前作から約2年。京セラの「TORQUEトルク)シリーズ」から最新作が登場した。TORQUEといえば、頑丈で壊れにくく、アクティブに使えるタフネススマホとして有名だ。

 「TORQUE 5G」と名付けられた本作は、シリーズの特徴に加えて、新たに5G対応となり注目を浴びている。

(参考:【写真】泡ハンドソープで洗える「TORQUE 5G」

 そこで今回は、TORQUEの最新作を通して、タフネススマホの現状と課題について考えていきたい。

TORQUEシリーズとは?

 「TORQUEトルク)」は、2014年7月からauで展開している、京セラ製タフネススマホの人気シリーズだ。これまで、最新作を含めて5モデルが発売された。(au専売前の「TORQUE SKT01」、ガラケーの「TORQUE X01」は除く)。

 主な特徴は、落下や衝撃などに強い、優れた耐久性にある。米国国防総省や京セラ独自の試験をクリアしており、その耐久性は折り紙付きだ。日常使いはもちろん、アウトドアプロフェッショナルな業務で活躍するスマホとなっている。

 国内のタフネス端末といえば、auの「G’zOneシリーズ」が有名だったが、2012年11月に発売した「G’zOne TYPE-L CAL21」を最後に撤退してしまう。その後、auのタフネススマホを継いだのが、京セラTORQUEというわけだ。

 そして、2021年3月に最新作の「TORQUE 5G KYG01」が発売された。本作は、京セラ国内初・シリーズ初の5G対応で注目を浴びている。それでは、簡単に特徴を見ていこう。

・受け継がれるデザインと充実したアクセサリー

 シリーズ特有の男心をくすぐるデザインは、最新作でも細部に受け継がれている。ただし、前作に近いデザインながら、若干サイズアップしている点は評価が分かれそうだ。

 前作に比べて、ディスプレイは5インチから5.5インチ、サイズは幅73×高さ150×厚さ13.4mm(最厚部17.4mm)から幅75×高さ167×厚さ14.8mm(最厚部20.3mm)、重量は200gから248gとなっている。

 カラーは、レッド、ブラック、イエローの3色展開。背面・正面カバーなどを購入すれば、部分的なカスタマイズも可能だ。またアウトドアブランド「Coleman」とコラボした期間限定予約販売モデルもある。

 別売りのアクセサリーには、三脚やマウントなどにスマホを装着できる「三脚ネジ対応マルチホルダー」、バックルとパラコードの付いた「ハードホルダー」、水中でストラップが浮かび上がる「フローティングストラップ」などがある。

 他にも、電池パックを単体で充電できる「バッテリー充電器」や、予備の「電池パック」が販売されるなど、充実したラインアップだ。

より進化したスペックとカメラ機能

 前作に比べて、CPUはSnapdragon660から765、RAMは4GBから6GB、ROMは64GBから128GBと使いやすくなった。バッテリーも2,940mAhから4,000mAhに増えている。

 メインカメラは約2,400万画素、フロントカメラは約800万画素で、前作と同じだが、ワイドカメラは約1,600万画素と倍に進化した。

 新機能として、薄暗い場所でも撮影できる「ナイトモード」や、ダイナミックな構図が実現できる「パノラマモード」などが追加されている。

 他にも、日時や速度、天気などの情報を、写真や動画に重ねて撮影できる「Action Overlay」、メイン・ワイドカメラとフロントカメラを同時に撮影し、ひとつの写真や動画にできる「マルチカメラ」、ボタンをプッシュしている間のみ撮影できる「プッシュムービー」などの機能が利用可能だ

・タフネススマホの現状と課題

 京セラは独自分野に特化し、タフネススマホの代名詞「TORQUEシリーズ」を生み出した。国内企業では、過去にパナソニックなどもタフネススマホを作っていたが、現在は京セラの独占状態といえるだろう。

 しかし、TORQUEシリーズには、ひとつだけ課題がある。それは“au専売“という点だ。

 初期の「TORQUE SKT 01」を除いて、すべてのTORQUEシリーズがauを通して発売された。現在、国内のタフネススマホは、TORQUEシリーズしか選べない上、キャリアも指定されている状況だ。これでは、新たなタフネススマホユーザーの獲得が難しいといえるだろう。

 TORQUEの最新作が5Gに対応したことで、確かに話題性はあるかもしれない。しかし、ユーザーがタフネススマホに望むのは、本当に5G対応なのだろうか。本作の利用シーンにおいて、5G対応であるメリットはそこまでないようにも見える。

 それでも5G対応にすれば、今後対応地域が増えていくことでスマートフォンとして重要な通信面をカバーし、他社の5G製品と比べた際に、見劣りしてしまう恐れを回避できるのだ。また、この件については、販売側であるauとの事情も関わってきそうだ。auは、5Gスマホ(参考:https://www.au.com/5g/)に力を入れており、昨年9月には、今後発売するスマホはすべて5Gになると宣言している。

 京セラは、5G対応の前に、少なくとも本作と同時に、TORQUESIMフリー化を実現するべきだった。

 なぜそこまでしてTORQUESIMフリー化を急ぐべきなのか。その理由として、新たなタフネススマホユーザー獲得の他に、中国のタフネススマホ市場の存在が大きく関わってくる。

SIMフリー化を優先すべき理由

 海外では、「ラグドフォン(Rugged Phone)」という名称でタフネススマホが愛されている。主に、京セラが海外向けに展開する「DURA FORCEシリーズ」や、アメリカのCaterpillar社が開発した「CATシリーズ」などがある。

 そして近年、特に勢いがあるのは、中国のタフネススマホ市場だ。

 「Blackview」「DOOGEE」「Ulefone」「UMIDIGI」「OUKITEL」「Unihertz」などのメーカーが、続々とタフネススマホを発売している。これまで技適や対応バンドの関係上、日本で使えないものが多かったが、徐々に使えるものが増えてきた。

 こうしたタフネススマホは、京セラにとって脅威になり得る存在だ。優れた耐久性はもちろん、圧倒的な端末価格の安さ、デザインの豊富さ、スペックの高さはユーザーにとって魅力的に映るだろう。

 現段階では、こうしたタフネススマホの販路が少ないため、一般的なユーザーにとってTORQUEが第一選択肢となる。しかし、中国のメーカーが本気で日本市場をターゲットにすれば、一気に情勢は変わることだろう。

 だからこそ、国内ユーザーに向けてTORQUESIMフリー版を展開し、柔軟な選択肢を用意しなければならない。これまで以上に中国製スマホの勢いが増す昨今、タフネススマホだけが例外的にシェアを奪われない、というわけではないのだ。

・タフネススマホをより多くのユーザーへ

 京セラはニッチな領域で戦い続けてきた結果、国内で唯一タフネススマホを展開する企業になった。しかし、中国のタフネススマホ市場を考えると、今後安定した展開は難しくなるかもしれない。

 絶滅危惧種に近い国産タフネススマホを広めるためには、「新たな動き=SIMフリー化」が必要なことは明白だ。

 タフネススマホユーザーの流出を防ぐため、そして日本で培ってきた技術を守るため、一刻も早くTORQUEシリーズのSIMフリー化を実現してほしい。(菊池リョータ)

京セラ「TORQUE 5G」