京急の新しい1000形電車(1890番台)には、高さは通常ながら、幅が10cmぐらいと妙に細長い窓があります。窓はメンテナンスの手間になることなどから、省略の傾向もあるなか、なぜあえて「激狭窓」が設けられたのでしょうか。
手間の要因になりうる電車の窓
京急が2021年4月15日(木)、一般的な列車に加え、座席指定列車やイベント列車でも使えるという新しいコンセプトで製造した1000形電車(1890番台)を、報道陣へ公開しました。
この新しい1000形電車には、妙に細長い「激狭窓」があります。高さはほかの窓と同様ですが、横幅が10cmぐらいしかありません。
電車の窓は、車両メンテナンスの工数が増えたり、車体が劣化しやすくなったりする要因になります。そのため電車の窓は、設置を省略できるものなら省略する方向性もあるのですが、なぜそうしたなか、あえて「激狭窓」が設けられたのでしょうか。
理由は、この新しい1000形電車で復活した「京急名物」にありました。
より楽しいほうがいいでしょう
京急の電車には、運転席の直後に進行方向を向いた座席が設置され、前面展望が楽しめる車両がいくつか存在。最高速度120km/hで京浜間をダイナミックに走り抜ける様子を堪能可能なその「前面展望席」は、京急名物のひとつです。
しかし、2007(平成19)年以降に製造された京急の電車では、この前面展望席が廃止になってしまいます。
今回お披露目された新しい1000形電車では、その前面展望席が復活することになりました。
ただ車両の構造上、前面展望席のすぐ横に大きな窓を設けることが困難。しかし座席の横すべてが壁だと乗客が圧迫感を覚えることから、小さくても窓を設置することにしたそうです。
言い換えれば、車両メンテナンス的には無いほうが手間を要しないこの「激狭窓」は、前面展望席を、京急電車をより乗客に楽しんでもらえるよう設置された、とできるでしょうか。
ちなみに、この車両の前面展望席に座っても、「激狭窓」の外側はよく見えません。座席の横ではなく、左斜め前に窓があるためです(不自然に身を乗り出せば、見えなくはないですが)。
しかし、この「激狭窓」が存在すること、そこから外光が入ってくることで、閉塞感が緩和されていることは実感できました。逆に、明かり取りの不自然に小さな窓だからこそ、ちょっとした違いでも変わるんだな、ということが実感できました。
この新しい1000形電車は、2021年5月6日(木)から「モーニング・ウィング3号」などで営業運転を開始する予定です。
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