大きな川をまたぐ橋は交通上のボトルネックになることがありますが、東京圏でとりわけ激しい渋滞が慢性的に発生しているのが、埼玉県三郷市千葉県流山市を結ぶ流山橋です。建設が進む新しい橋によって解消となるのでしょうか。

400mの橋を渡るのに1時間以上!?

川をまたぐ区間はルートが限られるため、橋のある道路にクルマが集中して渋滞が発生することがあります。東京圏でとりわけ激しい渋滞が慢性的に発生している区間のひとつに、江戸川を跨いで埼玉県三郷市千葉県流山市を結ぶ県道の「流山橋」が挙げられます。

JR武蔵野線三郷駅付近と、流山市街地に通じる流山橋は、流山市にとって江戸川を渡る唯一の一般道の橋(このほかに常磐道の橋がある)です。時間帯によっては、400mの橋を渡るのに1時間以上かかるともいわれます。2021年2月の土曜の昼前に三郷側の周辺を走行したところ、橋が工事で車線規制されていたこともあってか、橋に通じる県道は“ほとんど動かない渋滞”が長く続いていました。

一般道でこの橋を回避しようとすると、南の上葛飾橋(三郷市松戸市)まで約6km、もしくは北の玉葉橋(吉川市野田市)まで約9km、迂回を余儀なくされます。そのような状況を改善するため、2021年現在、流山橋の約2.5km北側に、新たな橋「三郷流山橋」(仮称)が建設中です。

三郷流山橋は2022年度の開通予定で、埼玉県道路公社の有料道路として建設されています。有料道路としての長さは2km、通行料金は普通車で200円、軽自動車で100円となる見込みです。

三郷流山橋の開通で、流山橋の渋滞は解消されるのでしょうか。

そもそも江戸川の橋、なぜ少ない?

埼玉県の県土整備部によると、三郷流山橋の想定通行量は1日あたり1万2700台。橋の周辺の交通に加え、江戸川の下流から順に上葛飾橋、流山橋、玉葉橋、さらに北の野田橋(松伏町野田市)から、1日あたり合計で1万1000台の利用転換が見込まれているとのこと。流山橋はもちろん、より広域的に、江戸川に架かる橋で発生している混雑緩和に役立つといいます。

「通行料金をいただくことになりますが、そのぶん、早期に建設できます」。埼玉県の担当者はこう話します。事業期間が2018年度から2022年度までの4年間というのは、事業規模を鑑みると、有料道路事業ならではの早さではないかということでした。

なお今回、埼玉県の事業になったのは、「埼玉県の番だから」とのこと。というのも江戸川に架かる埼玉・千葉県境の橋は、両県がほぼ順番に架けてきたのだそうです。

そもそも江戸川は、多摩川などと比べても橋の数が少ないといわれます。これについて埼玉県の担当者に聞いたところ、「単に橋を架ければよいというわけではなく、両岸の周辺道路の状況が影響する」と話します。

三郷市流山市の場合は、近年、三郷市側で大型商業施設などが集積し、流山側も2005(平成17)年のつくばエクスプレス開通以降、住宅地として発展するなかで、急激な交通量の増加に周辺道路の整備が追い付いていなかった状況があるといいます。三郷流山橋だけでなく、周辺では複数の道路プロジェクトが動いているということです。

ちなみに、流山橋の渋滞を回避する手段としては、常磐道を三郷料金所スマートICと流山ICの1区間だけ利用するという方法もあります。ただし、三郷市街と流山市街は橋の区間以外もしばしば渋滞します。

中央が流山橋。その下はJR武蔵野線。左が三郷市、右が流山市(画像:国土地理院)。