セクシー女優を起用した恋愛ドラマをYouTubeで一般公開し、10代〜20代の男女に向けて正解のない恋愛模様を突きつける。

【令和時代の恋愛、セクシー女優が体当たりで表現 ドラマ『私の好きって変ですか?』潜入レポの画像・動画をすべて見る】

第1話では三上悠亜さん、第2話には八木奈々さんが主人公に、さまざまなメディアで恋愛コラムを執筆するコラムニスト・妹尾ユウカさんを脚本に迎え、「寝取り」や「メンヘラ」といった一筋縄ではいかない女性たちの生き様と心情を描くドラマ『私の好きって変ですか?』。

タイトル・キャストに加え、YouTubeなのに過激になりそうな内容と、気になることが多すぎる。いてもたってもいられなくなったKAI-YOU編集部は、制作現場への潜入取材を敢行。

キャストや脚本家へのインタビューを交えながら、セクシー女優がどのように役と向き合っているのか、そしていったい現場では何が起こっていたのかをレポートしたい。

取材・文:ミクニシオリ 編集:恩田雄多 撮影:宇佐美

ドロッ……ドロのドラマ『わたすき』金夜に見たら死んだ




取材に向けて、まずは第1話を見てみることに。『私の好きって変ですか?』(通称・わたすき)は、1話完結型でさまざまな恋愛が描かれていくドラマ。感想を一言で表すなら……とにかくエモい

なのだが、正直、一言で表し難い複雑な感情を抱かせるその内容に共感してしまう。



フィルムカメラで撮られたかのような、低コントラストでレトロな映像が目に馴染む。多様な恋愛をテーマにしながら、登場人物の心情描写も繊細で、思わずどこか共感してしまうところがある。

奇しくも金曜の夜に見てしまったため、謎にメンタルが死んだ。しかし、共感性の高いヒューマンドラマでメンタルが死ぬことに、どこか充実感を覚えてしまうのは私だけだろうか。SNSで「これやばい、メンタル死んだ」ってシェアしたくなる感じだ。



第1話の主演は女性人気も強いセクシー女優・三上悠亜さんだ。登場人物は毎回変わり、主演のセクシー女優たちは普段の撮影とは雰囲気をガラリと変え、複雑な恋愛模様に身を投じる1人の女性としての姿を見せる。

色恋の先にある性愛を演じるプロであるセクシー女優たちは通常、いくつものシチュエーションでの性交を演じているわけだが、実は身体ひとつ、表情ひとつでさまざまな想いを表現している。そんな彼女たちが、恋愛をいかに表現するのか?──ファンならずとも確認しておきたいポイントだ。

張り詰めたドラマ撮影現場にそ〜っとイン



取材当日、都内のおしゃれなバーに集合した取材陣。バラエティやドラマでもよく使われている撮影現場で、メンズ地下アイドルとインフルエンサーの恋愛が赤裸々に繰り広げられていた。

この日撮影が行われていたのは第2話。事前に台本を確認すると、メンズ地下アイドルの彼氏と付き合っているインフルエンサー女子が主人公の物語と、まさに今らしさの詰め合わせ。演じるのは文学好きとしても知られるセクシー女優・八木奈々さんだ。





知っているようでよく知らない、男性アイドルとインフルエンサーというふわふわした組み合わせは、なんとなく「地雷臭」がする。

「みんなの」アイドルである彼氏と交際していく中で、徐々に心が壊れていく女性の心理描写にスポットが当たっている。台本を読んだだけでも切ない痛みを感じた



実際に現場にインしてみると、予想以上にスタッフの数が多い。カメラ、照明、音声に監督……もちろん演者につくヘアメイクもゾロゾロ来ていて、スタッフだけでもざっと20人以上はいるだろうか。

YouTubeドラマと聞いて安易な想像をしてしまっていたが、潜入しての感想は「ガチっぽい」(というか第1話を見たときに気づけ)。これはテレビで見たドラマの撮影現場に近しいものではないのか?

それもそのはず。制作会社はこれまでにSKY-HIさんやDuke of HarajukuさんなどのMVを手がけたOKNACK(オクナック)、そして監督は、ロックバンド・ONE OK ROCKのライブ映像演出のほか、多くのアーティストのMVやCMなどを手掛ける新進気鋭の映像作家・須田真志さん(針NEEDLE)だった。





これはもう、普通にドラマの撮影現場だ。知らず知らず抱いていた先入観を壊され、急に身が引き締まる。

主演の八木奈々さんは演技派女優としても定評がある。AV以外の作品で演技をするのは初めてだというが……。









迫真すぎる演技でお相手役のメン地下ボーイを本気でビビらせている。

どの話も心理描写が重要になってくるため、出演者の表情づくりや振る舞い、それに対する監督、脚本家の指示も細かい。

絵コンテを確認しながら、同じシーンをいろいろな画角で何回も撮っていく。たとえば電話を取る手はどっちの手が自然なのか、というくらい細かい部分まで確認しながら撮影が進む。交わされるやり取りの1つひとつに想いのこもった緊張感が漂っているように感じた。



場合によっては、30秒分の1シーンを撮るために、何度もカメラを回しては切って、30分以上撮影することもあるという。演者も監督の指示を真摯に聞きながら、時にはアドリブも混ぜながら演技をしていく。

ストーリー的に重たくシリアスなシーンも多いので、制作現場の空気もどこかピンと張り詰めていた。


主演・八木奈々「我慢を重ねて衝動にかられる人はいる」



撮影の合間を縫って、主演の八木さんに今回のドラマ撮影にあたっての心境を聞いてみた。

「台本を読ませてもらったときは、自分が演じる役柄に対する理解に苦しみました。私は恋愛経験があまりないので、恋人に対して逆上して暴れるシーンなど、主人公の気持ちが理解できなかった。でも、台本を何度も読み込んで、なぜ主人公が”メンヘラ化”してしまうのか考えて……」

その結果「なぜ彼女はこんなふうに行動するのか」という理由がわかるようになったという。

「感情移入できるようになってからは、とても演じやすかったです。恋人への我慢が重なって、衝動的な行動を取ってしまう人は少なくないはずだから、共感できるところも多いはずです」



「いつものAVの現場であるようなシーンがないので、演じる側としても新鮮でした。普段と比べると、演じることに集中できてすごく楽しかったです」と八木さん

ほのぼのと穏やかそうな雰囲気の彼女だが、第2話で演じるのは感情の起伏の激しいメンヘラ彼女だ。ストーリーではリアルな1人の女の子がメンヘラ化していく過程が描かれる。

演者はシーンに合わせて、衣装替えやヘアメイクを何回も行う。自分の番を待つ演者たちの表情も、緊張がうかがえる真剣な表情だ。ドラマの撮影中は状況に応じて撮影スケジュールも変わっていくので、演者も気が抜けない。

「なぜメンヘラ化するのか?」その過程は男性でも参考に



八木さん演じるインフルエンサーの恋人役として、メンズ地下アイドルを演じるのは、実際にメンズアイドルグループ・BLACK IRIS(ブラックアイリス)で活動している西玲人さんだ。

「僕は実際にアイドル活動をしているので、台本を読んだときの感想は”妙にリアルだな”という感じでした。わかりみが深いというか。メンヘラ彼女の恋人役として出演しましたが、彼女役の八木さんの演技力に圧倒されてしまって、演技中なのに本気でビビりました(笑)



西さんは「ぜひ男性にも見てほしい」と語る。

「ストーリーもおもしろいので、僕としては男性にもぜひ見てみてほしいですね。キレてしまった女性の恐ろしさや、どうしてメンヘラになってしまうのかなど、1人の男性として参考になる部分も多かったです」

中心実物を演じる2人からここまで言われると、俄然第2話の内容が気になるところ。続いては、その物語づくりの一端を担う脚本を手がけた妹尾ユウカさんにも話を聞いていきたい。

脚本担当の妹尾ユウカ「変な“好き”だけどよくある“好き”」



当日、撮影現場を訪れていたコラムニスト・妹尾ユウカさん。さまざまなメディアで恋愛コラムを執筆している彼女は、人生経験豊富で若者のリアルについても造詣が深い。

全話の脚本を担当しながら、キャスティングに加え、現場にも足を運んで撮影指示なども行う、さながら監修のような立ち回りだ。

「脚本を書くにあたって一番大事にしたのは“リアルさ”ですね。見た人がちゃんと“あ〜、いるよねこういうやつ”と感情移入できるような、リアルなステータス、リアルな人物像。10代〜30代くらいの人なら、自然に物語に入り込めると思います」





「撮影現場でもとにかく、リアル感や違和感のなさにこだわっていて、撮影して違和感があった部分は、その場で脚本やセリフを変えながら撮り直すこともありますね」と妹尾さん。周りの友人たちの恋愛もアイデアソースにしながら「今どこにでもある恋愛」というテーマで脚本を書いているという。

「タイトルは『私の好きって変ですか?』だから。ちょっと普通とは違う、変わった『好き』。だけど、今どきのよくある『好き』の1つではある、ということにこだわって、毎話脚本をつくっています。ちょっと上の世代でいう普通の恋愛って、ドラマの『ロンバケ(編注:ロングバケーション)』だったと思うんですよね。でも、今の私たちにとっての普通の恋愛って、意外と今回のドラマみたいな恋愛なんじゃないかなって

昔なら「ちょっと変」だった恋愛も、令和の現在では「普通の恋愛」なのではないか、ということか……。ドラマではそんな今どきの恋愛を主題としながら、妹尾さんは裏テーマとして「女の友情の儚さ、もろさ」というものも描いているそうだ。女性なら誰もが頷ける部分でありながら、男性にも参考になるはずだ。

『私の好きって変ですか?』令和的恋愛観を代弁



とにかく無料公開とは思えないくらい、制作現場にはカネと熱量がかかりまくっていた。現場と本編の両方を見ている筆者としては、地上波で放送されても絶対見ちゃうレベルと太鼓判を押したい。

『私の好きって変ですか?』の第2話配信は◯月◯日の予定だ。「寝取り女子」や「メンヘラ彼女」といった、ネットではよく聞くけど本性がわからない女性たちの生き様と心情。毎回主人公を演じるセクシー女優さんたちの「普通の女の子」としての演技も見逃さないでほしい。

1990年代後半に「月曜日はOLが街から消える」と評されるほど共感を呼んだドラマ『ロングバケーション』。そして、映画『愛がなんだ』が「エモい!」「私のこと!」と話題を呼んだのは平成の終わりだった。

じゃあ令和的恋愛ドラマって何だろう? 言われてみればたしかに“変”だけど、そんな好きもあるかもねと共感できる『私の好きって変ですか?』が、候補の1つになってもなんら不思議ではないだろう。


令和時代の恋愛、セクシー女優が体当たりで表現 ドラマ『私の好きって変ですか?』潜入レポ