日本も韓国も新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まった。しかし、なかなか感染者数が減らない。
こんな時に、韓国で衝撃的なニュースが流れた。
“コロナに効く”ヨーグルトがバカ売れ
南陽(ナムヤン)乳業が発売する「ブルガリス」というヨーグルトが新型コロナウイルスを抑制する効果があるというのだ。
4月13日、韓国医科学研究院の主管で開かれた「コロナ時代の抗ウイルス食品開発シンポジウム」において、ブルガリス製品が新型コロナの抗ウイルス効果があるという発表があった。
このシンポジウムによると、「インフルエンザウイルスに感染した犬の腎臓細胞にブルガリスを投与した結果、ウイルス低減率が99.999%と出た。また、コロナウイルスに感染した猿の肺細胞にブルガリスを投与した結果、ウイルス低減率は77.78%と出た」というのだ。
シンポジウムでの発表がメディアに流れると、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで「ブルガリス」が売り切れ続出。
SNS上ではブルガリスを買った、飲んだという証拠写真が次々投稿され拡散した。そして、韓国の東学アリ(個人投資家)たちは、南陽乳業の株を買い、株価は急騰した。
発表の翌日には、48万9000ウォン(約4万8000円:前日対比25%上昇)まで値上がりした。
しかし、韓国の疾病管理庁はすぐさま懸念を表明した。
発表された内容について「特定食品のコロナ予防・治療効果を確認するためには、ヒトを対象にした研究が伴われなければならない」という。また、専門家らも「人体実験もない誇張された発表だ」と指摘した。
すると同社の株価は暴落し、30万ウォン台に落ち込んだ。
確かに、今回の発表には無理があった。シンポジウムでの発表という形式ではあるが、内容を発表した人は、南陽乳業の抗ウイルス免疫研究所長で、現在南陽乳業の役員であった。
「抗コロナウイルス」謳い問題に
つまり、いかにも学術会議での発表を模していたが、南陽乳業が自社の製品を売り込む作戦であったことが見え見えなのだ。
それに、ブルガリスの瓶には、「韓国医科学研究院との共同研究」と記されている。しかも、ダイエットにいいとか、健康にいいとかという曖昧なコピーではなく、明確に「抗コロナウイルス」と謳っている時点で食品表示広告法違反である。
今回の発表は、コロナ禍に苦しんでいる国民の弱みに付け込んだマーケティングにしか見えない。
韓国の食品表示広告法第8条によると「疾病の予防・治療に効能があると認識する懸念のある表示または広告」を禁じている。
ちなみに南陽乳業は、韓国の2大乳業の一つであり、2013年には代理店へのパワハラで不買運動が起こり売上に大打撃があった。
さらに、創業者(故人)の孫娘が元JYJのメンバーであるパク・ユチョンの元婚約者で、2人は麻薬取締違反で逮捕され、会社のイメージダウンが続いていた。
そこで、南陽乳業は、件の孫娘は会社の株を持っておらず、会社の経営には一切関与しないと述べ、一切会社との関係がないことを強調していた。
今回も、南陽乳業は4月16日、「発表過程で細胞実験段階での結果であることを説明したが、人体実験をしておらず、効果を断定できないにもかかわらず、消費者の誤解を招いた点に対して謝罪する」との声明文を出している。
一方で、「韓国医科学研究院ではブルガリスによりH1N1型インフルエンザウイルスの99.999%低減の研究結果が出て、忠南大学獣医学科保健研究室では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の77.78%低減結果が出た」と主張した。
嘘をついたのではなくて、事実を誇張しただけだというのだ。
悪いイメージ払拭のはずが・・・
南陽乳業はこのところ悪いイメージばかりだっただけに、思った以上の結果を早く発表してイメージアップを図りたかったらしい。
しかし、結果は完全に裏目に出てしまったようだ。
4月20日、韓国の中央官庁が集積する世宗市は、「ブルガリス」を生産する南陽乳業の世宗工場に対し、食品表示広告法違反で2か月の営業停止処分を下した。
こうなると、世論も手のひらを返したように悪くなった。SNS上では南陽乳業への不買運動が始まっている。
南陽乳業にとって必要だったのは、良い知らせを早く公表して宣伝に活用することではなく、事実をしっかり積み上げることだった。
まさか、「急いてはことを仕損じる」「急がば回れ」の諺を知らなかったわけではないだろうが・・・。
コロナに効くといえばすぐに飛びつく国民も問題だが、それだけ新型コロナウイルス感染症が韓国社会に厳しい影響を与えていることの証左なのだろう。
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