4月16日の日米首脳会談では中国に対して強い懸念が示され、52年ぶりに台湾問題が共同声明に明記された。それは当然、台湾を国内問題と位置付ける中国の反発を買うこととなり、共産党系メディアも日本を名指しして強く批判した。

米中対立はバイデン政権になってからさらに進み、バイデン政権が同盟国重視の路線、特に地政学的には日本を最も重視しているとみられ、これが日中関係に悪影響を与えることが懸念されている。

フランスのNGOがユニクロなどをウイグル人権問題で告発

バイデン政権発足後、国務長官と国防長官の初訪問先が日本で、バイデン大統領が初めて対面で会談したのが菅総理という事実からも、バイデン政権の日本重視は明らかだ。だが、それによって日本企業への懸念が増大している。

ウイグル問題を巡り、米国や英国などが一斉に中国に対して制裁を発動した。

H&Mナイキなどの欧米企業は新疆ウイグル産の綿花を使用しないことが報道され、中国国内ではそれら企業の製品に対する不買運動を呼び掛ける声がネット上で拡散した。

また、それに関連して、フランスではユニクロなど4社が強制労働や人道に対する罪を隠匿しているとして現地の人権NGOから告発されたという。

ユニクロウイグル問題を巡って立場を鮮明にしていないと内外で批判の声も出ている。ウイグル問題など米中対立の背景になっている問題では、日中間だけでなく、ウイグル問題を介して日本と第3国との経済関係にも摩擦が生じる可能性にも配慮が必要だろう。

反対に、こうした人権問題という政治リスクから生じる影響を意識してか、2月以降深刻化するミャンマー情勢のなかでキリンは、クーデターを実行し今でも市民への弾圧を続けるミャンマー国軍系の企業との合弁解消を発表している。

欧米諸国はミャンマー国軍への圧力を強め、一部で経済制裁を発動している。また、カゴメはウイグル人権を巡り、新疆ウイグル産のトマトの使用停止を発表した。

「LIMO[リーモ]の今日の記事へ」

中国からの経済的圧力も。高まる政治的リスク

上記のように、ウイグルミャンマーの人権問題が企業活動にも影響を与えるようになってきている。

ブリンケン国務長官は、中国との付き合い方は各国によって違うと日本へ配慮するかのような姿勢も示しているが、それは、日本は日本のやり方でこれまでの日中経済関係を維持できることを意味しない。

当然ながら、日中関係をどうするかは中国側にも選択肢があるわけで、米中対立の中で日本を米国側と位置付け、経済的な圧力を掛けてくるというシナリオは、今後の情勢を考慮すれば十分に考えられる。

既に、米中貿易摩擦は二国間の問題ではなく、それが影響を及ぼす範囲は拡大している。日本企業は今後さらに政治リスクを意識した経済活動が求められるだろう。