(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

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 秋篠宮家の長女の眞子さまとの婚約が内定している小室圭さんが、母親とその元婚約者とのいわゆる「金銭トラブル」について説明する文書を公表したあと、相手方に「解決金」を支払って解決する意向であることが報じられた。

 なんだ、結局は金目で解決か――。そう思って、公表された文書に目を通してみた。すると、小室圭さんという人物の持つ感覚にいささか疑問を抱いた。もっと言うと、彼のアイデンティティーがどこにあるのかわからなくなる。

「金銭トラブル」は名誉の問題

 A4用紙28枚に及ぶ文書では、早い段階から解決金で和解したい意向があったことが述べられている。だが、ただ単に現金を渡すだけでは、「借金だったことにされてしまう可能性」を恐れたことが言い訳としてあった。

「借金だったことにされてしまえば、元婚約者の方のおっしゃることが正しかったということになり、私や母は借金を踏み倒そうとしていた人間だったのだということになります」

「これは、将来の私の家族までもが借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続けるということを意味します」

「一般的には金銭トラブルと呼ばれていますが、切実に名誉の問題でもありましたし、今でも、同じように受け止めています」

 そこで、相手の認識との食い違いがあるのなら、話し合いで解消した上で、解決金を支払う用意があった。だが、相手が話し合いに応じない。そうした中で、秋篠宮さまが昨年11月30日誕生日記者会見でこの問題に触れたこと、同時期に相手の元婚約者の独占取材とされる週刊誌報道があったことから、これまでの経緯を公表するに至った、としている。

裁判で争った方がむしろスッキリするのでは

 問題となっているのは、2010年の春から交際がはじまり、2012年9月に婚約が破棄されるまでの間に、母親と元婚約者との間にあった生活支援や金員のやりとりだ。婚約破棄と同時に母親は精算を申し出たが、相手は「返してもらうつもりはなかった」と応じ、これで決着していたはずだった。ところが、2013年8月に相手からの手紙が届き、負担した費用409万3000円の返済を求めてきた。しかし、相手の前言を理由に、これは貸し付けではなく「ご要望には応じかねる」と返答。それきり連絡がなく、2017年9月に眞子さまと小室さんの婚約が発表されると、いきなり借金問題として報じられた。

 続けて文書では、その後の相手方との話し合いの経緯やこちら側の認識や主張が書き連ねられている。全体的には、よく言えば丁寧に、悪く言えば長々とまわりくどい説明で、読むのも面倒くさくなる。

 そこにはいくつか「おや?」と疑問に思う箇所がある。たとえば、小室さんの母親と相手の男性との婚約期間が2年以上も続いたこと。互いに再婚で若くもなければ、金銭の支援も「家族になるのですから当然です」などと先方も言っていたのなら、さっさと家族になってしまえばよかったものを、どうして婚約のままに据え置かれたのか。もっとも、それこそ男女の仲の話なのだから、勘繰るのも野暮かもしれない。

 ただ、そんないくつかの疑問の中で、私がもっとも理解しかねるのは、この問題を訴訟で解決しようとしていないことだ。借金なのか、そうでないのか、それも白黒はっきりするはずだ。相手も無視はできない。

 いや、そればかりではない。文書の中には、報道が事実と異なるとする文言がいくつも出てくる。そもそも、この文書の目的が「金銭トラブルと言われている事柄について誤った情報を訂正していく」ことであると断言している。さらには、元婚約者の言葉に乗じた報道を辛辣に批判している。

「私や母が報道を受けて感じたのは、元婚約者の方のご真意が分からないということです」

「支援のことだけに言及したいのであれば必要ないようなエピソードとして事実でないかつ侮辱的な内容のものが見られたことで、私や母の恐怖は倍増しました」

「金銭トラブルと言われている事柄に関するものについてはもちろん、それにとどまらない内容の報道や論評をみると、これまで私や母に対する名誉棄損、侮辱、プライバシー侵害など数多くの違法行為が繰り返されていると考えています。そしてそれらは、仕方のないことだとしてすべて受け入れるには限度を超えていると思います」

「これまで元婚約者の方が私や母のプライバシーにかかわる(誤った)情報を無断で週刊誌などに公表・提供するという法律にも常識にも沿わない行動をとられてきた」

 そこまで言うのなら、名誉棄損で元婚約者と報道機関を片っ端から訴えれば済む話だ。事実と異なるとなれば、報じた側には訂正と謝罪が求められるし、加熱報道も慎重にならざるを得ない。むしろ、「元婚約者の方と対立することは極力避けたい」としつつも、こうして言及することで相手を攻撃していることにも、首を傾げたくなる。

 まして、文書の中で元婚約者が「返してもらうつもりはなかった」と発言した録音が存在していることを明かしている。そこまで証拠があるのなら、堂々と法廷に立てばいい。仮にそれで「借金」と認められても、こちらが勘違いしていました、ご免なさい、で返済すれば終わるだけのこと。国民だって多くが納得するはずだ。

ロースクール在籍中の小室さん、なぜ法廷闘争ではなく「解決金」による解決を選ぶか

 もう20年も昔のことになるが、当時の小泉純一郎首相がすすめたいわゆる「小泉改革」は、新自由主義による自由競争社会を日本に取り入れることにあった。規制を取っ払い、自己責任型の社会にする。そこで生じた問題はあとから解決する。その役割を積極的に果たすのが裁判所とされた。米国のような訴訟社会。そのためには、弁護士を増やす必要がある。そこで司法制度改革も必要とされ、裁判員制度が誕生し、日本にもロースクールができた。果たして、その目論見が実現しているかどうかは別としても、ほぼほぼZ世代に近い眞子さまや小室さんが新しい価値観を持ち合わせていてもおかしくはない。

 まして小室さんは、現在、米国のロースクールに留学中だ。いったい米国で何を学んでいるのか。

 あえて法廷闘争を避け、内々で「解決金」を支払って解決しようとする。はて?

 私のような下衆の勘ぐりからすれば、裁判になったら公になってしまう不都合な事実が隠されている、だからできない。それよりは、話し合いで相手を納得させて「解決金」で口封じをしたいのではないか。いわば日本風の手打ちだ。

 そう考えてしまう私は、皇室とは縁遠い本当の下衆なのかもしれない。だが、これだけの言い分がありながら、米国のロースクールに通って訴訟を由としない小室さんの良識が理解できない。もはやアイデンティティーもすっ飛んでいる。それで、あえて面倒くさい道を行って、世間を騒がせているのなら、迷惑な話だ。

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2017年9月に婚約を発表した際の秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さん(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)