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新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない大阪府は13日、新規感染者数が初めて1,000人超えを記録。東京都も火曜日で500人を超えたのは、緊急事態宣言中の2月2日以来初めてとなった。

東京都も感染拡大中ではあるが、大阪に比べるとまだ緩やかな増加傾向にある。そのため、一部ネット上では、「東京都は五輪開催のために意図的に検査数を減らしているのではないか」との憶測が飛び交っている。

実際に、12日時点での集計では、東京の検査実施件数は7日が8,014件(大阪は1万242件=以下同)、8日は8,480件(9,204件)、9日は8,857件(9,733件)、10日は4,650件(1万2,164件)、11日は1,619件(1万568件)。5日間の合計は、東京が3万1,620件、大阪は5万1,911件と、東京は大阪の約0.61倍だ。

これは、東京の検査能力が足りないわけではない。東京は昨年11月、1日の検査能力を最大で約6万8,000件確保したと発表している。検査能力は余っているのに、大阪に比べてこれほど検査数が少ない理由について、東京都福祉保健局感染症対策部の検査体制担当者に聞いてみた。

「まず、大阪と東京では検査実施件数の内訳が違うという点が一つ考えられます。今、国の要請により高齢者施設と施設従事者に定期的に検査をする“集中的検査”をしています。大阪はその“集中的検査数”を、感染疑いのある人が対象となる”行政検査”のカテゴリーに入れて公表しています。一方、東京都は、”集中的検査”を検査実施件数に含めて公表していませんので、単純に比較できません。都は“集中的検査数”を出していないので正確な件数を把握していませんが、同じ内訳で計算すれば数字は変わります。とはいえ、施設数が2,000〜3,000、月に1回の検査数を数に入れたとしても、1日の検査実施数が何千件も変わることはないでしょう。

なので、次に考えられるのが、PCRの自費検査が増えたことです。この検査数の正確な数字が上がってこないという実情があります。感染症法の改正により、ようやく自費検査だけを行なっている機関は、実施件数と陽性者数の報告が義務になりました。しかし、クリニックなどで自費のPCR検査をしている場合、陽性の場合は保健所に“発生届”が出されますが、検査数の報告義務はありません。巷での検査が増えたことで、現行の法律では残念ながら検査数を100%は把握できていません」

“カウントしていない分の検査数と、捕らえきれていない自費検査数を合わせれば、検査実施数は上方修正される”という都の見解に一定の理解はできるが、辻褄の合わない部分もある。

「そもそも検査能力が6万8,000件と十分な状況なので、発熱や呼吸器症状があったり、濃厚接触者に該当して確定診断が必要な人は、医療機関で保険適応の”行政検査”を受けるはずです。一方の自費検査の場合は、出張申請や帰省のためなど、原則無症状の人が社会的な必要性によって受けます。なので、『本来なら行政検査が必要な人が、民間の検査に流れているから、発表される検査数が少ない』という理屈は実態を反映しているとは思えません。

むしろ、大阪と東京では緊急事態宣言解除のタイミングに3週間のタイムラグがあるので、その差は大きいでしょう。また、大阪では感染力の高いイギリス型の変異株が流行の主流との指摘もあるので、現時点で大阪の方が感染者数が多いことは不思議ではありません。単純に“行政検査”を受ける必要のある人が、大阪の方が多いという可能性が考えられます。

もう一つは、保健所や医師が“行政検査”を受ける必要があると判断する基準が大阪より東京の方がゆるい可能性です。都内ではいまだに、『同じフロアで同僚が感染しても濃厚接触者ゼロと保健所が判断した』、『39度近い発熱があっても医師から検査を進められなかった』などの話はよく聞きます。単純に大阪の方が検査を必要としている可能性と、東京では現場レベルで検査を受けるハードルが高い可能性、このどちらか、または両方が東京の検査数が少ない理由ではないでしょうか」(全国紙記者)

実際、東京都は1月、感染者数の急増により保健所の業務が逼迫したことから、感染経路や濃厚接触者を追跡して調べる“積極的疫学調査”を縮小した。これを理由に「検査数が減ったのでは」との指摘は兼ねてからされていた。しかし、新規感染者が減少したことにより、東京都2月26日、再び追跡調査を拡大するよう各保健所に通知している。現状はどのようになっているのだろう。

「保健所の判断で、濃厚接触者の基準の見直しなどがどのようになっているか、それぞれの保健所の実態はわかりません。しかし、東京都の方で検査数を意図的に絞り込んでいるということはありません」(前出の担当者)

検査数が比較的少ない理由はわかったが、こんな“陰謀論”が飛び出すのは、それほど政府や行政への不信感が強いということかーー。