森を散策していて誰かの視線を感じたことはないだろうか?しかも振り向いても誰もいない。しかたなく歩いて行くけど不安な気持ちはなかなか去ってくれない。何かに見られていると思った途端、全力疾走で走り抜けたくなるあの不気味さは、もしかしたらこの植物のしわざなのかもしれない。
人形の眼球みたいな実のなるこの植物は、その見た目の通り「ドールズ・アイ」という呼び名を持つ。たくさんの目でギョロギョロとこちらを見ているようだ。
この植物は"目玉が飛び出る"という表現に全く新しい意味をもたらすかもしれない。枝にたわわに実った目玉の実は、まるで残忍な殺人鬼が獲物からくりぬいた目玉を串刺しにして、夕食の下ごしらえをしているようだ。
この植物の呼び名はあくまで"人形の目玉"なわけで"人間の"目玉ではない。それでも人形恐怖症の人にとっては恐ろしい名前かもしれない。
この人形の目玉の正体は、ホワイト・ベインベリー (キンポウゲ科シロミノルイヨウショウマ) という名の植物である。
北米の東部原産で60cmほどの高さになる。夏季に実が熟してこのような気持ちの悪い姿になる以外、この植物自体の生活環に特に目立った点はないらしい。
この小さな果実は初霜が降りるまで長い間ずっとこの形状のまま枝に保たれてるので"人形の目玉"という名前がついた。
この目玉は猛毒
この黒い点 (瞳孔というべきか?) は春に咲いたこの花の雌しべ (柱頭) の残りだ。でもこの実に黒い点がなかったら、森の怪しい果実の味に興味を持つ人が、うっかり食べようとしてしまうかもしれない。もしこの目玉を食べようとしたら大変なことになる。たとえ少量でも口にすると、この植物が持つ強い毒が、体内を素早く回り、すぐに心臓発作を引き起こすという。しかし、鳥にとっては無害なので、森のあちこちにその種が撒かれることになる。
経験を積んだ薬用植物の専門家ならば、この植物から痛みの緩和や、気管支の病気に有効な薬を作り出すことができる。だが、素人がうっかりそのまま食べると、心機能が低下して心臓が止まってしまうほどの猛毒を持っているのだ。
こうやって写真を見る分には幾分マイルドだが、実際に森の中に行ってこの植物の実にばったり出会ったらびっくりすること請け合いだ。
まるで"目玉"がこっちの動きを追ってきて静かに監視してるように感じるかもしれないが気にしないほうがいい。そしてレクター博士のマネをしたくなっても、その白い目玉を食べてしまうのはやめておこう。カニバリズムの雰囲気を味わうどころか、本当にショックで目玉を見開いたまま倒れる生贄役になってしまう。
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