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65歳以上の人の約15%がかかっているという認知症を撃退できるうれしい食材があることを知っていましたか? しかも驚くことに、いずれもとっても身近なものばかり。ぜひおいしくお召し上がりくださいーー!

「私はこれまで30年間で、胎児から高齢者まで、1万人以上の脳のMRI(磁気共鳴画像法)で撮影した脳画像の診断を行ってきました。そこでわかってきたのは、人の脳は100歳になっても、その人の心がけ次第でどんどん成長し続けるということなんです」

こう話すのは、脳内科医の加藤俊徳先生(加藤プラチナクリニック院長)。最近、物忘れが多くなり、人の名前が思い出せなくなったと自覚している人には、驚きの言葉ではないだろうか。

「たしかに脳の成長は40代でピークを迎えますが、その後の脳の健康状態も、日々の行いによって衰えを防ぐことができるのです」

加藤先生によれば、脳の健康を保つポイントは三つある。

「一つは脳を刺激してあげること。ふだんからいろいろなことに興味を持ち、つねに脳を活性化させるよう心がけてください。次に睡眠と適度な運動。脳に十分な酸素を供給することも大切です。そして最後にもう一つ欠かせないのが、質のよい食事。なぜなら脳と食事は密接につながっていて、認知症を遠ざけることができるからです」

脳の活性化の“切り札”が、栄養素プラズマローゲン」だ。

「聞きなれない名前かもしれませんが、いま認知症に効果があることでいちばん注目されているのがプラズマローゲンという栄養素です」

加藤先生によれば、米国の研究では、アルツハイマー病の患者の脳にこの栄養素が減少していることが指摘され、九州大学の報告でも、これを摂取すると認知機能が改善することが明らかになっているという。

プラズマローゲンは体内にある抗酸化作用を持ったリン脂質の一つで、神経細胞(ニューロン)をつなぐ成分になっています。脳には、木の枝のようにニューロンが張り巡らされているのですが、このニューロンの成長が脳を活性化し、認知症の予防につながります。そして、そのカギを握るのがプラズマローゲンなんです」

リン脂質とは、細胞膜を形成する主な成分で、人体のリン脂質の約18%がこのプラズマローゲンとされる。脳にはもともと、この栄養素が含まれており、これが不足すると、うっかりや物忘れなどが多くなるのだとか。

うっかりや物忘れといった脳の活動が鈍くなる現象というのは、老化などにより脳の神経線維が傷つき、伝達速度が遅くなっていることも原因の一つです。プラズマローゲンは、傷ついた神経線維の細胞膜を修復してくれる栄養素。神経線維の傷が修復されれば、伝達速度も回復するというわけです」

つまりプラズマローゲンが不足すると、どんどん脳の神経線維の伝達速度が落ちてしまう。これを補うことで、衰えた脳の働きを回復させる効果が生まれるのだ。

プラズマローゲンにはコリン型、セレン型、エタノールアミン型の3種類がありますが、脳に多く含まれるのはエタノールアミン型。これは動物性食品にしか含まれていません。その代表的な食品が鶏肉や魚介類です」

そのなかで、とくに加藤先生が“三大プラズマローゲン食材”としてすすめているのが、ホタテ、タコ、サケだ。

「今回のレシピは、加藤先生からいただいたプラズマローゲンといっしょに取りたい栄養素のリストを参考に考えました。メインの一品だけでなく、おつまみとしてもおすすめですよ」

こう話すのは、料理研究家の羽賀敦子さん。栄養素のリストから参考にしたものは次の3つ。

カルシウム

骨の強化だけでなく脳細胞間の伝達経路の活性化を促進することで知られ、不足すると認知症の危険性が高まる。小松菜シシャモ、ごま、チーズ、ヨーグルトなどに豊富に含まれる。

【ビタミンB、C、E】

脳にダメージを与え、老化の原因になるとされる活性酸素から、脳や体を保護するのがビタミンCとE。またビタミンBには、脳の活動を活発にし、認知症を防ぐ働きがある。これらを多く含むものとして、豚肉、にんにく、卵、アサリかぼちゃ、いちご、パプリカなど。

【レシチン】

摂取すると、脳からの命令を神経に伝えるアセチルコリンが増加。記憶力低下や物忘れの予防に効果がある。また脳の神経細胞が集中する白質の代謝を促進し、脳の神経細胞のネットワークが強化されるという。大豆、ウナギ、鶏レバー、ピーナツなどに多く含まれている。

「このほかに、認知症の原因となる脳内での老化物質の沈着を防ぐ働きがあるとされる、オメガ3脂肪酸を含むエゴマオイルイワシなどの青魚も加え、バランスを重視したレシピにしました。プラズマローゲンは生、加熱に関係なく摂取できます。サケは塩サケや切り身のサーモンなど、お好きなものを選んで調理してみてください」

サケを使った羽賀さんおすすめのレシピを紹介。

認知症撃退オールスターが勢ぞろい!「サケのおにぎり」

〈材料〉

・塩サケ(切り身)…3切れ
・ご飯…おにぎり6個分
・じゃこ…60グラム
・白ごま…小さじ1

〈作り方〉

(1)フライパンで、じゃこと白ごまを軽くいる。
(2)塩サケはグリルで焼き、ほぐしておく。皮の部分はみじん切りにしておく。
(3)ボウルにご飯を入れ、(1)と(2)を加えて、よく混ぜる。
(4)おにぎりにして完成。

じゃこと白ごまを炒めることで風味がUP。塩サケだけでは塩分が足りない場合は、適量の塩をまぶして。

小松菜のビタミン&カルシウムで脳を活性化「サケと小松菜の味噌チーズ焼き」

〈材料〉

・サケ(生切り身)…3切れ
小松菜…6株
エリンギ…3本
にんにく…1かけ
・とろけるチーズ…3枚
・A(白味噌、酒、みりん…各大さじ3)

〈作り方〉

(1)サケは2つに切る。
(2)小松菜は4センチ大にそろえて切る。エリンギは短冊切り、にんにくはスライスにする。
(3)Aを入れた耐熱皿に小松菜を敷き、エリンギをのせ、にんにくを散らす。
(4)(3)の上にのせたサケにチーズを重ね、オーブントースターで10分間焼く。
(5)サケに火が通り、チーズが溶けたら完成。

味噌とチーズが絶妙にマッチ。オーブントースターはサケに火が通ったかを確認しながら、こまめに時間設定して。

■大豆のレシチンが脳の神経細胞を強化「サケと大豆のトマト煮」

〈材料〉

・サケ(切り身)…300グラム
・大豆(水煮)…1袋
玉ねぎ…1個
にんにく…1かけ
パセリ…1本
・水煮トマト…1缶
・油…適量
・A(砂糖…大さじ1、コンソメ顆粒…小さじ1、ケチャップ…大さじ2)
オリーブオイル…適量
・小麦粉…大さじ3
・塩、こしょう…各少々

〈作り方〉

(1)一口大に切ったサケに軽く塩をふり、小麦粉をはたいて、油を熱したフライパンで両面を焼く。
(2)玉ねぎにんにくみじん切りにする。
(3)鍋にオリーブオイルを熱し、(2)を入れてしんなりしたら、トマト缶とAを入れ、軽く煮詰める。
(4)(3)に(1)と大豆を加え、塩、こしょうで味を調え、ひと煮立ちさせる。
(5)(4)を器に盛り、葉の部分だけみじん切りにしたパセリを散らして完成。

脳の栄養素といわれるレシチンが豊富な大豆やサケと相性抜群のトマトを使い、おしゃれイタリアンに。

プラズマローゲン食材を一品でたっぷり取れること請け合い。ぜひ食卓で実食あれ。

「女性自身」2021年4月20日号 掲載