富山地方鉄道の南富山駅にある構内踏切は、通路側だけでなく、線路側にも遮断機が設置されています。全国的にも珍しいこの踏切、どういった理由があるのでしょうか。

謎の遮断機の理由は諸説あり

富山地方鉄道の南富山駅は、「鉄道」と呼ばれる一般電車の不二越・上滝線と、「市内電車」と呼ばれる路面電車富山軌道線の乗り換え駅です(富山軌道線は南富山駅前)。

その南富山駅不二越・上滝線のホームと駅舎の改札口との間には構内踏切がありますが、そこには人を止める遮断機のほかに、富山軌道線の電車を止める遮断機も設置されています。電車の通過時以外は線路側が閉まっており、線路側が開くと連動して通行者側の遮断機が閉まります。なぜこのような踏切になっているのでしょうか。

富山地方鉄道の本社に問い合わせたところ、「市内電車は、日中でも車庫への入庫が頻繁に行われていることから、構内踏切を通る利用客の安全のため、電車は一旦遮断機で止まり、遮断機が上がってから発進するという形になっています」とのことです。

一方、現場の南富山駅からは別の背景も。「鉄道と市内電車は別々に運賃を支払っていただいているため、鉄道を利用する際は、駅舎内の改札を通行していただきます。しかし中には、市内電車の線路沿いに通行して、うっかり改札を通らずに構内踏切から直接電車のホームや、あるいは車庫へ入ってしまう可能性もあります。それを防ぐための遮断機という認識もありました」(南富山運転区)

実際、構内踏切の線路側には、「立入厳禁」といった貼り紙も見られます。路面電車を通せんぼする遮断機は人の通行を止めるためにもあるのかもしれません。

ちなみに、愛媛県松山市には、電車が電車を踏切待ちする光景があります。伊予鉄道大手町駅付近では、「郊外電車」と呼ばれる一般の電車と路面電車が平面交差しており、郊外電車の通過時は、路面電車は周囲の自動車などと同様に待機を行います。ただし遮断機は自動車の車線上だけで、路面電車をふさぐ位置には設置されていません。

南富山駅の構内にある踏切。線路側にも遮断機がある(乗りものニュース編集部撮影)。