染症対策アドバイザリーボードメンバー京都大学大学院医学研究科の西浦博教授が、今夏に予定されている東京五輪については、コロナ対策を優先し、「1年再延期」を検討するべきと「週刊文春」の取材に語った。

 西浦教授が語る。

「おおかたの国民へのワクチン接種が1年後にできているのなら、東京五輪も1年『再延期』するのが、有効な選択肢ではないでしょうか。

 延期に伴う費用と感染者増を天秤にかけた時、どちらが重いかは言うまでもありません。

 一般の生産年齢人口(15~64歳)を含めてワクチン接種を完了するのは、来年までかかると思います。来年開催でも観戦にマスクは必要でしょう。それでも国民がワクチンでプロテクトされた状態で行うのと、大きなリスクを背負いながら行うのと、どちらがいいのか。焦って今夏、やらねばならないことなのか。オープンに議論するべきです」

日本は最大の危機を迎えている

 西浦教授が、こうした提言に踏み込んだ背景には、感染力の強い変異株の猛威やワクチン接種の遅れがある。

ワクチンがあっても、接種する人手の不足が危惧されます。大阪府は当初、コロナ対応に当たる病院にもワクチン接種のために医師・看護師の派遣を要請することを検討していましたが、感染者増を受けて先送りする方針です。正直、8月末まででも、高齢者のワクチン接種を終えるのは困難でしょう」

 感染拡大に危機感を募らせる西浦教授は、最後にこう訴える。

「開幕があと3カ月に迫った状況で、日本は最大の危機を迎えています。

 五輪の『1年延期』を、選手を含め、広く議論してもらえないでしょうか。政府の英断を望みます」

 東京五輪を巡っては、世論調査でも再延期や中止を求める声が過半数を超え、今夏の開催を求める声は少数にとどまっている。コロナ対策の専門家による提言だけに、政府がどのように受けとめるのか、注目される。

 西浦教授が、現状を「最大の危機」と考えるのはなぜなのか。4月14日(水)16時配信の「週刊文春 電子版」及び4月15日(木)発売の「週刊文春」では、菅義偉首相が狙う五輪直後の9月9日解散、経費負担を巡る島根県と組織委員会の衝突、聖火リレー事業を電通が数多く受注している理由、再び起きた聖火リレーの車両事故など、東京五輪を総力特集している。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年4月22日号)

厚労省感染症対策アドバイザリーボードのメンバーの西浦博教授