息をのむ投手戦。加えて異例の無観客開催だ。テレビの前の視聴者をクギ付けにして、試合はとんとん拍子で進む。28日のオリックス対楽天。山本由伸則本昂大という本格派右腕の投げ合い。0-0のスコアレスドローに終わった熱戦は、今季最短となる2時間12分で決着した。

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 山本は「9回のマウンドに上がる時、まだ8時になっていなかった。びっくりしました」と振り返った。それもそのはずで、9イニングで終わる野球の試合の平均試合時間は3時間超えが常識。昨年は3時間13分で、今年も27日現在で3時間11分と大差なく推移している。

 両軍無得点のスコアレスドローという点がまず大きい。今季は新型コロナウイルス感染拡大に伴う特例として、延長戦を廃止して9回打ち切り。従来なら延長戦に突入していた展開で、それが早期試合終了の一端ではある。

 加えて実力派の両投手がテンポよく投げ続けたこと。山本は9回3安打完封で96球。則本は8回2安打無失点で98球だった。最後の9回裏を投げた抑えの松井は2四球で走者をためたが、無失点。打者5人の攻撃は、最後にしてこの試合初めてのことだった。

 そして無観客開催。余計な演出が省かれることから、試合時間が短くなる傾向がある。

 さまざまな要素が絡まり合い、近年ではまれな超高速決着の試合が誕生した。

 プロ野球の9イニング制の最短試合時間は、55分という現在では考えられない数字も残っている。これは1946年7月26日に行われた、大阪タイガース対パシフィック。1-0決着で両投手が完投し、ホームの大阪の勝利で9回裏は行われなかった。

 もっとも当時と今とでは、野球の質が大きく異なる。現代野球において、驚異的なスピード決着の一戦としてファンの記憶に今も色濃いのは、1999年7月9日横浜スタジアムルーキーだった巨人・上原浩治のハイテンポ投球が、1時間59分という衝撃のタイムを叩き出した。

 上原は現役を通して速いテンポで投げ込む投手だったが、ルーキーイヤーはその点が特に注目を浴びていた。この試合、巨人が横浜を6-1で下し、上原は完投勝利。スコアを見れば一目瞭然だが、決して点が全く入らなかった試合ではない。そしてホームの横浜が敗れたため、試合は9回裏まできっちり行われている。それだけに、2時間切りの凄さが語り草となった。その後、巨人のエースとして何度も先発マウンドに立ち続けた上原だが、この1年目を上回るタイムは残せていない。

 その後、21世紀に入り早20年以上がたつが、9イニングで2時間切りの試合はたった1試合しかない。2009年10月10日の広島対巨人で、1時間52分というスピード決着だった。

 ただし、この試合には特殊な条件がいくつか付く。1-0広島勝利で9回裏は行われなかった。時期的にも消化試合となっており、チーム順位には影響を及ぼさない。試合は広島先発の大竹が2安打完封。巨人先発ゴンザレスは8回完投で、2安打1失点だった。1回裏に広島が1点を先制し、いわゆる「スミ1」試合でその後は淡々とイニングを消化していった。後に指揮官となる緒方孝市の引退試合でもあった。

 特殊条件を加味すれば、時短試合としてより価値が高いのは、新人・上原が演じた横浜でのパフォーマンスの方に軍配が上がる。野球の試合時間の長さは、世界的な普及への観点からもここ数年ずっと問題視され続けている。高い実力を持つ2人の本格派投手がつくりあげた、2時間12分というタイム。惜しむらくはスコアレスドローに終わった点ではあるが、かつての新人・上原の輝きを思い出させ、球界全体に大事なものを問いかける一戦でもあったのではないか。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]


今季最短時間を記録したオリ・山本、楽天・則本の投げ合い 過去にルーキーイヤーで1時間59分という衝撃のタイムを記録した投手とは?