人間界だと性転換は一大イベントとなるだろうが、自然界ではままあることだ。ただ「暑いから」という理由で性転換する種も存在する。
動物が性別を変えることを、「シーケンシャル・ヘルマフロディティズム(隣接的雌雄同体現象)」という。
なぜ一部の動物たちは性別を転換してしまうのか? その理由は完全には解明されていない。というのも多くの場合、性転換をするためのエネルギーが、そのメリットを上回ると考えられているからだ。
とにかく自然界では性別は絶対的なものではない。ここではそんな謎めいた性転換をする動物たちを見ていこう。
【1. フトアゴヒゲトカゲ(学名 Pogona vitticeps)】
暑い日が続いても、人間なら薄着に着替えるだけだが、オーストラリアに生息するトカゲは性別を変えてしまう。
最近の研究によると、フトアゴヒゲトカゲの卵には、典型的な性染色体のほかに、気温に応じて性別を決定する遺伝子が含まれている(関連記事)。
フトアゴヒゲトカゲは性染色体がZWならメス、ZZならオスになる。しかし気温が高くなると、その遺伝子のおかげでZW染色体を持っていたとしても、オスが生まれてくるのだ。
2. コモン・リード・フロッグ(学名 Hyperolius viridijlavus ommatostictus)
The Painted Reed Frog
ブルンジやエチオピアなど、アフリカ諸国に生息するカエル、コモン・リード・フロッグもまた性転換する。
1989年の研究によると、24匹中7匹がメスからオスへと変化したという。このタイプの変化を「雌性先熟」といい、ほとんどの場合がメスからオスへの変化だ。
まずいことに、どうやらカエルの性転換は人間の影響を大きく受けているようだ。ある研究では、アトラジンという殺虫剤によって、10匹中1匹の性別が変わったほか、残りの4分の3で卵巣がなくなってしまったことが確認されている。
3. クマノミ(学名 Amphiprioninae)
ディズニー映画『ファインディング・ニモ』に登場したクマノミも性転換する。支配的な地位にあるメスを水槽から取り出すと、支配的な地位にあったオスがメスになって、メスの地位を受け継ぐのだ。
その秘密は脳にあるかもしれない。アンドロゲン(男性ホルモン)をエストロゲン(女性ホルモン)に変えるアロマターゼという酵素がある。2016年の研究では、アロマターゼ遺伝子に対する脳内の反応が、クマノミの性転換に関係しているらしいことが示唆されている。
4. アオウミガメ(学名 Chelonia mydas)
フトアゴヒゲトカゲと同じように、アオウミガメも気温に応じて性別が変わる。グレートバリアリーフで行われた調査では、気温が上がるとメスが生まれる確率が高くなることが観察された。
こうした機能は、さまざまな環境に適応するうえで有利だった可能性がある。しかし現在では、それが種を絶滅に追いやる諸刃の剣になってしまっている。温暖化が進めば、性別の偏りが大きくなり過ぎて、子孫を残せなくなってしまうからだ(関連記事)。
5. ネコゼフネガイ(学名 Crepidula fornicata)
Meet the scientist working on the crazy sex life of slipper impets
その名の通り、猫背を思わせるネコゼフネガイは、成長するとオスからメスへと変化する。2019年の研究からは、この仕組みに進化上のメリットがあるらしいことがうかがえる。
それによると、体が大きく、メスと交尾できる可能性が高いオスほど、性転換の時期が遅れる。その一方で、体が小さく、孤立したオスほど早くメスに変わるのだという。
しかし不思議なことに、オス同士だと事情が変わるようだ。2匹のオスを一緒に飼育した実験では、なぜだか大きなオスの方が早くメスに変わる傾向にあることが観察されている。
6. ブルーヘッドラス(学名 Thalassoma bifasciatum)
カリブ海のサンゴ礁に生息するベラの仲間は、まずメスとして生まれ、オスに性転換する。それによって行動にも変化が生じるようで、性転換中のメスを調べた2013年の研究では、攻撃性の高まりやオス特有の求愛行動が観察されたという。
ちなみに自然界には、生物学的な性別は変わらないが、見た目を異性に似せて生きるトランスジェンダーな動物たちもいる。こうした特徴には、生存するうえでさまざまなメリットがあるものと考えられる。
References:6 animals that can change sexes — and the scientific reason why/ written by hiroching / edited by parumo
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