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「最近、知り合いの名前が思い出せなくて困った」「一日中家にいるので、人と会う約束や行事をすっかり忘れていることがある」ーー。

コロナ禍にあって一人で過ごす時間が多くなったことから、物忘れや「頭がぼーっとする」などの症状から認知症を心配し、受診する中高年が増えているという。

「ご自身で受診するならほとんどは大丈夫なケースで、むしろ自覚のない人のほうが心配です。対策のために自宅で脳トレに励む方もいますが、それよりも、必要な栄養素をしっかり取ることで認知症の予防をすることができます」

こう話すのは『1日1杯 脳のおそうじスープ』(アスコム)が話題の脳神経内科医・内野勝行先生だ。医師になったのは、祖母の認知症に直面した経験から。認知症の診断治療はライフワークと言い切る、そんな内野先生によると、加齢に伴い、人の名前や出来事が思い出せなくなるのは自然のことだという。

「脳はいわばクローゼットのような構造。若いころは何でも蓄積できますが40代になると不要なものはあふれてしまう。多少の物忘れであれば、気にしないことがいちばんです」

認知症についてはまだ解明されていないことも多いが、近年、認知症を誘引する「脳にたまったゴミ」といわれる脳内に発生するアミロイドβというタンパク質を除去することが、早期認知症に有効であることがわかってきている。そしてこれを受けて、内野先生が考案したのは、アミロイドβをためないために、1日1杯飲むだけの「脳のおそうじスープ」だ。

忙しい現代人のため、簡単な一手間で作り置きでき、安価で何よりも「脳に効く」ことを目指して試行錯誤の末にできあがったのが「脳のおそうじスープ」なのだ。

「使う食材や調味料は普通のスーパーで買えるものばかりです。これらに含有する栄養素を効率よく、定期的に取ることでアミロイドβを除去するようにしましょう。サプリメントより安価で、必要な栄養素がしっかり取れます」

脳のおそうじスープで使う食材と栄養素は次のとおり。

■トマト=リコピンなど

「トマトといえば脳にゴミをためる原因となる『活性酸素』を除去する働きをするリコピンが豊富。毎日しっかり取りたい食材の代表格ですね」(内野先生・以下同)

■ツナ缶=DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)

「魚の脂に含まれる油で血液サラサラ効果のほか、DHAは脳をはじめ神経系の発達を促す。脳機能の活性化には不可欠な成分です」

■ごま=セサミン

「ごまに含まれるセサミンは、酸化しやすいDHAの酸化防止作用がある。高い抗酸化作用があるので脳の活性化が期待できます」

くるみ=α-リノレン酸

「ごまやくるみに含まれるα-リノレン酸は、体内で生産できるDHAやEPAの材料にもなる潤滑油。血液の凝固を防ぎ、血のめぐりを促し血栓を防ぐ役割もあります」

■蒸し大豆=レシチン、タンパク質、リン

「大豆にはさまざまな栄養成分があります。レシチンの一種ホスファチジルセリンという成分は記憶力や抗ストレス作用、集中力を高める力を補います。体のあらゆる組織の材料となるタンパク質も豊富で、筋肉や脳、神経の材料として欠かせないリンも多く含まれます」

■桜エビ=アスタキサンチン

「エビやカニ、サケなどに含有する赤み成分がアスタキサンチン。体をさびつかせない優れた抗酸化力があることで注目されています」

■こめ油=γ-オリザノール

「こめ油には脳機能を活性化するγ-オリザノールが含まれ、この成分には血中脂質の低下に有効だという研究報告もあります。脳の血管のつまりを防ぐためにも毎日取りたい成分です」

■中濃ソース=スパイス

「ソースはスパイスやしょうがなどで作られていますが、スパイスの香りは記憶をつかさどる海馬を生き生きさせます」

以上の栄養素はふだんの食事でも取れるが、DHAのような酸化しやすい栄養素を抗酸化作用のある食材と一緒に取ると、さらに効果を補い合うという。内野先生のYouTubeチャンネル『ドクターうっちー論!』では、さまざまなメニューを更新中だ。

「女性自身」2021年4月13日号 掲載