「いろいろな人から被害者的な目で見られたり、かわいそうと言われることが多いが、自分を被害者と思っていない。今回の会見や、過度なスケジュールなど思い出すだけでも、死のうとすら思ったぐらいの重かった記憶が蘇るけれど、活動を通して出会えた人や経験があるからこそ、大人になれた部分はすごくあったと思う」

アイドルユニットブレイクスルーの元メンバー、新澤典将さんは4月21日、都内で開いた記者会見でこのように話した。(ライター・玖保樹鈴)

「適応障害と診断された」

新澤さんは2019年1月、事務所と契約した際、『メンバーの承諾なく脱退し、またはグループを解散させてはならない』『1つの違反につき違約金200万円を支払わなくてはならない』と書かれた「専属マネジメント契約書」にサインした。

しかし、歩合制とされていた給料が固定給だったことや、事務所の実質的な代表者から「ほかのアーティストの曲を真似た曲を作り、オリジナルとして披露しよう」などと、想定していない方向への提案をされたことで、体力的にも精神的にも限界がきた。

新澤さんは2019年12月、適応障害と診断されて、2020年7月に「脱退したい」と伝えたところ、事務所側は「みんなそれなりに病気はある。辞めるならば3年間いるのか、お金払って辞めるのかのどちらかの選択肢しかない」と宣告したという。

「最初から最後まで赤字だった」

新澤さんが2020年8月、弁護士を通じて契約解除の内容証明を送ったところ、事務所から、ライブリハーサルの無断欠席4回と無断脱退の5件、合計1000万円の違約金から未払い給料の11万円を相殺した989万円を求める訴訟を起こされた。

この日の記者会見では、新澤さんの代理人をつとめる河西邦剛弁護士が、これまでの経緯を説明した。そして、心身ともに限界だと訴える新澤さんに対して、事務所の実質的代表が発言した内容の録音データも公開された。

「医者の診断でステージ立てる立たれへんて医者って俺はそんなそこまでジャッジできへんと思ってんねや。そこまでやってくんのなら、俺弁護士立てて本気でいくで。冗談ぬきで」

「いやいや、みんなそれなりに病気やったやん。みんなそれなりに病気あるて」

「もう立たれへんねやったら、立ったままおったら? 別にパフォーマンスしなくてもいいから。うん。後ろのほうにおったらいいんじゃない?」

さらに、新澤さんは、事務所からの給料が、デビュー前までは月6万円、デビュー後から2020年1月までは月12万円、その後は月15万円しかなく、貯金を切り崩したり、親から借りるなどして「最初から最後まで赤字だった」と明かした。

「被害者だとは思っていない」

現在は非公開になっているユニットYouTubeチャンネルでは、罰ゲームとして上半身を裸にされた新澤さんが、ザリガニを乗せられたり、ドッグフードも乗せられて、メンバー飼い犬に舐められて泣き叫ぶ様子が公開されていたそうだ。

それでも「被害者だと思っていない」(新澤さん)。そう語ったことに対して、記者から「事務所側から不当な扱いを受けたという捉え方をしていないのか」という質問が飛んだ。

新澤さんは、契約書にサインをしてしまったのは、己の若さと無知であるとしたうえで、「実際にメンバーと過ごした日々や活動もあるので、全部が全部、被害者ではない。マイナスではない」「納得できないこともあり、それがほとんどですが、ブレイクスルーとして活動していたのは事実なので、恨むとかそういうことはなくて、それに関しては感謝しています」と気持ちを吐き出した。

一方で、未だに体調は快復しておらず、日常でも震えが止まらないという。この日も録音を聞いたことで、フラッシュバックが起きたものの、夢もあるので負けていられないと話した。新澤さんが求めているのは、契約した事実は「有効」であっても、「罰金200万円を支払う」という項目は「無効」と認められること、そして芸能活動を続けていくことだ。

「(実質的な)代表のことは、今でも怖いが、面倒見てくれたことには感謝している。こちらから訴訟を起こしたり、自分の意思で彼にマイナスになるようなことを発信しようとは思っていません。僕からは痛めつけたくない」(新澤さん)

アイドル脱退「違約金」訴訟、「死のうと思った」「感謝もある」元メンバーが会見で語った本音