コロナ禍のまま2度目のゴールデンウィークに突入。これまで取材してきた新型コロナの影響が直撃し困ってる人々を今一度振り返りたいと思う。2020年11月4日掲載記事より、コロナ自粛要請を蹴って営業を続けたパチンコ店のその後を取材した。

◆営業自粛は死を意味した

 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言発令から、この10月で半年が経った。今でこそパチンコ業界へのバッシングは沈静化した感があるが、宣言発令直後のそれは、まさにスケープゴートであったといえるだろう。当時、世間からの非難を覚悟の上で営業を続けたホールは、何を考えて営業を続けたのだろう。当事者に話を聞いた。

「宣言発令直後にはゴールデンウィークという、年末年始やお盆期間に並ぶホールにとっての繁忙期が控えていましたよね。ここで休業するのは、我々のような弱小店といわれるような経営状況のホールにとって、廃業とイコールになる可能性が高かったんです。だから大手チェーンを中心に休業する店舗が相次ぐなかでも、営業を続けようと決断しました。店を守りたいという強い思いがあり、そうすることで従業員の雇用も維持できるし、さらにはその家族の生活も守れますから。

 もちろん家族に高齢者がいるような感染のリスクを避けたいという従業員には、休んでもいいよと伝えましたし、店内の感染対策は万全を期しての営業です。それでも連休直前になるとテレビ局スタッフなんでしょうね、大きなカメラを抱えた人の姿が目立つようになり、さすがに店内にまでは入りませんでしたが、お客様にインタビューするようになりました」

 当時を振り返って話をしてくれたのは、都内にある某ホールの幹部社員だ。彼によれば営業を続けた裏には、従業員の雇用と生活を守るためという側面が強かったという。だが、世間はそうは思わなかった。連日のテレビ報道などで、ホールだけでなくやって来る客も悪人扱いされたのは記憶に新しい。

ニュースを見たら、まるでお客様が悪人のように流しているんです。当然、営業している私の店についても法律を守らない悪の存在といった感じで流されていました。これはもう、本当に悲しい気持ちになりましたね」

◆営業を自粛する法的根拠もクラスターもなく……

 幹部社員は絞り出すように言葉を続けた。実際、パチンコホールに営業自粛を強制する法律はなく、報道のほとんどは、みんな我慢しているのに自粛に逆らうことはけしからんという風潮に乗ったものであった。事実、パチンコ店からは今に至るまでクラスターは出ていない。

ゴールデンウィーク中には自治体の担当者が様子を見に来られたり、また、自粛警察っていうんですか、そういう方たちからのお叱りの電話もたくさん受けましたね。店名が自治体のホームページに公表されてからは電話がなりっぱなしになったりもしましたけど、直接の監督官庁である警察庁からは特に何も言われなかったんです。言い訳じゃないですけど、つまり法的にはなんら悪いことをしているわけではないと。実際、落ち着いた今になってあのバッシングはやり過ぎだったと流れになっていますし、そもそもホールクラスターは起きていないんですから」

◆売上げは上がったが大手ホールから嫌味を言われる

 では、売上げの面ではどうだったのだろうか。実際のところ、他店が休業するなかでで営業を続けたことで、確かに稼働はいつも以上に上がったという。

「休業している近隣店舗の店長が何度か様子をチェックしにいらっしゃいましたね。『ウチのお客様の顔がチラホラ見えますね』なんて嫌味っぽい感じでいわれました。でもそのホールが営業を再開したら、以前と同じですね。大手で資金力があるからか、再開後はかなり玉を出していたみたいですし、やはり弱小店では太刀打ちできないなと。それでも低空飛行ながら、この先も営業できそうですし、結果的には休業しなくてよかったかなと思っています」

 宣言中に休業したまま廃業という道を選んだホールも多いなか、今なお営業を続けられているのは休業しなかったからだというのが幹部社員の意見になる。ただ、宣言が解除されて状況が回復したかといえば、そうではないのが現実だ。

◆低空飛行が超低空飛行になる

 パチンコ業界紙の記者によれば「宣言前と後ではほぼ全てのホールで稼働が落ちてます」という通り、宣言前の8割程度の稼働に戻っていればイイ方だというのが、今の現状だという。

「感染を他人事だと思っているような若い人はほとんど戻ったみたいですが、リスクが高いといわれる高齢のお客様は全然です。本人が行きたいと思っても家族に止められたりしているようなんですが、特に昼の稼働はそういうお客様に支えられていた部分が大きいですから、もともとの低空飛行がさらに低くなった感じですね」

 さらに業界には大きな“北風”が吹こうとしている。稼働を支えていた人気機種の撤去が迫っているのだ。これを機に廃業を考えるホールが続出するのでは……と、幹部社員はみている。

11月にはホールにとっての貯金箱といわれているパチスロ機(注・ミリオンゴッド神々の凱旋―)が撤去されてしまいます。代わりに導入する機種がそれだけの利益をもたらしてくれるはずもなく、このタイミングで廃業を決断する店舗も多いのではないでしょうか。またそこを耐えたとしても、年末年始の繁忙期で抜くだけ抜いてという考え方もありますよね。これはコロナ禍に関係なく、昨年くらいから予想されていたことだったんですが、コロナでさらに廃業ペースに勢いがつくのは間違いないですね」

コロナは「終わりの始まり

 実際、幹部社員の働くホールでも会議の席で廃業という話も出ているという。それでも頑張ろうというのは、冒頭の話の通り従業員の生活があるからというのが大きい。

「年々ファン人口が減り続けるなかで、ホールは銀行からの融資も受けにくくなっています。業界の中にいる自分としても未来は明るくないなと思っているんですから、それは仕方ないことかなとあきらめてもいます。だからこそお金の流れを止められず休業要請に従えなかったという面も大きかったんです。今となっては、それも延命にしかならなかったのかもしれませんが、でも半年でも従業員を守れたのには意味があったはずですし、頑張れるところまでは頑張りたいですね」。

 コロナによる倒産を防ぐため、現在は無利子無担保での緊急融資も積極的に行われており、これで一息ついたという事業者も多いだろう。ホールでもそういうところは少なくないが、いざ返済が始まったらどうなるのか。コロナ禍に加え利益率が高い旧規則機の撤去など、まったく先が見えないホールにとって、これから始まる緊急融資の返済開始は、終わりの始まりになる可能性が極めて高い。

「何か大きな災いがあると、その度に矢面に立たされるのがパチンコなんですよ。東日本大震災の時もそうでしたし、そこからファン離れが止まらなくなりました。今回のコロナ禍もそうなるのかと考えたら、頑張ったところでどうなるのかとむなしくなることさえあります。ただ好きで始めた仕事ですから、最後までなんとか足掻こうとは決めてますね」

 娯楽の王様と言われたパチンコが、今や斜陽産業と言われるようになってしまうとは、誰が想像しただろうか。年末に向けて、パチンコ業界はさらに厳しい状況になると業界関係者は口を揃える。これから先、パチンコはどうなっていくのだろうか。

取材・文/キム・ラモー

【キム・ラモーン】
25年のキャリアを持つパチンコ攻略ライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞など幅広い分野で活躍する。

―[コロナ禍の日本]―


写真は9月、平日の昼間に撮影した都内の某ホール。新台導入2日目だったのだが、客付きはまばら。1円パチンココーナーだけが盛り上がっていた(写真/編集部)