17日に行われるFAカップ準決勝では、チェルシーマンチェスター・Cが『ウェンブリー・スタジアム』で激突する。

 過去4シーズンで3度も決勝の舞台に立っているチェルシーと、2シーズン前の覇者であるマンチェスター・Cは、ファイナル進出をかけた大一番でどのような戦いを繰り広げるのだろうか。注目のビッグマッチを前に、知っておきたい8つのトピックを紹介する。

◆■イングランドで最も好調な2チーム

 チェルシーマンチェスター・Cは今、最も勢いのあるチームだろう。プレミアリーグでは、マンチェスター・Cが首位を独走して優勝は秒読み段階に。チェルシーは今年1月にトーマス・トゥヘル監督が就任して以降、12試合でわずか1敗と好成績を収め、一時は諦めかけていたトップ4入りが見えてきた。またチャンピオンズリーグ(CL)では、揃ってベスト4入りを達成。シーズン終盤に差し掛かった今、目立った負傷者もおらず、ベストメンバーで『ウェンブリー・スタジアム』に乗り込むことができる。

◆■FA杯準決勝の常連同士

 両チームはFAカップ準決勝の常連だ。共に同舞台での戦いを得意としており、チェルシーは最近8回の準決勝のうち7回で決勝への切符を手に入れている。唯一敗退したのは2013年大会で、相手はマンチェスター・Cだった。マンチェスター・Cの方は、準決勝に勝ち上がった最近11回のうち9回でファイナル進出。敗退した2大会は2017年と2020年と、いずれもジョゼップ・グアルディオラ政権下での出来事だが、昨季のリベンジを狙うべく選手たちは燃えているはずだ。至高の戦いになるのは間違いない。

◆■FA杯で通算7度目の対戦

 公式戦で164度も対戦してきた両チームだが、FAカップでの対戦数は少ない。1871年に創設された世界最古のカップ戦において、両者が対戦したのは6度だけ。マンチェスター・Cが4勝2敗と勝ち越している。チェルシーは、初対戦となった1914-15シーズンの3回戦2015-16シーズンの5回戦でぶつかった直近の対戦で勝利を挙げた。106年前は1点差での勝利だったが、5年前はジエゴ・コスタの先制点を皮切りに、ウィリアン、ガリー・ケーヒル、エデン・アザール、ベルトラン・トラオレがゴールを重ねて5-1の大勝を収めている。なお当時の試合で、マンチェスター・Cのゴールを守っていたのは、現在チェルシーに所属するGKウィリー・カバジェロだった。

◆■今大会ここまでの歩み

 両チームともに3回戦から5回戦までは下部リーグのチームを相手に勝利を収め、準々決勝でプレミア勢のライバルを2-0で破って、準決勝進出を決めた。ファイナルまであと一歩と迫る両者だが、チェルシーはルートン(2部)との4回戦が行われた翌日にフランク・ランパード前監督を解任。クラブに激震が走った。対するマンチェスター・Cも、4回戦であわやというの場面に遭遇している。4部のチェルトナム相手に先制を許すと、残り10分まで「0-1」とリードを許す展開。温存していた主力組を投入してから一気に3ゴールを奪って逆転勝利を収めたが、早期敗退の可能性もあった。

◆■4冠の可能性が残るシティ

 マンチェスター・Cイングランド史上初となる4冠の可能性を残している。2シーズン前にはプレミアリーグカラバオ・カップ、FA杯の国内3冠を達成したが、2016年のグアルディオラ監督就任以降、CLベスト8の壁を一度も乗り越えらずにいた。しかし同体制5年目を迎え、機は熟したようだ。プレミアリーグでは、2位マンチェスター・Uに11ポイント差をつけて優勝は確定的。カラバオ・カップは、25日に行われるトッテナムとの決勝を残すのみだ。そして前述のとおり、CLではベスト4進出を達成。ベスト8の壁を乗り越えた。歴史的快挙達成に向けて、この準決勝に挑む。

◆■ペップはトゥヘルに負けなし

 この試合では、グアルディオラ監督とトゥヘル監督による名将対決が実現する。両者にとっては、イングランドでの初対戦。ドイツ時代には、バイエルンを率いていたグアルディオラ監督が、マインツドルトムント指揮官として戦ったトゥヘル監督を相手に3勝2分(※PK勝ちは引き分けにカウント)と負けなしだったが、チェルシーは好調をキープしており好勝負が期待できそうだ。マンチェスター・Cチェルシーはプレミアでの対戦も残しており、互いに勝ち上がればCLの決勝でも激突する可能性がある。マンチェスター・Cのクアドルプル(4冠)の行方を左右するチームはチェルシーかもしれない。

◆■変貌を遂げたギュンドアンに注目

 チェルシーでは、タミー・アブラハムが今大会最多タイとなる4ゴールをマーク。この試合でも得点が期待されるが、彼以上に注目したいのがマンチェスター・Cイルカイ・ギュンドアンだ。グアルディオラ監督と同じ2016年に加入した同選手は、同じ建物内に住んでいる指揮官から絶大な信頼を得ており、長期離脱した1年目を除けば毎シーズン50試合近くに出場している。さらに今季は“点取り屋”としての才能を開花させ、ここまでチーム最多の16ゴールをマークしている。前所属のドルトムントでは、トゥヘル監督のもとでプレー。恩師とはこれが移籍後初対戦となり、バージョンアップした姿をこの試合でも披露したいところだ。

◆■予想オッズは?

 日本時間16日15時現在、英国大手ブックメーカーの『ウィリアム・ヒル』はチェルシーの決勝進出に「3倍」、マンチェスター・Cの決勝進出に「1.36倍」のオッズを付けている。試合間隔はチェルシーの方が1日多いが、マンチェスター・Cは『ウェンブリー・スタジアム』でのチェルシー戦に負けなし(3戦して無敗)。チームとしての成熟度でも上回っていると言えるだろう。だが勢いは五分五分で、一発勝負となれば、何が起こるか分からない。互いをよく知る指揮官同士の対決にもなり、試合終了のホイッスルが鳴るまでハイレベルな駆け引きが繰り広げられるはずだ。イングランド、そして世界最高峰のバトルを見逃す手はない。

(記事/Footmedia)

チェルシーとマンチェスター・Cが対戦する [写真]=Getty Images