JAL国内線に独自導入されている「クラスJ」は、そのコストパフォーマンスの高さから屈指の人気を持つ席です。2021年にはフルフラット席が導入されるなど著しい進化も遂げていますが、その始まりはどういったものなのでしょうか。

地方路線でも高確率で設定されているのもポイント

旅客機の座席クラスといえば、航空会社によってはベッドやシャワー室もついているような最上級のサービスが受けられる「ファーストクラス」、その次点のクラスでありながら、航空会社によってはフルフラットシートが搭載されているなど高い快適性を持つ「ビジネスクラス」、それと一般の「エコノミークラス」という3区分が一般的です。近年では、これに「プレミアムエコノミー」という新クラスが誕生している航空会社も見られます。

ただ、これは国際線の話。日本の航空会社の国内線では、少々異なった形態をとっています。ANA(全日空国内線では「プレミアムクラス」「普通席」に分けられ、そしてJAL日本航空)では「ファーストクラス」「クラスJ」「普通席」というクラス編成です。

ANAの「プレミアムクラス」、JALの「ファーストクラス」では、シートが豪華なのはもちろんのこと、国内線にもかかわらず、食事なども提供されます。ただ、これらのクラスは、それ相応の価格帯ではあります。

一方、JALにある「クラスJ」は、航空ファンを中心に「コストパフォーマンスが非常に高い席」として知られています。というのも、普通席運賃から当日アップグレードする場合、その差額はわずか1000円。サービス面では、食事提供こそないものの、普通席と比べドリンクの種類などが増えます。そしてその本領は座席。たとえば最新仕様のエアバスA350-900、ならびにボーイング787のクラスJシートは、普通席より約18cmも広い、前後約97cmの間隔が確保されているほか、レッグレストも備えます。

またJALの「ファーストクラス」は国内幹線しか設定されていないのに対し、クラスJは、JALグループの国内路線全体(コードシェア除く)の約90%で設定されており、ほとんどの路線で乗るチャンスがあるというのもポイントでしょう。

コスパ最強席「クラスJ」起源からたどる!

この「クラスJ」、JALでは当初から導入されていたわけではありませんでした。かつてのJAL国内線は上位クラスの「スーパーシート」と普通席の2クラス。対しJALと合併したJAS(日本エアシステム)は当初JALと同様の2クラス制でしたが、1997(平成9)年ボーイング777型機の導入を機に、中間クラスの「レインボーシート」を38席導入。このレインボーシートはプラス1000円の料金で乗れるなどクラスJとの類似点も多く、一説では「クラスJの祖先」といわれることもあります。

JALがクラスJを導入したのは、JASと合併したあとの2004(平成16)年。「お客様から求められる『やすらぎの空間』を新リクライニング方式による座り心地とご利用しやすい料金で実現する『新生JAL』からの提案です」と、当時の報道発表には記載されています。その後、JALのクラスJは順調に利用者からの高評価を得ており、いまでは「ビジネス客を中心に、JAL国内線の3つのクラスの中でもっとも高い搭乗率」(JAL)なのだとか。

そして、このクラスJ、ここ数年で幹線を中心に新たな進化を迎えているともいえるでしょう。2019年には次世代国内線主力機エアバスA350-900の導入にともなって、クラスJを含む全クラスに新シートを導入。その後2021年3月には、新型コロナウイルス感染拡大や、搭載エンジンのトラブルなどで機材計画が見直され、かつて「レインボーシート」を搭載したこともある元JAS機をはじめとする、従来型クラスJシートを搭載した国内線仕様のボーイング777型機が即時退役しました。

これとほぼ入れ替わるように、2022年までを目処に、国際線仕様のボーイング777-200ER型機が国内線に内装を変えず定常導入されます。この国際線仕様機は、上位クラスにフルフラットシートが特長である「ビジネスクラス」が設定されていますが、JALでは、国内線にビジネスクラスがないことから、クラスJ扱いで乗ることができます。つまり、これからしばらくの間「クラスJ扱いでフルフラット席を体験」できる期間が続くというわけです。

JALの国内幹線用主力機、エアバスA350-900(乗りものニュース編集部撮影)。