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英国では純EV向け補助金の対象外に

text:Tom Morgan(トム・モーガン
translationKenji Nakajima(中嶋健治)

 
英国政府は電気自動車に付与される補助金の対象を、3万5000ポンド(525万円)以下のクルマへ限定した。多くの自動車メーカーに向かい風となっているが、ヒュンダイへの影響も小さくない。

【画像】ヒュンダイ・コナ・エレクトリック 欧州で競合する純EVクロスオーバー 全127枚

エントリーグレードのコナ・エレクトリックは補助金対象のままだが、航続距離の長いグレードは対象から外れてしまった。その結果、ユーザーが支払う金額には大きな差が生まれている。

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ヒュンダイ・コナ・エレクトリック・アルティメット 64kWh(英国仕様)

64kWhのバッテリーを積むアルティメットの英国価格は、4万375ポンド(605万円)。フォード・マスタングマッハEやフォルクスワーゲンID.4など、競争の激しい価格帯に含まれる。

この時期のフェイスリフトは、良いタイミングだといえるだろう。安全運転支援システムなど車載技術がアップグレードされたと同時に、見た目もドラマチックに一新した。

リフレッシュ前でもコナ・エレクトリックの見た目は、内燃エンジンを積んだコナと見間違えられることはなかった。フェイスリフトではテスラ・モデル3のような滑らかなフロントノーズを獲得し、一層の差別化が図られている。

ヘッドライトとLEDのデイライトのデザインも新しくなっている。こちらは、通常のコナと共通なようだ。

駆動用のAC同期モーターに変更はない。203psと40.1kg-mを発生し、シングルスピードのリダクションギアを介して前輪を駆動する。バッテリー容量は64kWhあり、航続距離は最大482km。DC急速充電器は、100kWの容量にまで対応する。

ホットハッチに並ぶ鋭い加速力

コナのボディサイズは4205mmと、現在の純EVクロスオーバーとしては小さい方。車内空間は必要十分といったところで、荷室も広いわけではない。

インテリアを眺めると、硬質なプラスティック製部品があちこちに見られる。とはいえ、メーターパネルもモニター式となり、センターモニターは10.25インチへ大型化。最新のライバルへハイテク感では歩調を合わせている。

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ヒュンダイ・コナ・エレクトリック・アルティメット 64kWh(英国仕様)

インフォテインメント・システムのインターフェイスは、従来より鮮明になり扱いやすい。アップル・カープレイとアンドロイド・オートにも対応するが、独自のシステムでも不便は感じないと思う。

試乗したコナ・エレクトリックは、最上級トリムグレードのアルティメット。サンルーフにヘッドアップ・ディスプレイ、レザー張りのパワーシートなどが付いてくる。シートヒーターは、後席にも内蔵される。

2018年の発表当時、車内空間は薄暗くて面白みに欠けると感じた。でもサンルーフがあるおかげで、ずっと明るさが増している。

観察はこのくらいにしておこう。運転して驚かされるのが、クロスオーバーとしては鋭い加速力。高速道路の速度域まで、ホットハッチに並ぶ勢いでスピードを乗せていく。

アクセルペダルを不用意に踏み込むと、発進時にフロントタイヤがホイールスピンしてしまう。フェイスリフト前より穏やかになった様子だが。

ステアリングホイールに付いたパドルで強さを変えられる回生ブレーキは、筆者が経験した純EVの中では最高の水準。素早く3段階から切り替えられる。惰性走行も可能だ。

乗り心地や操縦性での訴求力は小さい

コナ・エレクトリックの加減速感は一貫性が高く、予想した距離の通りにクルマが進んでくれる。速度の維持も簡単で、例えばDS3クロスバック Eテンスなどより運転は安楽。航続距離を伸ばす上でも有利だ。

内燃エンジンを載せたクルマから乗り換えるドライバーにとっても、違和感は感じにくいだろう。

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ヒュンダイ・コナ・エレクトリック・アルティメット 64kWh(英国仕様)

反面、操縦性は強みではない。ステアリングホイールに伝わる感覚はほぼなく、フロントタイヤのグリップ力も限定的。トラクションやスタビリティ・コントロールのお世話になることも少なくない。

プラットフォームを共有するキアeニロは落ち着いたファミリーSUVに当たるから、さほど問題には感じられない。一方のコナ・エレクトリックはもっと若々しい。それでいてコーナーリング時の喜びは、ほぼない。

サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式で、リアがマルチリンク式。乗り心地は、市街地では十分納得できる範囲ながら、郊外の流れの速い区間では落ち着きを失いがち。高速域では、風切り音も小さくはないようだ。

後輪駆動マスタングマッハEの方が、ドライバーへの訴求力では上。ファミリーでの利用を考えるなら、価格で並ぶキアeニロの方がより適してはいる。

しかし、英国政府からの3000ポンド(45万円)の支援がなくなっても、コナ・エレクトリックの魅力が完全に損なわれたとはいえない。482kmの航続距離は高く評価できるし、技術面のアップデートで新鮮味も保てていると思う。

ヒュンダイ・コナ・エレクトリック・アルティメット 64kWh(英国仕様)のスペック

英国価格:4万375ポンド(605万円)
全長:4205mm
全幅:1800mm
全高:1565mm
最高速度:167km/h
0-100km/h加速:7.9秒
航続距離:482km
CO2排出量:−
車両重量:1743kg
パワートレイン:AC同期モーター
バッテリー:64kWhリチウムイオン
最高出力:203ps
最大トルク:40.1kg-m
ギアボックス:シングルスピード


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