コロナ禍で大打撃を受けている宿泊業界。とりわけ「店舗型性風俗特殊営業」に分類されるラブホテルは、GoToトラベルや持続化給付金といった各種支援・給付金の対象外だ。それゆえ、一般の宿泊施設以上に明暗が分かれている。

 そんな中、昨年の6月以降、緊急事態宣言での利用客激減からV字回復したラブホテルがある。店構えは何の変哲もない普通のラブホテル。しかし経営を支えている利用客の多くが「女性同士」だという。一体どういうことなのだろうか?

女子会需要で予約が倍に

 大阪の中心部、道頓堀から歩いて数分の場所にあるラブホ街。その一角にある『ローズリップス』のオーナー・中西葉子さんはこう語る。

「昨年の緊急事態宣言が明けてから、予約の件数がどっと増えました。そのほとんどが、『女子会プラン』もしくは『バルーンアート付きプラン』や『リムジン付きプラン』をご利用のお客様です。特に『女子会プラン』の人気がすごくて、コスプレ撮影に使われる方も多いです」

 性行為を行う場所だったラブホテルは、ここ数年でそのイメージを変えつつある。女子会コスプレイヤーの撮影で使われることが多くなったのだ。

 コスプレイヤーたちにとって、「撮影が終わった後にその場でお風呂に入ってリフレッシュでき、場所を移動せずとも打ち上げができる」という理由で、スタジオ撮影よりも人気だ。

「鶴橋と心斎橋に2店舗構えていますが、コロナ以前の心斎橋店の女子会件数は130件から200件でした。でも、一度目の緊急事態宣言が出た4月には51件にまで落ちてしまい……。どうなってしまうんだろう……と思っていると、6月には一気に134件に増え、7月はなんと192件。二度目の緊急事態宣言が出た今年の1月でも102件です。通常通り以上に件数が戻った月もあります。鶴橋店のほうも順調で、昨年の7月から今年2月までの間、毎月の予約が例年の2倍となっています」

 実は大阪エリアで「女子会プラン」を提供しているラブホは少なくない。しかしその中でも、『ローズリップス』はダントツの女性支持を得ている。

 筆者も長年趣味でコスプレをしているが、関西の女性レイヤーの間で『ローズリップス』といえば、撮影で一度は行きたい憧れのホテルとして以前から人気だった。

 女性が行きたがるホテルの秘密は、ラブホイメージを覆す「部屋」にある。

◆女性から誘いたくなるラブホテル

女の子のほうから男性に『あのホテルならいいよ、あのホテル行こうよ』って言ってもらえるホテルにしたかったんです。女の子が主役になれる、可愛いラブホテル。そこで考えたのが、コスメモチーフの部屋でした」

 紫や赤、ピンクを基調とした、いかにもインスタ映えな部屋。オーナーである中西さん自身が全部屋のコンセプトデザインを手掛けている。

百貨店の化粧品売り場などからアイデアを得て作りあげています。ヨーロッパの『時代に流されない優雅なホテル』をイメージして、女性が好むアンティーク家具や装飾品を取り揃えました」

 各部屋にはそれぞれモチーフとしたコスメがショーケースに飾られており、無料でレンタルもできる。そのため、部屋やレンタルコスメ目当てで訪れる女性客が後を絶たない。

「昔から百貨店のコスメフロアに行くのが好きで、『こんなイメージの部屋があってもいいんじゃない?』って思ったのがきっかけでした。内装も全部プロデュースして、壁紙からファブリックまで、長年お付き合いのある優秀なデザイナーさんと一緒に決めています。すべてのお部屋でコンセプトが違うので、『次はあの部屋に泊まりたい!』と、何度も足を運んでくれるお客様が多いです。『この部屋じゃないとダメだ!』って言う方もいはります(笑)

 同じ女性の目線から、女性が好きなものや、ラブホテルにあったら嬉しいものを詰め込んだという中西さん。もちろん女子会だけでなく、コロナ禍にもかかわらず男女カップルでの来店も途絶えないそうだ。

◆リムジンにバルーン。男性の「サプライズ」を応援

カップルのお客様だと、男性がサプライズに使ってくれてはります。『リムジン付きプラン』と『バルーンアートプラン』を組み合わせる方が多いですね。リムジンで大阪の観光地をぐるっとクルージングして、ホテルに戻ってきてバルーンアートのサプライズ。お誕生日や記念日のお祝いでよく利用されています」

 リムジンは90分2万円でレンタルでき、バルーンアートは5千円台から2万円台のものが用意されている。そこに宿泊もしくは休憩料金が加わるシステムだ。



 トータルすると決して安くない金額だが、予約する男性は多いという。

「男性は結構お金を使わはりますね(笑)女子会はおひとり4000円から8000円くらいになるよう設定しています。演出だけじゃなく、レンタル商品の貸し出しも好評です。コスプレ衣装やナイティ―(パジャマ)も、女の子が『これ着たい!』って思える可愛いものを揃えているんです。ラブホパジャマって、可愛くないのが多いじゃないですか(笑)男性はいろんな衣装を彼女に着てもらって楽しめて、女の子も自分では買わないようなコスプレブランドのコスメを使って楽しめる。皆さんに喜んでいただいています」

 客層は20代から50代までと幅広く、サプライズ企画を利用した男性からは、「演出してくれてありがとう」という声も。

◆「夢を売るホテルにしたい」

「安心して安全に遊べるように」と、コロナ対策を徹底して営業に臨む日々。宿泊施設の激戦区・心斎橋で生き残るため、利用者の要望には最大限の姿勢で応じ、リサーチも怠らないという。

ラブホテルは、普段なら味わえない空間を時間貸ししている。そういう考え方でやっています。夢を売るお部屋だと思って、飽きがこないようにしていますね。ラブホテルといっても元々は旅館業の宿泊施設なんですから、18禁ルールさえちゃんと守れば、お客さんにどんな使い方をしてもらってもいいと思っています。対応できることなら叶えてあげたいし、夢を見させてあげたい。これからも夢を売るホテルとして頑張っていきたいです」

 コロナ禍で旅行や娯楽が制限されている今だからこそ、ラブホテルを「非日常の空間」として楽しんでみるのもいいかもしれない。

<取材・文・撮影/倉本菜生>

【倉本菜生】
福岡県出身。フリーライター龍谷大学大学院在籍中。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレポールダンスなど、サブカルアングラ文化にも精通。Twitter@0ElectricSheep0

オーナーの中西葉子さん