シェイクスピアの不朽の名作「ロミオとジュリエット」を、打ち込みなども多用した現代的なロックサウンドでミュージカル化、2001年にフランスで初演されたミュージカルロミオジュリエット』。20ヵ国以上で上演されている世界的ヒット作だが、日本では2010年に宝塚歌劇団によって初演。その後2011年には〈日本オリジナルバージョン〉が登場、ともに上演を重ねる人気作になっている。〈日本オリジナルバージョン〉ではこれまでロミオ役を城田優、山崎育三郎、古川雄大、柿澤勇人、大野拓朗とミュージカル界のスターたちが演じてきた。10周年となる今年、ロミオ役に抜擢されたのは黒羽麻璃央と甲斐翔真。ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンやミュージカル『刀剣乱舞』シリーズで人気を不動のものとし、2019年版『ロミオジュリエット』マーキューシオ役でグランドミュージカルに初出演、昨年は『エリザベート』ルキーニ役で帝国劇場デビューを果たす予定だった(新型コロナウイルスの影響により全公演中止)黒羽、2020年『デスノート THE MUSICAL』主演で華々しくミュージカルデビューを飾り、その後『RENT』や『マリー・アントワネット』に出演した甲斐、ともにミュージカル界注目の若手スターだ。ふたりのロミオに意気込みを聞いた。

プレッシャーもあるけど楽しみなロミオ役

――まずは『ロミオジュリエット』、この大人気ミュージカルの主役であるロミオに決まった時のお気持ちを聞かせてください。

黒羽 素直に嬉しかったです。自分は前回(2019年)マーキューシオとして出演した時に、ロミオ役のおふたり(古川雄大、大野拓朗)に俳優として嫉妬をしていました。その役を今度は自分がやらせていただくということは非常に嬉しいですし、純粋に楽しみだなと思いました。

甲斐 僕は、この大役に挑戦できることが本当に嬉しく、こんなチャンスは二度とないだろうなと思いました。そして、歴代のロミオ役の先輩方は、ほかの作品でも主役や大役を務められている方々です。僕もそういう風になれたらいいな、先輩たちのようになっていけたらいいな、という夢を抱きました。……その前にまずは、ロミオを充実した役にしなければいけません。

――甲斐さんは今回、作品にも初参加です。この作品、ご存じでしたか。

甲斐 もちろんです。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を知らない人なんていないのではないでしょうか。その名作の中のロミオ役を演じる、というのはすごくプレッシャーでもあります。

オーディションは思っていた3倍、大人がいました(笑)(甲斐)

――原作はもちろんですが、このミュージカル版自体が日本でも10周年を迎える人気作ですね。黒羽さんは前回もご出演されていましたが……それ以前から本作のことをご存じでしたか?

黒羽 はい、知っていました。……と言いますか、前回より前にもオーディションには参加していて、落ちていますので(笑)。僕は、オーディションでミュージカルナンバーを歌うというのは『ロミオジュリエット』が初めての経験だったんです。今でも覚えています、『世界の王』などを歌ったのですが、めちゃめちゃ緊張して受けていました。

――そうなんですね、ではオーディションに落ちたところから始まり、マーキューシオ役、そして今度はロミオ役。どんどんステップを上っていますね!

黒羽 うーん、僕はあまり、役にランクをつけたくはないのですが……。

甲斐 でも主役ですよ!

黒羽 そうですよね……では、はい。僕も成長しました(笑)

――甲斐さんもオーディションを経て決まったのですか?

甲斐 もちろんです。オーディションってどんな感じかな、と思って行ったのですが……思っていた3倍、大人がいました(笑)。それくらい大きい作品で、たくさんの方が関わっている作品なんだなと身に染みた瞬間でもありました。でも緊張しすぎてあまり覚えていないです。

――何を歌ったのでしょう?

甲斐 『僕は怖い』と『世界の王』、それとなぜか『オー・ソレ・ミオ』を……。

黒羽 ええっ!?

甲斐 その時ちょうどオペラの練習をしていたんですよ。練習中だったにも関わらず披露してしまって……。

――合格されたので結果オーライかと(笑)。すでにお稽古が始まっていますが、実際にロミオとして動いて、抱いていた印象と違ったな、というようなところがあれば教えてください。

黒羽 思ったより大変です。ロミオは出番も多ければ、やることもめっちゃ多いなーと(笑)。僕が嫉妬心を抱いていたあのおふた方(古川、大野)はすごいことをやっていたんだな、と、今は完全にリスペクトにまわっています。

甲斐 僕が改めて感じたのは、曲がいいということ。自分次第で音楽の良さをもっと引き出すことができるし、逆に殺してしまう危険性もあるのですが、そこもすごく楽しい。それと、僕、ひとつ前の作品がかなりベテランの方の多い現場だったのと、役柄が貴族だったので、ちょっと背伸びしていたんです(ミュージカルマリー・アントワネット』)。今回は同世代が多いこともあり、等身大の自分として稽古ができています。

黒羽さんは兄貴肌(甲斐)
甲斐君は真っ白なロミオ(黒羽)

――ご自身が演じるロミオは、どんなところを大切にして、どんな風に役を作っていきたいと思っていますか。

黒羽 難しいですね……。正直なところ、まわりとの関係性含め、どんなロミオになるか、自分も楽しみにしている段階です。でも皆さん、漠然と“ロミオ像”というものをお持ちですよね。自分の中にももちろんあります。そこは押さえつつ、どうしたら作品の中でロミオがより生き生きとできるか、そして作品をより面白くするためにはどう存在すべきかを模索しています。でも“キラキラ感”は忘れずにやっていきたいですね!

甲斐 僕は、いかに最後のロミオとジュリエットの死が尊いものになるかに重きをおきたい。そのためには、それまでのプロセス……ふたりの関係性やロミオという人物像を、いかに膨らませていけるかにかかっていると思うので。まだ具体的に言うのは難しいのですが、とにかくふたりのことを愛しく思ってもらえるように頑張りたいと思っています。

――せっかくのWキャストですので、お互いのロミオはこうなっていくだろうな、自分とはこういうところが違いそうだな、というポイントも教えていただければ!

甲斐 パーマ系ロミオ……。

黒羽 それ、僕の見た目やん(笑)!

甲斐 (笑)。でも、このあいだ稽古場で思ったのは、黒羽さんは兄貴肌というか、仲間たちから頼られそうなロミオだなと。マーキューシオとベンヴォーリオとのシーンを見ていて、そう思いました。

黒羽 へぇ~。それは、僕が前回も出ていてミザンス(舞台上での役者の立ち位置)を覚えていたから、兄貴風を吹かせていただけじゃない(笑)?

甲斐 いえ、佇まいや空気感からそう感じたんです!

黒羽 そっかー。僕は、甲斐君のロミオは“真っ白なロミオ”になるなと思っています。変な着色料の入っていないロミオ。水とか、白とか。そういう無垢なロミオだからこそ、ジュリエットへの愛情がめちゃめちゃ真っ直ぐなものになりそうだな、と。……あと補足しておきますと、僕も髪の毛はこんなくるくるではないと思います(笑)。

甲斐 もう少しさらっと?

黒羽 さらっと。王子さま(的キャラクター)にならないといけないからね!

――この物語、悲恋とも取れますし、ロミオとジュリエットは死をもって愛を成就させた、とも受け取れます。物語の骨格は誰もが知っている有名なものですが、人によって様々な解釈ができる。おふたりはどう捉えていますか。

黒羽 うーん……、〈未熟な人間たちが導き出した“真実の愛”〉みたいなところかな。ロミオとジュリエットといった子どもたちはもちろん、大人も含めみんな未熟。自分たちのプライドや立場が邪魔をして手を取り合うことができなかった人たちが、それこそ人間としてはまだまだ未熟なロミオとジュリエットが提示した真実の愛によって、自分たちの過ちに気付き、平和が訪れる。僕個人としては、死ななくてもできることがあったのでは、結局死んでしまったらおしまいじゃないかなと思うのですが。でも家同士が争うようなことを僕は知らない世代ですから、何とも言えませんね。うん、未熟な者たちが産んだ真実の愛、という面は大きいと思います。

甲斐 そうですね……僕は、〈死を超えた愛〉、かな。

黒羽 いいね、シンプル。わかりやすい。

甲斐 死さえも超えてしまうくらいの、死なんて怖くないって思ってしまうくらいの愛、それを描いた物語ですね。

黒羽 完璧じゃない!? この先100年くらい、そのキャッチコピーでいけそう!

僕もロミオ一年生。甲斐君と一緒に歩んでいけたら(黒羽)

――最後に、なかなか劇場に行くのも躊躇する方もいらっしゃる昨今ですが、でもそんな中でも劇場に来たお客さまは、どんな気持ちを持ち帰ることができる作品になりそうでしょうか? ぜひ、お客さまにメッセージを。

黒羽 “愛”というのがひとつの大きなテーマとしてある作品です。この作品をご覧になっていただけたら、自分が愛する人……恋人でも友人でも家族でも、自分が愛情を注いでいる人に対して、もっと愛情深くなる、もっと愛することをしたくなる、そんな気持ちになると思います。なかなか会いたい人にも会えない状況だと思いますが、自分の持っている愛情をさらに深く感じる作品になっていると思うので、少し皮肉かもしれませんが、こういう時代にはぴったり。そして、そういったメッセージ性だけでなく、楽曲も本当に素敵なものが多く、総合エンタテインメントとしてとても素晴らしい作品ですので、日頃のストレス発散にもいいのでは(笑)。ぜひ、観にいらしてください!

甲斐 この作品を観終わったとき、僕は、意外と“死”ってすぐ近くにあるんだな、と思う気がします。たった数日で、普通の少年少女が死に追いやられてしまうストーリー。特に今の日本は平和で、新型コロナウイルスの問題はありますが、戦争もなくテロなどもめったに起きない。でもそんな僕らのそばにも死はあって、「もうちょっとあの人のことを大切にしていればよかった、もっと愛していればよかった」と思う時は絶対来ると思うんです。改めて、そういうものをいかに大事にして生きていけるか、自分を戒められる。死が強調されているからこそ愛が浮き彫りになる作品です。その中で僕は、黒羽さんとともに、頼りあって、戦友としてロミオを務めていきたいです。

黒羽 うん、僕もロミオ一年生。初めてこの作品に参加するつもりでやっています。甲斐君と一緒に、ロミオとして歩んでいけたらと思います。

取材・文:平野祥恵 撮影:渡邊明音



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公演情報
ミュージカルロミオジュリエット』
原作:ウィリアム・シェイクスピア
作:ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出:小池修一郎(宝塚歌劇団
出演:黒羽麻璃央/甲斐翔真(Wキャスト) 伊原六花/天翔愛(Wキャスト)
味方良介/前田公輝(Wキャスト) 新里宏太/大久保祥太郎(Wキャスト) 立石俊樹/吉田広大(Wキャスト)
春野寿美礼 原田薫 石井一孝 宮川浩 秋園美緒 兼崎健太郎 岡幸二郎 松村雄基
小尻健太/堀内將平<K-BALLET COMPANY>(Wキャスト) 他
※小尻健太の「尻」の字は、正しくは旧字体です。

【東京公演】
2021年5月21日(金)~6月13日(日)
会場:TBS赤坂ACTシアター

【大阪公演】
2021年7月3日(土)~7月11日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール

【愛知公演】
2021年7月17日(土)~18日(日)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール

公式サイト www.rj-2021.com

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2169873

左から 甲斐翔真 黒羽麻璃央