コロナによって経済的に追い詰められる人々の増加が止まらない。そんな人たちを食い物にする悪徳業者も活発化し、無法がまかり通っている。悪質かつ狡猾な彼らの手口とは?

◆闇金業者がSNSに移行。個人間融資の建前と本音

 昨今、SNS掲示板サイトで「個人間融資」と称する新型闇金が猛威を振るっている。

 その大きな要因となっているのが、新型コロナウイルスの影響で雇用が悪化し、経済的苦境に陥る人が増加したことだ。総務省統計局が発表した’21年2月の労働力調査によれば、完全失業者数は194万人にも上り、13か月連続で増加。悪化の一途を辿っている。さらに、救済措置となる国の休業支援金や給付金がなかなか支払われないという問題も横たわる。

SNS上に跋扈する個人間融資業者はすべて、法外な利息を貪る闇金業者です」

 こう断言するのは、詐欺事件に詳しい弁護士の嵩原安三郎氏だ。

「借りられるお金は少額なことがほとんどで、多くても20万円ほど。利息は『5万円融資するので翌月に6万円返済してください』くらいが多く、藁をも掴みたい借り主は『それくらいなら』と安心してしまいがちです。

 しかし、利息制限法では10万円未満だと年20%、10万円以上100万円未満だと年18%と上限が定められており、5万円借りた場合の利息は月800円程度。月1万円は相当な暴利と言えます。

 そもそも“個人間”と謳っていますが、恒常的に行っていればもう商売です。安心を得るためか『個人間融資歴○○年』などと書いてあるアカウントも多いですが、単に『貸金業者登録をしていない違法な業者です』と宣言しているようなもの。個人間融資は、背に腹は代えられない人の足元を見た悪質な詐欺なのです」

◆闇金業者に個人情報が悪用されるリスク

 さらに、金銭面とは別のトラブルに発展する可能性もある点が見逃せない。

「お金を借りる際に必ず身分証の提示を求められますが、個人情報を犯罪に用いる携帯電話や口座の開設に使われるリスクがあります。

 中には、個人情報を使って知らぬ間に不法入国者と結婚させられていることさえあった。不法入国者は結婚すれば定住権を得ることができるため、そうしたビジネスにも利用されかねません。

 犯罪に加担させられるのも大問題ですが、最悪なのが薬物系です。『ビタミン剤だから』などとそそのかされ、断ることもできないまま常習化させられてしまう。そうなったら終わりですね。あとは、永遠に薬物を売りつけられてカネを生み出すマシンにされる」

◆性とカネを引き換え…貧困女性が食いものに

 個人間融資の闇は調べれば調べるほど深い。

「男性が女性にお金を低金利で貸す代わりに肉体関係を迫る『ひととき融資』が増えています」と語るのは、闇金事情に詳しいジャーナリストの奥窪優木氏だ。

「昔から性と引き換えにお金を融通することは闇金界隈ではよくあることでした。それが近年、闇金業者への規制が強まったことで、業者は主戦場をSNSに移した。結果、普通に生活していたら辿り着くことのなかった女子大生や専業主婦が毒牙にかかっています」

 そのやり口は、卑劣極まりない。

「貸す側は最初から『無利子でもいいが、1か月後に返せなかったら肉体関係を』という約束をします。女性側も困っているので、お金に目がくらんで安易に承認してしまう。ただ、もともと借金をつくってしまうほど追いこまれているので、かなりの割合で返せない。そうしたら、『利息を上乗せする』などと脅して関係を持ちます。

 さらに悪質な貸主は、自分の口座に相手が貸してほしい額のお金を入れて引き出させます。当然、ATMの監視カメラには女性が映っているので、『持ち逃げしたら警察に通報する』と脅迫するのです。一度肉体関係を持ってしまえば、今度は『写真を晒す』と脅す。こうなると女性はどうすることもできません」

◆性被害に遭ってしまったときの対処法とは

 そうした背景もあってか、ひととき融資の普及率に比べると逮捕者は極端に少ないという。

「’19年6月に逮捕された人物は、法外な金利を設定していたことが罪に問われ、買春はあとからわかった。それほど被害女性は口外しないようなのです。弁護士によっても意見が分かれますが、私が取材した限りお互いが合意していれば罪には問われないという考え方もあるようです。最近は、パパ活サイトでやってる人も多いみたいなので、被害に遭ったら必ず声を上げることですね」

 前出の嵩原氏も、実際に女性の相談に当たったというが……。

「融資の担保として裸の写真を送れと言われたという相談だったのですが、驚くことに、『この貸主は誠実な人なのに、私が無理を言ったせいでこんなことを言わせてしまった』と思い込んでいた。これは“正常性バイアス”といって、自分では間違ったことをしている認識があるのに、自分の行動を正当化したいという心理が働いていたのです。もはや洗脳に近い」

 では、実際に被害に遭ってしまったらどう対処すればよいのか。

「とにかく消費者センターや法テラスで相談することです。違法な金利は無効なので、十分返済しているケースがほとんど。報復が怖いという人もいますが、過度な追及は絶対にありません。相談には必ずやりとりのスクショと返済記録を持って行ってください。見たくないという心理からか、振り込んだ明細を捨てる人も多いので」

 SNSに潜む闇金業者は、困窮者の隙を熟知している。こちらも知識で武装するよりほかない。

Twitterで顔写真&免許証が……渡した個人情報の末路

 名前や住所、生年月日に顔写真――本来映っていてはいけないはずの個人情報が、SNS上で公然と晒されている。これは一体何が起こっているのか。前出の嵩原氏は言う。

「これは『晒し』と呼ばれる見せしめ行為です。正直なところ、今すぐにでも5万円欲しい人が、翌月に6万円が返せるとは到底思えません。基本的にやりとりはSNS上でしか行わないため、ジャンプ(支払いをせず飛ぶこと)する債務者は非常に多いはずです。

 貸主は飛ばれることだけは避けたいので、晒された本人に対してもそうですが、他の債務者への脅しという側面もあって、こうした非人道的な行為をしていると考えられます。さらに、返済を促すだけでなく、こうして脅かしておくことで返済以外の要求ものませやすくしているのでしょう」

◆一瞬の過ちがまねく、性被害のスパイラル

 このような圧力に屈して闇金業者のなすがままにされてしまうーーそんな心理状態に陥るのは、想像に難くない。本文でも触れたとおり、それは肉体関係の強要という形をとる場合もある。

 取材を通して知り合った20代前半の女性は、週刊SPA!記者に力なくこう語った。

バイトの出勤を減らされてお金に困り、つい魔が差しました。携帯が止まり、家賃の滞納が続くと視野がどんどん狭くなって……身分証を渡すのがどれくらい危ないかなんてわからなくなるんです。女性と伝えるとすぐにお金が手に入りました。でも、すぐに尽きて返せなくなると、わいせつな写真の要求から始まり、気に入られれば会って体の関係を持たされる。周りに相談もできない。こんなことになるなんて思ってもいませんでした……」

 一瞬の過ちで生活はほころび、一生消えないデータネットに残る恐怖。この構造の闇はあまりに深い。

弁護士・嵩原安三郎氏】
’70年生まれ。京都大学卒。フォーゲル綜合法律事務所代表。退職代行などを数多く手がける。

ジャーナリスト・奥窪優木氏】
’80年生まれ。上智大学経済学部卒。週刊誌や月刊誌などへの寄稿を中心に活動。近著に『ルポ 新型コロナ詐欺』(扶桑社刊)

<取材・文/片波 誠 桜井カズキ 仲田舞衣 図版/ミューズグラフィック

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